10.01.2018
ゴールの確率を高める身体の向きとは?/森山泰行が語るFWに必要な「オフザボールの動き」
COACH UNITED ACADEMYでは、名古屋グランパスエイト(現:名古屋グランパス)などでストライカーとして活躍した、森山泰行氏のトレーニングを公開中。現在は浦和学院高校サッカー部の監督、ジュニアユースのCLUB GORICA(クラブゴリツァ)、埼玉県富士見市のスポーツ少年団NKFC(Nanbata Krein Football Club)の代表を務める森山氏は、ストライカーとして活躍した現役時代の経験をもとに、どのような指導をしているのだろうか?(文:鈴木智之)
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斜めに動いて半身の状態を作り、シュートコースの選択肢を広くする
トレーニングのテーマは「FWに指導すべきステップワークと身体の向き」。公開中の前編では「ゴール前の動きの質を高めるステップワーク」にフォーカスして行ったが、後編では「常に良い状態でシュートが打てる身体の向き」をメインに指導がスタートした。
まず7メートルほどの間隔でシュート役とパス役が向かい合って立ち、シュート役はボールを受けたい方とは反対の方へ走り(チェックの動き)、その後にボールを呼び込み、ワンタッチでボールを止めてシュートを打つ。
ここで森山氏はシュート役の選手に「パスを受けるときに、斜めに動いてボールを受ける」ことを徹底するようアドバイス。理由を次のように説明する。
「なぜ斜めに動くのか。それは半身を作るためです。ボールに対して横に動くと、ゴールに向かう身体の向きを作ることができません。パスを受ける前に身体の向きを斜めにしておくと、ゴールに対してシュートを打つことのできる角度が広くなります」
どの角度、身体の向きでボールを受ければ、シュートに対してアングルを作ることができるのか。森山氏は実演を交えて伝えていく。その動きはJリーグで数々のゴールをあげたストライカーそのものだ。
トレーニングで身体の向きの作り方を学んだところで、続いては「円を描くようにステップを踏む方法」を実演。スピードを落とすことなく、身体をボールの出し手とゴールに向けながら、パスを受ける動きのことで、実際の試合でよくある「相手選手と駆け引きをしてパスを受けて、シュートに持ち込む」という一連の動きにつながっている。
前にボールを置き、トラップからシュートまでを早くする
次にパス出し役が前に出て、シュート役との距離が5メートルほどと近くなる。ここでのテーマは「前後の動き」だ。シュート役はまずゴール方向(前方)に出てパスを受ける動作をしてから、パスの出し手に向かって下がって行く。そのタイミングでパス出し役はボールをパスし、シュート役がシュートを打つ。ここでは斜め前、斜め後ろに動くことがポイントになる。
「裏に抜けるぞという動きで相手選手を釣り出しておいてから下がることで、シュートを打つスペースを自分の前に作り出します。ここでも、細かくステップを踏むことを意識しましょう。パスを足元に止めたり、後方にコントロールするとシュートが打ちにくく、その場に止まってしまうとディフェンスに寄せられてしまいます。パスを受けるときは自分の前にボールを置いて、シュートに持っていく。身体の向きをしっかりとゴールに向けましょう」
次のトレーニングではパス出し役がボールを出し、シュート役がワンタッチで落とし、すぐさま身体の向きを作って受け直す動きにトライ。
森山氏はディフェンス役をつけた 2対1の状況で、ストライカーはどう動くかを実演。多くのゴールを決めてきたストライカーならではの動きの細やかさバリエーションを披露しているので、ぜひ動画で確認してほしい。
さらには設定を変えて、浮き球をシュートに持ち込むトレーニングに移行。森山氏からは「シュートを打つタイミングを逃さない」というストライカーらしいアドバイスが送られていた。
マークを外し、シュートのアングルを作り出す"プルアウェイ"の動き
続いては「プルアウェイの動きからのシュート」。ゴール前にマーカーを置き、シュート役は横にいる味方にパスを出してプルアウェイの動きで外側のマーカーを回り、シュートポジションに入る。ここでのポイントは「プルアウェイをしながら身体の向きを作り、ボールを持っている味方とゴールを同時に視野に入れる」ことだ。
「なぜプルアウェイの動きが必要なのか。それは相手のマークを外すためです。さらに、横から来るボールに対して、身体の向きをゴール方向に向けることで、シュートを打つアングルを作り出します。横からのボールに対して直線的に動くと、点でしか合わせられませんが、プルアウェイをして斜めに動くことで、身体の面を作ってボールを受けることができます。これを意識して練習しましょう」
トレーニングの最後は「2人1組でプルアウェイ(クロスからのシュート)」。シュート役の2人は交差する動きをし、パス役に近い選手が外を回るプルアウェイの動きをしてシュートまで持っていく。シュート役の選手はパスを出す選手がボールを蹴るタイミングを見計らい、自分の前にスペースがある状態でゴール前に入っていく。
トレーニングでは様々なバリエーションで「ボールを受けて、シュートまで持っていく」という形を繰り返し行った。個人戦術を身につけることのできるトレーニングであり、実戦ですぐに使える動きを伝授している。プロの世界で結果を残したストライカーが実体験で培った、点を取るための動きをぜひ動画で確認してほしい。
最後に森山氏は「ストライカーを育成するために大事なこと」を次のように話してくれた。
「自分自身、育成年代で誰かに動き方を教わったわけではなく、自ら答えを見つけてきました。自分で点を取るポイントを見つけた人は、点の取り方をどんどん覚えていきます。それがゴールにつながるので、教えてもらうのではなく、自ら見つけられる選手を育成していってほしいなと思います」
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【講師】森山泰行/
1969年、岐阜県出身。浦和学院高校サッカー部監督、ジュニアユースクラブCLUB GORICA(クラブゴリツァ)、埼玉県富士見市のスポーツ少年団NKFC(Nanbata Krein Football Club)代表。JFA公認S級コーチ所持。順天堂大学卒業後(1992年)、名古屋グランパスエイト(現:名古屋グランパス)に入団。動きの質、ゴール前での集中力の高さが特徴でスーパーサブとして活躍し、8分間でハットトリックを達成した記録を持つ。その他、ベルマーレ平塚(現:湘南ベルマーレ)、スロベニア・リーグのヒット・ゴリツァ、サンフレッチェ広島、川崎フロンターレ、コンサドーレ札幌(現:北海道コンサドーレ札幌)、FC岐阜でプレーし、2008年に現役を引退。引退後はサッカー解説者などを務め、2014年4月より浦和学院高校サッカー部監督に就任。育成年代を中心に指導者として活躍の場を広げている。
取材・文 鈴木智之