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ゲームの中で連携を高めるトレーニングとは?/スペインで徹底されるジュニア年代が身につけておくべきスキル

COACH UNITED ACADEMYでは、スペインサッカー協会の指導者資格レベル3(UEFA Pro相当)を有し、バルセロナ近郊のマリアナオ・ポブレのユースA(4部)の監督を務める、吉田和史氏のトレーニングを公開中。「スペインで実践されている、パスワークとポジショニングを高めるトレーニング」を紹介する後編では「前進するドリブルとコンビネーションの強化」をテーマに、ジュニアの選手達に対する指導を行った。(文・鈴木智之)

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実戦形式で余裕がない状況でも「コントロール・オリエンタード」と「デスマルケ」を使う意識を持つ

トレーニングのキーポイントは2つ。それは「コントロール・オリエンタード」(方向づけたトラップ)と「デスマルケ」(マークを外す動き)だ。動画の前編では基礎的なトレーニングを通じて、この2つに対する意識付けを実施した。

後編では、内容を実戦に近づけた「3vs3 + 6フリーマン」からスタート。設定としては、グリッド内で3対3を行いながら、周囲にいるフリーマンを使ってボールをポゼッションするというもの。グリッド内の選手は「デスマルケ」をしてパスを受け、フリーマンはコントロール・オリエンタードでプレスを受けないようにボールを運び、ポゼッションを継続する。

吉田氏のスペイン流トレーニングは、技術の習得と同時に状況判断も高められるものになっている。たとえば、フリーマンの近くでボールを受けようとした選手に対して「そばにフリーマンがいるので、中の選手が近寄ると、守備側は1人で2人の選手を見ることができるよね。グリッド内の攻撃側の選手とフリーマンはパスコースをイメージして、味方や相手と重ならないポジショニングを意識しよう」とアドバイスを送っていた。このあたりの声掛けの内容は、ぜひ動画で確認してほしい。

選手自らがプレー選択を考えられる状況を作る指導方法が効果的

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「試合形式の4vs4(GKを含む) 」では、「守備側は攻撃側をマンマークする」というルールで実施。攻撃側はマークを振り払う、もしくは相手の裏を突くことを頭に入れ、デスマルケを駆使してゴールを目指す。

ここでは吉田氏から「パスの受け方」についてアドバイスが送られていた。GKと正対するポジションでパスを受けようとした選手に対して、「ピッチ中央でパスを受けると、背後から来る相手が見えない。ゴール前でトラップミスをしたり、ボールを突かれて奪われると、一気にピンチになる」と説明。そこで、中央にいる選手がGKからのパスをもらいたい場合は、サイドの選手が前に出てスペースを空け、そこへボールと相手が見える身体の向きを作り、受けに入るという方法を教えていた。

そこで「視野を確保して、斜めのパスを使うこと」という意識付けをすることで、ただボールの流れに任せて動くのではなく、スペースの作り方や使い方、そのために必要な身体の向きと技術など、実演を交えてわかりやすく説明していく。

あらためて、ジュニア年代から、指導者がこのような知見を子どもたちに提供し、考えてプレーさせることが、選手としての成長につながることが再確認できる場面だった。

試合形式のトレーニングになったことで、選手たちが試合中に解決しなければいけない状況が出てくる。たとえば「GKがボールを持ってフリーでいるが、攻撃側の3人にマンマークがついており、パスの出しどころがない」という状況。吉田氏はそこで「攻撃側の選手がグリッド内に均等にいると、守備側が守りやすいので、攻撃側のサイドにいる選手が前に出て、空いたスペースに中央の選手が入ることで、パスコースができる」といったことをわかりやすく説明。デスマルケのためのスペースを作るために、崩しの形の理論を教えていく。

他にも動画の中では、ビルドアップ時にボールを持った選手が行う「運ぶドリブル」のトレーニングや、前進するドリブルとサイドでのコンビネーション、フリーゲームによるコンビネーションプレー(3vs2 + GK、3vs3 + GK)などが行われていく。

設定自体はシンプルだが、要点を抑えたトレーニングであり、経験の少ない指導者でも参考にできる部分はたくさんあるはずだ。

吉田氏はトレーニングの考え方について、次のように語る。

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「選手の意思決定、認知・判断・実行の段階で、選手にすべての決断を委ねるのではなく、大きな枠を指導者が作り、その中で選手に答えを選択してもらうという考えがスペインでは一般的です」

動画で紹介したトレーニングは、まさにそれらをどうやって具現化すればいいかが収録されている。これを見ることで、指導におけるたくさんのヒントを得られるはずだ。

撮影協力:UNA PRIMAVERA FOOTBALL CLUB、FUTSAL POINT 両国

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【講師】吉田和史/
イタリアに4年、スペインに16年在住し、2007年にスペインサッカー協会の指導者資格レベル3(UEFA Pro相当)を取得。
バルセロナ市内で2003年より9才から社会人チームの第1監督を歴任し、日本人では初めてカタルーニャ州ジュニアユース2部リーグ、ユース3部リーグ、社会人7部リーグの監督を務める。
現在はバルセロナ近郊のマリアナオ・ポブレのユースA(4部)の監督を務めている。