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相手に選択を迫る位置取りで得られる優位性とは?/ポジショナルプレーを理解するための"林舞輝流"セミナー

ポジショナルプレーという言葉は昨今メディアを賑わす機会が増えている。様々な書き手が様々な解釈でこの言葉を解説しているが、その概念をどのように自チームに取り入れるべきなのか迷う指導者も多いのではないだろうか。ヨーロッパの強豪クラブを中心に多くのチームが実践していると言われているが、言葉の定義や理論ばかりが先行し、実践への落とし込みに関する発信はまだまだそう多くない印象だ。

そこで今回、イングランドやポルトガルの地でジョゼ・モウリーニョら世界トップレベルのコーチ陣から指導を受け、現在25歳の若さでJFLに所属する奈良クラブの監督を務めている林舞輝氏に、ポジショナルプレーとはどのような理論なのか。そして実際にポジショナルプレーを形にした戦術や、それを育成年代に落とし込む方法論について語っていただいた。(文・内藤秀明/編集協力・瀧本拓朗)

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相手に選択を迫るための「ライン間」

前編のテーマは「ポジショナルプレーを自チームに落としこむための前提知識」だ。まずはじめに林氏は、自らが考えるポジショナルプレーという言葉の定義について、以下のように語った。

「位置的優位と数的優位と質的優位の3つの優位性を活かすのがポジショナルプレーだとよく言われますが、"位置的優位を作り出すことによって、数的優位と質的優位を活かすのがポジショナルプレーだ"と僕は考えています」

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また、林氏はポジショナルプレーを理解する上でまずおさえておかなければならない「ライン間」と「5レーン」という2つのキーワードについて、

「サッカーにおいてピッチを横に分けたとき、DFライン、MFライン、FWラインの3つのラインでしっかり守っていることがわかりますよね。ライン間とは、それぞれのラインの間のスペースのことです。また、5レーンとは、今度はピッチを縦に5つに分けたときの考え方で、なかでも両サイドのレーンと一番真ん中のレーンの間にある2つのレーンのことを"ハーフスペース"と呼びます。攻撃側からすれば、ライン間やハーフスペースで選手がボールを受けることで、誰がマークにいくべきか守備側の選手に選択を迫ることができ、誰かがマークに来ることによって空いたスペースをまた利用して、さらに有効的な攻撃を仕掛けることができます」

と、ホワイトボードを活用しながら語ってくれた。

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バルセロナが世界に衝撃を与えた「偽9番」

まず前提として理解しておくべきポジショナルプレーの定義やキーワードについて説明した後は、実際にポジショナルプレーが形として鮮明に表れた戦術をいくつか紹介しつつ、その戦術の何が秀でているのかを解説している。

最初に紹介したのは、バルセロナがレアル・マドリーを6-2で下した08-09シーズンのエル・クラシコで、当時のペップ・グアルディオラが披露した「偽9番」という戦術だ。

「当時は最前線に位置するFWの役割といえば、味方からのロングボールを相手CBと競り合ったり、ボールを受けておさめたりすることでした。しかし08-09シーズンのクラシコでは、バルセロナのFWリオネル・メッシは、最初は最前線にいたものの、しばらくすると、レアル・マドリーのDFラインとMFラインの間をフラフラとしはじめたんです。そうなると、そのメッシにボールが入った時、レアル・マドリーのCBはマークにいくべきか迷うんですよね。

もし、マークにいけば本来自分がいた場所にぽっかりとスペースを空けてしまいます。そうすると、斜めに走って裏へ抜け出すのが得意な左WGのティエリ・アンリや右WGのサミュエル・エトーが走り込むためにスペースを空けてしまうことになるわけです。かといって、DFラインとMFラインの間でボールを持つメッシに対し、余裕を持った状態で前を向かれるわけにはいきません。結局ライン間でフラフラするメッシに対しどうすることもできなかったレアル・マドリーは、バルセロナに惨敗してしまったんです」

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前編動画では、この後もポジショナルプレーを形にする上での重要な要素、「サリーダ・ラボルピアーナ」「偽サイドバック」「質的優位を最大限に活かす方法」「密集とアイソレーション」「ポジショナルプレーにおけるGKの重要性」などを語っている。読者の皆さんにとって既知の知識もあるかもしれないが、それらの考え方が生まれた背景とメリットやデメリットを時系列で網羅的に知ることで、ポジショナルプレーを自チームに取り入れるため前提知識を整理できるだろう。詳しくは動画を閲覧いただきたい。

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【講師】林舞輝/
奈良クラブ監督。イギリスの大学に在学中、イングランド2部のチャールトンのU-10とスクールでコーチを務め、2017年よりポルト大学の大学院に進学。同時にポルトガル1部のボアビスタBチーム(U-22)のアシスタントコーチを務め、主に対戦相手の分析・対策を担当した。その後、ジョゼ・モウリーニョが責任者と講師を務める指導者養成コース『High Performance Football Coaching』に通い、2019年、23歳でJFLの奈良クラブGMに就任。2020年からは同クラブの監督を務めている。