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チームでどのようにプレスをかけるのか? サッカーの監督が決めるべき「2つの約束事」

スペイン・バルセロナを拠点に、世界中のクラブ、選手の指導&コンサルティングを行っているサッカーサービス。 世界中で指導を行ってきた彼らだからこそ語れる、日本サッカーの課題である「守備」の指導法についての連載です。

第3回目は「プレスの個人戦術」について。サッカーサービスの分析担当であるフランコーチは「チームとしてどうプレスをかけるのか、指導者がしっかり指示することが大切」と語ります。
(この連載は2016年5月に開始したメールマガジン「知のサッカー:守備」の内容を転載したものです)

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選手に指示を与えるフランコーチ

"プレス"における個人戦術

我々は日本代表の試合から育成年代の試合まで、たくさんの試合を分析しました。そこでひとつ、気がついたことがあります。

「日本の選手は、プレスをかけるべきタイミングを知らないのではないか?」ということです。

もちろん、すべての選手が知らないというわけではなく、理解している選手も少なからずいますが、チームとして「いつ、プレスをかけに行くべきか」というコンセプトが浸透していない印象を受けました。

我々が考える「プレスに行くべきタイミング」とは、「ボール保持者が後ろ(攻撃方向とは反対側)を向いたとき」です。この瞬間、100%の力でボール保持者の元へ近寄り、ボールを奪います。ただし、闇雲にボール保持者に近寄ればいいのかというと、そうではありません。プレスをかける前に認識すべき、重要なコンセプトが3つあります。


<<プレスをかける前に認識すべきコンセプト>>
●自分の背後のスペースにドリブルで進入されない、あるいはパスを通させないようにするために、背後を見て、ピッチ中央部へのパスコースを消す。
●ピッチ中央部へのパスコースを消すポジションを取り、相手がドリブルを仕掛けてきたところで奪いに行く。
●ボール保持者が後ろ(攻撃方向とは反対側)を向いたときは、ボールを奪うチャンス。100%の力で寄せに行く。

守備の局面においても、「認知(状況把握)→決断→プレーの実行」というサイクルがあります。これを絶えず行い、守備時にもっとも相手に使われてはいけない「自分の背後のスペース」に注意を向けながら、ボールを取れそうな瞬間に100%の力で寄せる。これが、プレスにおける、守備の個人戦術です。

守備で監督が明確にすべきこと

ここで紹介したコンセプトを選手個人に理解させた上で、「チームとしてどうやってプレスをかけるか」という指示を出すのが、監督の仕事になります。

このときに、知らなくてはいけないのが「ラインを保ってディフェンスをすること」です。

FWのライン、MFのライン、DFのラインを保つ、すなわちフラットにして、相手選手が進入するスペースを消す。あるいは進入するコースを塞ぎます。これが守備の大前提です。

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当然、相手チームはパスを繋いで守備を揺さぶる、もしくはドリブルで侵入してラインを崩そうとしてきます。そのときに、守備の選手は自分の背後のスペースを相手に使われないよう背後に意識を向けつつ、前後左右の選手とバランスをとりながら、選手間にできる隙間(ギャップ)の調整をしなければいけません。

では、どのようにしてギャップを調整し、ライン間のバランスをとればいいのでしょうか?これは選手任せにすることではなく、監督が決めるべき事柄です。

そこで大事なことが2つあります。

1つ目は「FW、MF、DFラインの、どこを守備のスタート地点にするか」
2つ目は「ボールを失った瞬間、どのような対応をするのか」です。

相手の最終ラインがボールを持った時点で、FWが積極的にプレスをかけに行くのか。それとも、自陣に引いて守備のブロックを作り、相手に進入させないようにするのか。 私見ですが、ブラジルW杯の日本代表は、この部分が曖昧だったように思います。「どういう目的で守備をするのか」という約束事を見て取ることはできませんでした。

ある選手は前に出てボールを奪おうとし、ある選手は後方に下がって守備をしようとしていました。その結果、中盤に大きなスペースが空いてしまい、そこを使われてしまったのが、コートジボワール戦、コロンビア戦でした。

チームとして前に出て守るのか。それとも、後ろに下がって守るのか。いつ、どのような状況で前に出て、後ろに下がるのかを選手たちが知らないといけません。

JFAアカデミー福島で実践した"プレス"のコンセプト

私は以前、日本でJFAアカデミー福島U-13の指導をしていましたが、就任直後の2ヶ月間は守備のコンセプトを徹底してトレーニングし、Jクラブの下部組織に連勝したことは、前回で書きました。 そこでは、プレスに行くときのコンセプトを整理して、選手たちに伝えました。それが、次の3つです。


<<フランコーチが伝えたプレスのコンセプト>>
●ボールホルダーにプレッシャーがかかっていれば、前に出て取りに行く
●ボールホルダーがフリーであれば、背後のスペースを守ることを優先する
●ボールを奪われた直後こそ、ハードワークして守備のバランスを構築し、すぐにボールを奪い返す

日本の選手は、攻守の切り替えのコンセプトを教わっていないからか、ボールを奪われた瞬間に止まっている、あるいは動き出していない選手が多くいます。ボールを奪われた2秒間は「どう動けばいいかわからない」といった様子で、戸惑っているように見受けられるのです。

その後にボールを奪い返すために動き出すのですが、2秒の遅れは取り返しのつかない遅れです。ボールを奪われた瞬間、素早く攻撃から守備へと切り替えないと、後に10秒、20秒と長い時間、ハードワークをするはめになってしまいます。

JFAアカデミーでは、ボールを奪い返す時のコンセプトを統一し、ボールを奪われた瞬間こそダッシュしようと伝えました。そうしないと相手ボールになり、長い時間、走らされることになるからです。選手には「どうせ走るのであれば、先に走ろう。そうすれば短い時間で終わるから」と言いました。

攻撃と守備は一心同体です。いいチームは攻撃をしながら、守備の準備をしています。FCバルセロナはそれが非常に上手いチームです。

現代サッカーにおいて、攻撃の時は攻撃だけ、守備の時は守備だけに集中するというのはありえません。そこは、指導者が意識づけをする部分だと思います。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
次回は、U-13年代の守備トレーニングコンセプトについてお伝えします。

グラシアス、アデウ!
(注:カタルーニャ語でありがとう、さようならの意味)

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フランセスク・ルビオ/Francesc Rubio Sedano
サッカーサービス社の分析、コンサルティング部門責任者として、選手やクラブ育成コンサルティング業務を担当。C.Fカン・ビダレットの下部組織(U-18)の監督、コーディネーターと、カタルーニャサッカー協会技術委員を兼任。2014年までJFAアカデミー福島U13の監督も務めた。現在は、エコノメソッドを導入するパリ・サンジェルマンでコーチを務める。

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