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ゴールに結びつける効果的なステップワーク/森山泰行が語るFWに必要な「オフザボールの動き」

今回のCOACH UNITED ACADEMY、講師は名古屋グランパスエイト(現:名古屋グランパス)などでストライカーとして活躍した、森山泰行氏。現在は浦和学院高校監督、ジュニアユースのCLUB GORICA(クラブゴリツァ)、埼玉県富士見市のスポーツ少年団NKFC(Nanbata Krein Football Club)で指導をするなど、育成年代のレベルアップに情熱を注いでいる。FW一筋で活躍した生粋のストライカーが指導する、"点を獲るため"の極意。その様子を紹介したい。(文:鈴木智之)

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「オフザボールの動き」で優位な状況を作る

森山氏は現役時代、アーセン・ヴェンゲル監督のもと、ドラガン・ストイコビッチとともにプレーし、バツグンの動き出しでゴールを量産。171cmと小柄ながら、ストライカーとして日本代表に選ばれた経験を持つストライカーだ。

今回の指導テーマは「FWに指導すべきステップワークと身体の向き」。トレーニング前編のテーマは「ゴール前の動きの質を高めるステップワーク」と題し、パスを受ける前の動きを中心にレクチャーしてもらった。

ストライカーにとって、「味方からどうやってパスを引き出すか」はとても重要なポイントだ。相手選手と駆け引きをしながら、死角に入ってパスを受けたり、競り合いながらマイボールにして、シュートまで持ち込むといったプレーが不可欠である。

そこでポイントになるのが「オフザボールの動き」だ。

森山氏はトレーニングのテーマ設定に当たり「育成年代の選手をたくさん指導していますが、全体的にオフザボールの動きができていないという印象があります。その中で、点を取るためにどう動くのか。どんなステップを使い、どんな身体のアングルを作ってボールを受け、シュートに持ち込むのかといった動きの部分を、トレーニングで高めていきたいと思っています」と狙いを明かす。

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開始前に森山氏は選手たちを集めて「キーワードは足を動かすこと。そこを意識して、チャレンジしてほしい」と語り、トレーニングがスタートした。前編のトレーニングはすべて2人1組で行うオーガナイズで、まずは3メートルの距離で向かい合い、ワンタッチのパス交換。ここでは「常に足を動かすこと」に重点が置かれ、森山氏からは「テンポよく、スムーズに」という声が飛んでいく。

常にステップを踏み、次の動作へ素早く移動する

さらには実演を交えてアドバイス。「顔を上げて、間接視野でボールを見ること」「パスを出したあとに、すぐ次の動作に移ること」「ボールを蹴った後、すぐにパワーポジションを取れるように、足の振りをコンパクトにすること」「常に細かいステップを踏み、ボールがずれた時は足を運んで微調整すること」など、元日本代表選手ならではの技術、テンポで手本を見せていく。

続いては2人1組で向かい合って立った状態で前方にパスを出し、後方に下がってから、再び前に出てパスを出す動きを繰り返す。次は前にパスを出したあと、左右に一回ずつステップを踏む動きにチャレンジ。単なる動きの練習ではなく、実戦をイメージして行うことが大切で「相手選手とのギャップに入り、どこでパスを受けるかをイメージしよう。パスはゆっくりでもいいので、首を振って周りを見よう」というアドバイスが送られていた。

シュートに持ち込むための空間を意図的に作りだす

次はパスの出し手と受け手を分けて、「チェックの動き」をトレーニング。パスを受ける方とは反対に動いて相手選手を釣っておいて、ボールホルダーに寄って行く。

「背後にマーカーがいるイメージで、一度後ろに下がってマーカーを引きつけておいて、前に出ることで、相手のマークを一瞬外すことができる。ゆっくりから速くという緩急をつける動きで相手を騙そう」と説明し、ボールに対して斜めに入ることで、マーカーを外してプレーするスペースを作り出す動きを実演していた。このあたりの動きは、ぜひ動画で確認してほしい。

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森山氏が強調したのが「マーカーと駆け引きをして、ボールを受けること」「シュートに持ち込むための空間をどうやって作るか」という2点だ。

トレーニングの設定は2人1組だが、実際の試合は周囲に味方や相手が入り乱れている。その状況をイメージし、どう動けばスペースができるか、パスを受けてシュートまで持ち込めるかという、点取るために必要な動きにフォーカスしていく。

さらにトレーニングの中で、パスの出し手に「角度をつけたパスを出すこと」を要求。スルーパスで抜け出した時に、真っすぐのボールだとGKと相対する形になり、シュートコースを見出しにくい。しかし、斜めの角度をつけたパスにすると、GKも動かざるを得ないのでシュートコースが広がる。細かいプレーだが、意識的に行うか否かで、ゴールに繋がる可能性が変わる。これらのディティールに言及するのは、プロの世界でゴールを量産し続けた、ストライカーならではの視点である。

COACH UNITED ACADEMY動画では、森山氏によるディティールの解説とアドバイスだけでなく、動きを実演することで、ポイントがわかりやすく提示されている。前編のトレーニングでは、短い時間で次々にメニューが変わり、段階を経て難易度が上がっていく。ボールを使った様々な動きを通じて、シュートに持ち込むために必要なステップワークを身につけるトレーニングを、ぜひご覧頂ければと思う。

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【講師】森山泰行/
1969年、岐阜県出身。浦和学院高校サッカー部監督、ジュニアユースクラブCLUB GORICA(クラブゴリツァ)、埼玉県富士見市のスポーツ少年団NKFC(Nanbata Krein Football Club)代表。JFA公認S級コーチ所持。順天堂大学卒業後(1992年)、名古屋グランパスエイト(現:名古屋グランパス)に入団。動きの質、ゴール前での集中力の高さが特徴でスーパーサブとして活躍し、8分間でハットトリックを達成した記録を持つ。その他、ベルマーレ平塚(現:湘南ベルマーレ)、スロベニア・リーグのヒット・ゴリツァ、サンフレッチェ広島、川崎フロンターレ、コンサドーレ札幌(現:北海道コンサドーレ札幌)、FC岐阜でプレーし、2008年に現役を引退。引退後はサッカー解説者などを務め、2014年4月より浦和学院高校サッカー部監督に就任。育成年代を中心に指導者として活躍の場を広げている。