11.20.2017
イニエスタがドリブルでボールを失わない理由とは?/サッカーに活きるフットサルの理論&トレーニング
今回、COACH UNITED ACADEMYに登場していただくのは、元フットサル日本代表で、Fリーグのフウガドールすみだでプレーする稲葉洸太郎氏だ。
稲葉氏は現役選手のかたわら15年以上サッカーの指導に携わっており、「サッカーに活きるフットサルの技術」を自らが主宰するスクール「ポテンシア」でサッカー少年・少女に伝えている。
ブラジルやスペインなどサッカー先進国では、育成年代の選手を伸ばすための有効な方法としてフットサルが積極的に取り入れられている。
だが、日本でテクニック面ばかりが強調され、フットサルをどうやってサッカーに落とし込むべきかあまり知られていない。
そこで前編に続き、稲葉氏にサッカーの試合で実際に起こる現象を解決するための、フットサルのトレーニングを教えてもらった。(文 北健一郎)
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イニエスタは"選択肢を持ちながら"ドリブルしている
稲葉氏がドリブルのお手本として挙げたのが、スペイン代表のアンドレアス・イニエスタだ。イニエスタは、何人もの相手に囲まれても、ほとんどボールを失うことがない。イニエスタのドリブルをよく見ると、顔を上げながら、周りの状況を見て、ゆっくりとボールを持っていることがわかる。
相手をよく見ているから、飛び込んできたらサッとボールを動かしてかわせるし、飛び込んで来なくてもフリーの選手にパスを出したり、自分でシュートを狙ったりできる。
イニエスタのドリブルは「フットサル選手のボールの持ち方に近い」だと稲葉氏は言う。
実際に、イニエスタはサッカーを始める前は、フットボール・サラ(スペインでのフットサルの呼び方)で技術を磨いて、狭いコートでのボールの扱い方や、プレスをかけられた時の抜け出し方を身につけたとインタビューで語っている。
日本のサッカー選手によく見られるのが、最初から相手を抜きに行くことだけを考えていて、相手が来なかったり、他のプレーを選んだほうがよかったりしても、強引にドリブルをしてしまうということ。
だが、イニエスタのようにドリブルもできる、パスもできる、シュートもできるという状態を作れば、ミスをする確率が下がるし、相手も何をしてくるかわからない。選択肢を持ちながらのドリブル----。それもまた、サッカーに活かせるフットサルの技術だ。
罠を仕掛け、相手を誘って抜く「罠ドリ」
稲葉氏が最初に行ったのは、ディフェンスをつけたドリブル練習。2人1組になったら、2人が手を伸ばしてギリギリでタッチできる場所にお互いが立つ。そして、ボールを持った選手は、インサイドでタッチしながらゴールラインからハーフラインまで運んでいく。ディフェンスは、最初はボールを奪いに行かず、ドリブルに合わせて下がっていく。その次は、下がりながらも、何回か足を出すアクションをする。攻撃側は足を出してきたら、アウトサイドで横に動かす、あるいはインサイド→インサイドのダブルタッチでかわす。
ディフェンスが最初から本気で奪いに行くと、トレーニングの目的である「相手を見ながら、ゆっくりドリブルする」という現象が出づらくなってしまう。最初は攻撃側がプレーしやすい状況にすることで、成功体験を積みながら感覚をつかんでいこう。
稲葉氏は子供たちに「ポンポンと飛び跳ねるように!」とアドバイス。ボールに触っている時に、地面についている軸足を軽く浮かせておくことで、相手が飛び込んで来ても、すぐに方向を変えることができる。
罠を仕掛けて、相手を誘って抜く----「罠ドリ」を習得することで、プレーの幅は大きく広がる。「罠ドリ」でのボールの持ち方、動かし方は、稲葉氏が実際にデモンストレーションしているので、COACH UNITED ACADEMYの動画でチェックしてもらいたい。
ブラインドシュートを習得する
「ドリブルでは相手をかわし切る必要はありません」。稲葉といえば華麗なテクニックでファンを魅了する、日本フットサル界でも1、2を争うドリブルの名手だ。そんな稲葉氏が「ドリブルでかわし切る必要はない」と言うのは、フットサルにおけるシュートの打ち方とリンクしている。
「サッカーでドリブルといえば、相手をかわし切ってシュートを打つシーンをイメージする人が多いと思います。でも、ゴールが小さいフットサルでは、相手をブラインドにしてシュートを打つほうが多い。このような技術は、サッカーで得点力をアップさせるために活きるものです」
ブラインドシュートを習得するためのトレーニングとして行ったのが、攻撃側と守備側に分かれての1対1。シュートを決めたら2点、ドリブルでゴールラインを突破したら1点というルール設定で、5点を先に取ったほうが勝ちというルール設定をする。
トレーニングの内容としては、通常の1対1と変わらないが、それまでのトレーニングで「罠ドリ」を反復練習していた子供たちは、ゆっくりとボールを持って相手を誘ってからのシュートを打っていく。シュートを打つことの優先順位が、ドリブル突破よりも高く設定されていることも、積極的なシュートを引き出している。
シンプルなメニューであっても、そこに至るまでの意識付けや、ルール設定によってトレーニングの現象は変わる。どうすれば子供たちにシュートの積極性を植え付けられるか悩んでいる指導者の方は、ぜひCOACH UNITED ACADEMYの動画を参考にしてもらいたい。
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【講師】稲葉洸太郎/
1982年12月22日生まれ、東京都出身。暁星高校を卒業後、フットサルを始める。2004年、21歳でフットサル日本代表に初選出され、同年にはファイルフォックスで国内3冠を達成。07年よりFリーグのバルドラール浦安に移籍する。日本代表として08年、12年のFIFAフットサルワールドカップに連続出場し、日本人通算得点数1位を誇る。15年よりフウガドールすみだでプレー。自身が主宰するスクール「ポテンシア」では、ミゲル・ロドリゴ監督をメソッド・プロデューサーに招き、サッカーに活きるフットサルの技術を子供たちに伝えている。
POTENCIA FUTSAL SKILL UP SCHOOL
取材・文 北健一郎