TOP > コラム > 「マンツーマン」と「ゾーン」の定義と特徴とは?/ドイツ流『ボールを重視』したゾーンディフェンス

「マンツーマン」と「ゾーン」の定義と特徴とは?/ドイツ流『ボールを重視』したゾーンディフェンス

COACH UNITED ACADEMY、今回の講師はドイツで14年間指導者を務め、SVヴェルダー・ブレーメンのアカデミーではU-9監督、U-13コーチ、U-16コーチ、コーディネーションコーチとしてU-12、U-13、U-14を指導した経験を持つ、坂本健二氏に登場して頂いた。現場での指導だけでなく、ドイツサッカー協会が作成した指導DVDの日本語訳に携わるなど、ドイツサッカーに精通する坂本氏の講義テーマは「ボールを重視したゾーンディフェンスの正体を知ろう!」。

そもそもゾーンディフェンスとは何か? マンツーマンとの違いと特徴を理解した上で、現代サッカーに求められるモダンなゾーンディフェンスについて、どのように組織的な守備を構築していくのか。動画では多くのポイントを抽出している。ここではその一部を紹介したい。(文:鈴木智之)

この内容を動画で詳しく見る

004.jpg

次回の記事を読む>>

「マンツーマン」と「ゾーン」の特徴と違い

COACH UNITED ACADEMY動画の前編では、ドイツサッカーにおけるゾーンディフェンスの実態、マンツーマンマークとゾーンディフェンスの違い、ボールを重視したゾーンディフェンスの定義、ドイツサッカー協会「ドイツの長所2.0」守備のガイドラインという流れで進んでいく。

坂本氏はドイツの現状について「私が住んでいたバイエルン州のリーグを見ると、ゾーンディフェンスを採用しているのは1部から5、6部までのチームです。そのあたりから、マンツーマンとゾーンディフェンスが混在しています」と語る。

「多くの方がご存知のとおり、ドイツ代表が2000年の欧州選手権のグループステージで敗退し、このままではダメだということで改革が始まりました。その中のひとつが、リベロを置いたマンツーマンディフェンスから、ゾーンディフェンスへの移行です。2000年の欧州選手権では、ドイツとトルコだけがリベロを要するマンツーマンで、ゾーンディフェンスをしていなかったんですね。そこで、ドイツサッカー協会が隣国のオランダとフランスへ行って、ゾーンディフェンスの情報を仕入れたと言われています」

国をあげて、モダンな守備の仕方に取り組んでいったドイツ。とはいえ、ゾーンディフェンスがすべて良く、マンツーマンディフェンスがすべて悪いというわけでもない。坂本氏は「モダンなゾーンディフェンスについてお話しするにあたって、まずマンツーマンディフェンスとは何なのか。ゾーンディフェンスとは何なのかを整理して、そこを出発点にお話したい」と語り、両者の長所と短所を次のように挙げる。

【マンツーマンディフェンスの長所】
・守備の役割分担が明確である
・マークする相手選手1人の特徴に合わせれば良い
・相手のゲームメーカーやうまいドリブラーに、仕事をさせないようにすることができる
・相手がタイトなマンツーマンマークを外すためには、運動量を上げなくてはならない
・特に相手が技術的にうまくない場合、簡単にボールを奪える
・フェアな1対1は、見ているものを魅了する
・デリケートな相手選手は、タイトなマンツーマンマークをすると、すぐに諦めてしまう

【マンツーマンディフェンスの短所】
・走るコースやスピードは、相手によって強制される(相手の動きに合わせるため)
・相手の戦術によって、不利なポジションに誘い出されてしまう
・1人が抜かれてしまうと、ディフェンスは崩れやすい
・FWやMFが相手選手についていき、本来のポジションを離れ、自チームが計画していないポジションにロックされてしまうと、自分たちの攻撃の組み立てに支障をきたし、素早い攻撃への移行が困難になる

以上がマンツーマンディフェンスの長所と短所だ。
具体的な説明はCOACH UNITED ACADEMY動画で行っているので、ぜひ参照して頂ければと思う。

007.jpg

「ボールを重視」したゾーンディフェンスとは?

続いて講義は、ゾーンディフェンスの長所と短所の紹介に移行していく。

【ゾーンディフェンスの長所】
・移動距離を節約できる
・相手チームの様々な戦術行動を、わずかな移動距離で防げる
・ボールを奪ったときに、選手たちがそれぞれ分散していてフリーなため、攻撃の組み立てに好都合である
・1人が抜かれても、別の選手がカバーできる

【ゾーンディフェンスの短所】
・ドリブルがうまい相手選手に対しては、ゾーンのつなぎ目がとくに弱い
・ディフェンスのゾーンは単に想定されたもので、明確な配置が決まっているわけではないので、役割分担が曖昧になりがち
・常に、様々な相手選手に順応しなくてはならない
・オフェンスが良いコンビネーションをすると、全体を見通すことができなくなりやすい
・常に注意を払い、プレー状況全体を見渡していなくてはならないことが、多くの選手にとって重荷となる

以上が、それぞれの守備の長所と短所だ。坂本氏は「簡単に言ってしまうと、頭に負荷がかかるのがゾーンディフェス。体力に負荷がかかるのがマンツーマンディフェンスということになります」と言う。

002.jpg

この前提を踏まえた上で、「ボールを重視したゾーンディフェンスとは何か?」という話に移っていく。「一般的なゾーンディフェンスは、グラウンドを分割して、どこに相手選手が来たら、誰がつかまえに行くということを明確にしていました。しかし、ドイツのボールを重視したゾーンディフェンスは、ボール(保持者)を起点とし、ボールを重視してディフェンスをします」

COACH UNITED ACADEMY動画では、坂本氏がグラウンドのイラストと選手のマグネットを使い、ボールを重視して、どのように守備をするかを丁寧に解説している。「ボールがサイドにあるときは、バナナの形になる」「ボール保持者に対する、ディフェンスの三角形の作り方」「ラインの上げ下げ」「4本の足でボールを奪う」といったキーワードが出現。

ボールを重視したゾーンディフェンスの仕方や特徴、具体的にボール保持者に対して、どのような動きで数的優位を作ればいいか。あるいは、ボールの位置に応じたプレスの仕方などを知りたい方は、ぜひ動画をご覧頂きたい。多くの学びが得られるはずだ。

次回の記事を読む>>

この内容を動画で詳しく見る

【講師】坂本健二/
1960年、東京生まれ。1982年~89年山雅SC(現松本山雅FC)にてプレー(85年北信越リーグ優勝)。98年にサッカー留学のため渡独。99年からヴェルダー・ブレーメンのU16、U13、U9などの指導者を歴任、00年にはクラブ史上初のコーディネーションコーチにも抜擢された。2004年、ドイツサッカー協会指導強化ビデオ『「ボールを重視した」守備』を翻訳、同協会認定指導者B級ライセンス取得。06年に日本人初、FCペンツベルクでアカデミー・ダイレクターに就任。15年に指導者資格DFB・エリート・ユース・ライセンスを取得後、日本へ帰国。