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「バックパスに逃げるな!」攻撃方向を意識したポジショニングとファーストタッチ/RIP ACEの戦術的トレーニング

関西地区ではユニークな迷彩柄のユニフォームで知られる大阪府堺市のRIP ACE SCジュニアユース(U-15)。RIP ACEでは、プレーモデルを基準とした戦術的ピリオダイゼーションをチームのトレーニングに取り入れている。良いポジションを取ることや、相手の戦術を読み取ることもテクニックの1つととらえ、常に相手がいることを想定した戦術的負荷の高いトレーニングを実践している。

一昨年のクラブユース選手権(U-15)では町クラブながらベスト8という好成績を残すなど、近年、全国的にも注目を集めるチームだ。今回のCOACH UNITED ACADEMYでは、今村康太監督に「バイタルエリアの攻略」をテーマにトレーニングを紹介いただき、前編では、攻撃方向を意識したポジショニングとファーストタッチの動作について解説してもらった。(文:貞永晃二)

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良いポジショニングで先手を取る

今村監督の説明はこうだ。「良いポジショニングをとって先手を取る、先手を取れなかった場合はファーストタッチで優位性を取る、そのファーストタッチの質は動作で決まる、という部分にフォーカスしていきます。キーファクターとしてはまず前を見ること。縦パスを出させるポジショニング、ファーストタッチ。ディフェンスをはがせるポジショニング、ファーストタッチ、そしてオンザボールの動作となります」

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トレーニングのスタートはウォーミングアップを兼ねた「鬼ごっこ」。

8つのマーカーを置いた中で、7人の守備者と鬼が1人。鬼の目標は守備者の誰もいないマーカーを踏むこと。一方、守備者は鬼に踏まれないようにマーカーの近くに立って守るわけだが、鬼がどのマーカーを狙っているかを察して、マーカーとマーカーの中間に立ったり、お互いに立ち位置を変えたりして、誰もいないマーカーを作らないようにする。一方、鬼はフェイントや急激なターンや方向転換で守備者の裏を突いて誰もいない空いたマーカーを狙う。

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今村監督はこのトレーニングを前に、「守備のポジショニングを意識して、良いポジショニングからスタートしよう」と話した。ボールを使うことはないが、サッカーにおける「ポジショニング」と「駆け引き」を学ぶのが狙いだ。守備者は一番近いマーカーを守りつつ、空いたマーカーへの移動が可能な立ち位置をとる。これはサッカーで言う「ぼかしたマーク」ということになる。

そして、鬼の動きに反応して、守備者の1人がマーカーを移動したら、その近くにいる守備者はその動きで空いてしまったマーカーを埋めなければいけない。これはサッカーで言う「スライドの動き」に当たるだろう。

今村監督は、「一番遠いヤツがコーチングしろ!」、「(動きの)スピードで解決するな、頭のスピードで解決しろ!」、「人のせいにせずに、仲間を助けるんだぞ!」などの言葉を掛けてボールなしではあったが、サッカーでは必ず相手と味方を意識して動く必要があることを指導していた。

守備のポジショニングと駆け引きをテーマに鬼ごっこを行ったあと、今度はオーガナイズを変え、攻撃の駆け引きをイメージした鬼ごっこを実施。こちらはCOACH UNITED ACADEMYの動画で解説しているので、ぜひそちらをご覧いただきたい。

常に相手のシステム、守備の状況を想定してポジショニングをとる

2番目のトレーニングは、「パス&コントロール」(図参照)。

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チームでは「魔法陣」と呼ぶ練習のようだ。十字型の4つの端にマーカーが置かれ2人ずつ配置。交差する中央エリアには4人が配置される。同時に3つのボールを動かす。端の選手は中央エリアの選手にパスを出して、その中央エリアへ移動する。パスを受けた中央の選手は4つの端の内いずれかボールを持っていない選手にパスを出し、その端へ移動する。

「まず2トップとダブルボランチをイメージして!」との指示が飛ぶ。このトレーニングでは、相手チームのシステムを「1-4-4-2」と想定し、中央4つのマーカー手前が2トップ、奥2つをダブルボランチと想定。その上で「DF(相手選手)に近づいてボールがもらえる?」、「いいポジションはどこ?」と選手に考えさせる声掛けが続く。

ボールを使う練習が初めてだったせいか、なかなかスムーズにボールが行き交わず、「ゲームスピードを上げて!試合でのプレスはもっと早いぞ!そんなに考えている時間はないぞ!」、また選手間の声のやり取りも少なかったので、「パスを出したヤツがコーチングしてやればいいだろう!」と厳しい叱責も。

「次は、1トップ2シャドー1ボランチ!」と今村監督から選手がイメージすべきシステムを変える旨の指示。すると、上がってきていたボールのスピードが落ち始める。すかさず「考えることが増えたらパススピードが弱くなってない?」との指摘。さらに出す相手を見つけられない選手には、「ボールを受ける前に名前を呼ばないから迷子になるんだよ!」と指示は的確だ。「成功するのは、いい準備ができている人だけだよ!行き当たりばったりになるな!」常に頭を使い、周囲を見続けてパス&コントロールが休みなく続き、シンプルだが強度の高いトレーニングだった。

バックパスに逃げるのではなく常に前を狙う

3番目のトレーニングは「4対4プラス3フリーマン」(図参照)。

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単なるパス回しにならないように、攻撃方向が決まっている。その攻撃方向と自らのポジションと全体のポジションバランスを意識しながら、ラインを組む守備者4人をいかに崩していくか。守備側がボールを奪ったら攻守が入れ替わり、パスを回していた攻撃側が4人を囲んで奪いに行くことになる。

今村監督は、「まず前へ、前へ、最初からバックパスを選ぶな!」とゴール設定はないが、攻撃方向を意識させていた。「立ち位置で先手を取れなかったら、ファーストタッチで動かす!」、「ギャップを抜きたいのか、自分ではがしたいのか、立ち位置を変えて!」、守備側に対しては「タテを切ったらボールはどこへ出てくる?ヨコでしょ。じゃあ、ヨコを狙っているか?」というようにあくまで選手に考えさせてプレーさせていた。

以上、3つのトレーニングを紹介した。頭を使う戦術的負荷の大きいトレーニングで、より実戦的な技術が身につくことがよく分かる練習は、とても参考になるものだと思う。詳しくはCOACH UNITED ACADEMYの動画、を参照していただきたい。後編では、より実戦的な内容に移行し、バイタルエリアでのポジショニングの駆け引きについてトレーニングを紹介する。

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【講師】今村康太/
習志野高校時代に本田裕一郎監督(現・流通経済大学付属柏高校)の指導下でプレー。桃山学院大学在学中から指導者の道に入り、2002年大学卒業と同時にチームメートだった守山真悟氏と「RIP ACE (リップエース)サッカークラブ」を創設。一昨年のクラブユース選手権(U-15)では町クラブながらベスト8入り。OBには米澤令衣(C大阪)、薮内健人(FC岐阜)、嫁阪翔太(グルージャ盛岡)らJリーガーも輩出しており、全国的に注目を集めている。