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フィニッシュまで持ち込むスペースを作る際のマークの外し方/U12年代時から11人制サッカーを指導する練習法

神奈川県の強豪街クラブとして、Jクラブとも互角に渡り合う大豆戸FC 。U-11、ジュニアユース統括コーチの末本亮太氏に聞く「U-12年代から、11人制サッカーを指導する練習法」。後編のテーマは「攻撃における、ゾーン3のトレーニング」。どのように相手を崩し、フィニッシュまで持ち込むのか?その練習法とポイントを紹介したい。(文・鈴木智之)

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マークを外す時はボールを持っている味方が顔を上げた瞬間に動き出す

トレーニングでは、自陣(ゾーン1)、中盤(ゾーン2)、相手ゴール前(ゾーン3)と、ピッチを分け、自陣からのビルドアップ、中盤からの前進を経て、最終的には相手ゴール前に進入し、シュートに持ち込むことが狙いだ。

前編のトレーニングでは、ゾーン1、ゾーン2でのプレーを実施したが、後編ではいよいよゴール前の局面(ゾーン3)に入っていく。

後編最初のトレーニングは「2対1+2対2」。中盤のゾーン(ゾーン2)から、相手ゴール前(ゾーン3)にパスを入れて、フィニッシュまで持ち込むイメージで行う。

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ポイントはマークを外す優先順位、適切なサポート、3人目の動きを入れること。途中から「ゾーン2の選手がサポートをして良い」というルールを追加することで、ボールの動かし方、サポートの位置を考えながら、シュートまで持ち込んでいく。

最初に末本コーチが質問をしたのが、マークの外し方について。選手に「どうやってマークを外す? いつマークを外す?」と問いかけると、選手から「ボールの移動中」という答えが返ってきた。

「そうだね。まず自分が行きたい方向を空けておいて、ボールを持っている味方が顔を上げた瞬間に、欲しいところへ動き出そう。ボールが移動している最中に『ヘイ!』と言っても、出てこないよ」

さらに末本コーチは、ボールを受けた選手に対して、周りの選手がどのタイミング、角度でサポートするかについても言及。ボール保持者と周囲の選手が「つながる」ことの重要性を説明していく。

「いつ、どこに、どうやってを意識しよう」「味方に前を向かせたいのか。相手が背後にいるのか。パスにメッセージを込めよう」

前方の味方へパスを送る時はまず中央のエリアを狙う

2つ目のトレーニングは「3対2+3対4」。最初のトレーニングより、ボールに関わる人数が増える。状況が複雑になり、時間とスペースがない中で、正確な技術の発揮、味方とのコンビネーション、動き出しとパスのタイミングを合わせることなど、実戦に近い形でトレーニングしていく。

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末本コーチは、サイドにボールが入ったときに、パスの優先順として、中央部にボールを入れることを強調。中央にパスを出し、落としたボールを2列目の選手が前向きのサポートをしてボールを受け、厚みのある攻撃を展開していく形を指導していった。

「まずは真ん中、難しいところをチャレンジしよう」と声をかけると、直後に、そのプレーが出現するなど、選手たちの理解力の高さがうかがえる場面もあった。

「スペースに早く入りすぎないこと。タイミングを合わせよう。攻撃側の選手がゴール正面に入られると、相手は嫌。そこを目指し、入れなかったらペナルティエリアの脇を狙おう」

最後は11対11のゲーム形式で締めくくり。ゾーンを区切り、守備側の選手はゾーンを移動できない(戻って守備はできない)というルールを設定。この日のトレーニングで取り組んできた、ゾーン1からゾーン2、3へとどうやって進入するかにフォーカスしていった。

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ここでは「後ろのゾーンは5対2だよ。さっきの練習でやったよね」などの声をかけていく。それまでの練習で行ったことを試合で活かすために、頭の中をリンクさせるような働きかけが印象だった。

練習後、末本コーチは次のように語った。

「ゾーン3でのトレーニングは、個人戦術で重要な『マークを外す動き』と、そうしてできるスペースを、味方選手がどう使うかがポイントになります。相手のバランスを崩してゴール前を攻略し、良い状態でフィニッシュを迎えることができるかがポイントです」

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さらに、こう続ける。

「大きく言えば、11人制と8人制に違いはありません。各ゾーン、プレーエリアごとの優先順位を一人ひとりが理解し、味方とプレーできる選手たちがつながり合うことで、11人制にスムーズに移行することができます。そのためには、ゾーンを区切って、どのようなプレーをすればいいのかを丁寧に伝えていくこと。そうすることで、フットボーラーになると確信しています。今回のトレーニングをぜひ参考にしてみてください」

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【講師】末本亮太/
JFA B級ライセンス、フットサルC級ライセンス、JFA公認キッズリーダー。
大豆戸FC代表理事、U12監督。ジュニアユース、シニアチームの立ち上げ、クラブのサッカー以外の多角的な活動構築にも尽力。「ちょっと自慢できる、サッカーを通じて出会うはずのない感動、人、未来を創造し、非日常を提供すること」をミッションに掲げ、自チームの活動の他に「プレミアリーグU11神奈川」の運営や地域でサッカー広場を開催するなど、育成年代の活動に力を注ぐ。
また、小学生を連れての被災地訪問などNPO団体として、サッカーだけにとどまらない活動も行っており、将来を担う子どもたちの育成にも力を注いでいる。