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GKが味方へ正確な指示を伝えるためのコーチングとは?/GKに伝えるべき「声」の重要性と「言葉」の理解

『サッカー指導者のためのオンラインセミナー「COACH UNITED ACADEMY」』では、ゴールキーパー(GK)の指導について、日本トップクラスの指導者に登壇してもらった。昨年までサンフレッチェ広島やロアッソ熊本でGKコーチを務め、シュミット・ダニエルや大迫敬介を成長させた澤村公康氏だ。現在は関東を中心にGKスクールでの指導や、複数の強豪大学でGKコーチを務めている。豊富な経験と理論に裏打ちされた、「澤村式GK論」の一部を紹介したい。(文・鈴木智之)

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フィールド全体を見渡すことができるGKのコーチングは「神の声」

動画前編のテーマは「GKの声」。「GKの声は神の声」と言われるが、育成年代では、どのように声を出して、味方にコーチングすればいいかを理解できていない選手が多い。

ジュニアからJリーガーまで、すべての年代の指導経験を持つ澤村氏は「私はたくさんの選手を指導してきましたが、指導者やチームメイトから『もっと声を出せ』『何を言っているかわからない』『なんでそのタイミングで指示を出すんだ』と指摘されているGKをたくさん見てきました」と振り返る。

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チームの最後尾に位置し、全体を見渡すことができるGKの声は重要だ。フィールドプレーヤーへの戦術的な指示だけでなく、安心感や勇気を与える意味でも、GKの声はなくてはならないものである。

「360度、すべての方向に意識を向けなければいけないフィールドプレーヤーと違い、180度の視野で前方を向いてプレーできるGKは、フィールドプレーヤーが見えていないこと、気づいていない情報を声で届けることで、プレーをサポートすることができます。また、叱咤激励し、安心感や勇気を与える役割もあります」

では、GKはチームメイトに、何を、どのように伝えればいいのだろうか? 澤村氏は「5W1H(なぜ、いつ、どこ、何を、誰に、どのように)」を用いて、コーチングの内容をレクチャーしていく。

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それぞれの詳細はぜひ動画で確認してほしい。

GKはボディランゲージで指示を伝達することも大切

コーチングをする際には、声に加えて、もう一つ重要な要素がある。それがボディランゲージだ。

「チームメイトからバックパスをもらうときに、『ここ!』と手を出して、ボールを欲しい場所を指し示します。そこで、ジェスチャーでボールを欲しい場所を示さずに『右に出せ!』だけだと、GKから見て右なのか、その選手から見て右なのかがわかりません。対面している味方に、ボールを出す位置に対して指示を出すときは『右、左』ではなく、大きなボディランゲージで『ここ!』と言いましょう」

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ゴールを守るのは、GKだけの仕事ではない。チームメイト、なかでもGKの近くにいるDFと協力して、チームとしてゴールを守ることが大切だ。そのためにも、声やボディランゲージを使った「コミュニケーション」の質を高めておきたい。澤村氏は言う。

「コミュニケーションのポイントは4つあります。それがタイミング、クオリティ、ボリューム、言葉のチョイスです。試合中、ゴール前に攻め込まれたときは緊迫しています。チームメイトが理解しやすいように、『この状況では、こう声をかけるから』『この言葉の意味は、こうだから』と、普段の練習から会話をして、すり合わせておきましょう」

さらに、こう続ける。

「声の種類には、指示出し、情報伝達、叱咤激励の3つがあります。個人に対する指示は、シュートを打たせたくないアタッカーの近くにいる味方に出すものや、『相手のこの選手を見ておいて』といったもの。グループに対しては、DFラインが下がっているときに、最終ラインの選手に向けて『ラインを上げよう』などがあります」

忘れてはいけないのが、味方への叱咤激励だ。良いプレーをすれば「ナイス!」、良くないプレーをしたときには、指摘するなど、GKがチームメイトに声をかけることで、心理面のマネジメントをすることができる。

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「現役時代の私は『なんでシュートを打たせるんだ!』など、叱咤激励の"叱咤"ばかりしていたように思います。今の選手たちは、チームメイトが良いプレーをしたときには親指を立てたり、『OK!助かった!』など、ポジティブな声をどんどん出してほしいと思います。コミュニケーションのクオリティを高めるためには、日頃からピッチの中だけでなく、ピッチの外でも本音でぶつかれる関係を構築することが大切です」

動画では他にも、GKのテクニックとスキルの違い。チームメイトに伝わりやすい、指示の出し方にも言及。「日常生活から、語尾をしっかりと、滑舌良く、アクセントを意識して話す」といったアドバイスを送っている。

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GKの理論に加えて、指導現場や試合ですぐに使うことのできるテクニックが随所に散りばめられているので、指導者はもちろんのこと、現役のGKにも非常に参考になるだろう。

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【講師】澤村公康/

1971年、東京都大田区出身。三菱養和サッカークラブ、仙台大学を経て、指導の道に入る。熊本県立大津高校、浦和レッズアカデミー、JFAナショナルトレセンコーチ、川崎フロンターレアカデミー、浜松開誠館中学校・高等学校、ロアッソ熊本を経て、2019年シーズンはサンフレッチェ広島のGKコーチとして大迫敬介の才能を開花させた。2020年より拠点を東京に移し、GKスクールを立ち上げる他、大学チームの指導に当たっている。