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複数の練習テーマを短時間で効果的に行う方法/練習は必ず90分以内!スペインに学ぶ時短トレーニング

COACH UNITED ACADEMY、今回の講師はカタルーニャ州ジュニアユース2部のマリアナオ・ポブレの監督を務める吉田和史氏。2007年にスペインサッカー協会の指導者資格レベル3(UEFA Pro相当)を取得し、バルセロナ近郊のクラブで16年以上に渡って監督として活動してきた吉田氏に、スペインで実施されている「基礎から応用をコンパクトにまとめた練習法」を教えてもらった。短い時間でできる、効果的なトレーニングを知りたい指導者は、ぜひ映像をチェックしてほしい。(文・鈴木智之)

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グループを2つに分け、一人あたりのボールに関わる時間を長くする

前編のテーマは「様々な練習メニューを、一つに統合させて実践するトレーニング」。吉田氏は「スペインでは試合と同じ練習時間でトレーニングすべきだという考えがあり、朝練や自主練は基本的にありません。週3日間、1回の練習が75分から90分に収まるようにプログラムされています」と説明し、トレーニングに取り掛かった。

1つ目は、パス交換とウォーミングアップを混ぜたトレーニング。通常はストレッチをしてからパス&コントロールのトレーニングに入る流れが一般的だが、吉田氏のトレーニングは、ボールを受ける前に動的ストレッチの要素を入れていく。

上半身は腕を回し、下半身はステップを踏みながらボールを受け、パスを返すといった形だ。ストレッチやウォーミングアップには様々なバリエーションがあり、吉田氏が実演しながら、初体験の選手たちに実施させていった。

ウォーミングアップで体をほぐしたところで、2つ目の練習に取り掛かった。「2チーム+フリーマンのポゼッション」だ。

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2チームでボールポゼッションを行うのだが、吉田氏は「1チームでボールがひとつだけだと、一人あたりのボールに関わる時間が短くなるので、グループを2つに分けます」と説明。次々に攻守が入れ替わるので、選手たちは休む暇もなく、動き続けることが求められる。

プレーのポイントとしては、守備側の選手に対して「三角形をキープしながら動くように」というアドバイスが送られていた。ボール保持者に対して、三角形の頂点の選手が近寄り、残りの二人は、両サイドの下がった位置にポジションをとる。そうすることで、相手のパスコースを消すことができる。「コーチが"トライアングル"と言ったときは三角形ができていないという意味なので、周りを見てポジションをとろう」(吉田氏)

3つ目の練習は「2チームによるポゼッション」。

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グリッドを二つに分け、ボールを保持しているチームが、もう一方のグリットに残っているチームメイトにサイドチェンジをし、プレーするフィールドを移動するという練習だ。

7対7+1フリーマンで行い、ボールがグリッドの外に出たからといってプレーを止めるのではなく、コーチがセンターラインからすぐにボールを出してプレーを続けさせ、強度を落とさない工夫がされていた。

様々な動作を連続して行うことがプレーの強度を高める

4つ目はシュート練習を実施。吉田氏は「一人当たりの待ち時間が、少しでも少なくなるような練習をします」と話し、まずは日本でよく行われている「ポストシュート」(シュート役がパスをし、リターンパスを受けてシュートを打つ練習)を実践した。最初に子どもたちにやらせて、プレーしていない選手が多い(待ち時間が長い)ことを確認すると、吉田氏が普段実践しているシュート練習に移行した。

このシュート練習は3人が同時にスタートし、攻撃2対守備1の状況を突破し、シュートまで持ち込んでいく。

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攻撃側の選手はシュートに至るまでのコンビネーションや、互いに動きのタイミングを合わせる必要があり、守備側の選手も数的不利の状態でどのように守備をするのかを、考えながらプレーすることが求められる。さらに、相手に抜かれた後のスプリントなどフィジカル的な強度も含まれており、実践に近い状況で、様々な要素がトレーニングできる内容だ。

前編の最後は「2対1→3対2」。グラウンドの半面を使い、次々に「2対1→3対2」が行われる。

吉田氏は攻撃の選手に対して「スクリーンプレー(ボール保持者の背後を通って移動する動き)をやってみよう」とアドバイス。2対1の状況で味方にパスをしても良いが、おとりに使って自ら突破を仕掛けてもいい。また、2対1で攻撃をした選手は、プレーが終わった直後に3対2の守備に入るといったように、プレーが途切れない設計がされていた。

このように、実戦に近い、様々な動作が連続して行われる状況を作ることが、プレーの強度を高めるとともに、75分や90分という短時間で実りあるトレーニングにするための工夫なのだろう。スペイン式の短時間練習を実現するためのトレーニング。全容はぜひ動画で確認してほしい。長時間練習をすることだけが、トレーニング効果を高める方法ではないことがわかるはずだ。

撮影協力:FC市川GUNNERS U11~12

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【講師】吉田和史/
イタリアに4年、スペインに16年在住し、2007年にスペインサッカー協会の指導者資格レベル3(UEFA Pro相当)を取得。
バルセロナ市内で2003年より9才から社会人チームの第1監督を歴任し、日本人では初めてカタルーニャ州ジュニアユース2部リーグ、ユース3部リーグ、社会人7部リーグの監督を務める。
現在はバルセロナ近郊のマリアナオ・ポブレ ジュニアユース(カタルーニャ2部)の監督を務めている。