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相手の裏を突くプレーができる選手を育成するには?/欧州と日本の育成を知るゼムノビッチ氏の提言

COACH UNITED ACADEMYでは、清水エスパルスの監督として天皇杯優勝を成し遂げ、現在はVONDS市原の監督を務める、ゼムノビッチ・ズドラヴコ氏の講義を配信中。長きに渡り日本で指導をし、ヨーロッパと日本の現状を知るゼムノビッチ氏は、日本の育成について何を思っているのか。後編のテーマは「相手の裏を突くプレーができる選手を育成するには?」という具体的な育成論に及んだ。ここでは講義の一部を紹介したい。(文:鈴木智之)

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日本は平均的な選手が多く、突出した選手が少ない

ゼムノビッチ氏は「日本には平均的な選手が多く、突出した選手が少ない」と現状を指摘する。

「まず言っておきたいのが、誰もが相手の裏をとれる選手になれるわけではないということです。メッシを作るのは無理。メッシは生まれるものです。メッシのような才能を持った選手を子どものときに発見して、うまく育てる。それが大事なことなのです」

タレントを発見し、クラブのビジョンのもと、この選手をどう育てていくかを考える。それが大切だと、ゼムノビッチ氏は言う。祖国ユーゴスラビアには名古屋グランパスでプレーし、後に監督も務めたストイコビッチという名手がいたが、彼については「瞬間的な判断が素晴らしかった。瞬時にピッチの状況を見て、1秒後に選手がどこに動いて、どこにいるかがわかっていたので、他の選手が1日考えても思いつかないプレーをするイマジネーションがありました」と賞賛する。

ストイコビッチ氏は現役時代、妖精の意味を持つ"ピクシー"という愛称で呼ばれていた。軽やかにボールを操り、相手の意表を突くプレーが最大の持ち味だった。

「彼と話をすると、この選手がこう動いて、こう動いたからパスを出したと、ピッチの状況が全部わかっています。ボールを持ちながらそれができるんです。正面を見ながら右も見ているので、相手のバランスを崩してパスを出すことができます。それが素晴らしい選手の特徴です。いい選手は右を見ながら、左にパスを出します。こういう選手は多くはないので、発見してうまく育てるしかないんです」

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攻撃で相手の裏を取る「4つの方法」とは?


COACH UNITEDをご覧の指導者の方は、どうすれば選手のイマジネーションを高めることができるかが、気になるところだろう。ゼムノビッチ氏は、攻撃で相手の裏をとる方法を4つ挙げる。

①ワンツー
②ダイアゴナルラン
③スルーパス
④クロスオーバー

「相手の裏をとるためには、この4つのプレーが大切です。練習の中でこれらを繰り返して、チームメイトとタイミングを合わせていきます。日本の試合を見ていると、ポストプレーが非常に多いんですね。一方的に前だけ、横だけのプレーが多い。でも、裏をとるためにはスペースを作らないといけません。誰がスペースを作り、そのスペースを誰が利用するのか。そのイメージを合わせることで、相手の裏をとるプレーができます」

日本サッカーにポストプレーが多いというのは、興味深い指摘だ。たしかに、足元へパスを出し、収めてリターンを返す形でボールを動かすチームが多く、ひとつのパスに対して味方が連動して走り、複数のスペース、パスコースを作って攻撃をするチームは、それほど多くない印象がある。

ゼムノビッチ氏は「相手のバランスを崩すためには、逆の動きをする必要があります。FWが最終ラインの裏をとるためには、一度中盤に降りて、もう一度出て行って裏をとります。これはみんなが言っていることですが、試合を見ると誰もやっていないんです」と指摘する。

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クローズドのパス練習だけでは裏をとる感覚はつかめない

攻撃で相手の裏をとる感覚をつかむためには、「クローズドのパス練習をするのではなく、技術と戦術を融合させた練習をすることが大切」と言う。

「パスをしながら、裏をとる動きをすることがポイントです。ただパスをするのではなく、技術と戦術を融合させた練習をします。スペースを作って走る。ワンツーをし、クロスオーバーしてきた選手にパスを出すなど、様々な動きのパターンをまずは相手をつけずにイメージします。そして、次にミニゲームの中で、同じ動きが出来るように要求します。攻撃側はどうやって相手のバランスを崩すか。守備はどうやって対応するか。両方に教えて、選手にプレーさせます」

このときに大切なのが、すべてを教え込もうとしないこと。ゼムノビッチ氏は語る。

「全部を教えるのは無理です。ポイントを教えて、あとは選手にフリーでやらせます。そこでミスが出るのは当たり前なので怒りません。良いプレーが出たときには褒めます。日本の指導者は怒るけど、あまり褒めません。でも、褒めることはすごく大切で、良いプレーを褒めれば、選手もそのことを覚えるのでまたやろうと思うわけです」

ゼムノビッチ氏の語りは明快だ。ほかにも、清水エスパルスの監督時代に戸田和幸選手(当時)をDFからボランチにコンバートするにあたって、どのように説得したかなど、興味深い話が収録されている。「選手は納得すれば動き出す」と語るゼムノビッチ氏の考えを、ぜひご覧頂ければと思う。

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【講師】ゼムノビッチ・ズドラヴコ/
1954年、ユーゴスラビア(現・セルビア共和国)出身。FKテレオプティック、チュウカリチュキ、BSKバタイニッツァで選手としてプレーし、引退後、BSKバタイニッツァで監督業をスタート。1994年に来日すると、鳥栖フューチャーズ、清水エスパルスでコーチ、監督を歴任。清水を天皇杯優勝へと導く。2003、2004年にFKラド・ベオグラードの監督を務めた後、再来日し、千葉県サッカー協会のテクニカルアドバイザーに就任した。2016年シーズンからVONDS市原の監督を務めている。