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ボールを奪ってからどこにパスを展開するのかを判断する方法/大豆戸FC実践の守⇒攻の切り替えトレーニング

Jクラブや街クラブの強豪が集う神奈川県で、ひときわ存在感を発揮しているクラブがある。それが大豆戸FC(横浜市・港北区)だ。U-23日本代表の小川航基を輩出し、Jクラブの育成組織や高校サッカーの名門校に進む選手も多く、選手育成には定評がある。

COACH UNITED ACADEMYで公開中の、U12監督・末本亮太氏による「守備から攻撃の切り替えを身につける、トランジショントレーニング」。後編は「実戦形式で、守備から攻撃の切り替えを実施する練習法」を実践してもらった。(文・鈴木智之)

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ボール奪取後、遠くまたは近くどちらの味方に展開するのかを見極める

トレーニング前、末本監督は「動画後編では、複数の選手が関わりながら、グループでの切り替えをトレーニングしていきます。奪ったボールを遠いところにいる味方につけるのか。それとも、近くの味方との関わりの中で保持するのか。その判断がポイントになります」と説明。

さらに「ボールを持っていない選手は、ボール保持のためのパスコースやスペースを作ること。幅と深さをとる位置に動き、前進するためのパスコースづくりを意識します」と話し、最初のトレーニングに取り掛かった。

後編、最初のトレーニングは「4対4対4のポゼッション」。

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グリッドを3つに分けて、2つのゾーンに守備側が2人ずつ入るように設定。攻撃側は守備側を避けて、反対サイドのチームにボールを渡すと1点となる。守備側がボールを取られたら、奪われた攻撃側のチームが守備に入るというルールなので、実際の試合と同じく、攻守の切り替えが頻繁に起きる設定になっている。

これは、トレーニング前に末本監督が言っていた「ボールを遠い味方につけるのか、近くの味方との関わりの中で保持するのか」という判断が高められるメニューだ。逆サイドへのパスコースがあれば、素早くパスを通してもいいし、守備側の陣形が整っていて、パスコースがなければ、手前でボールを保持して陣形の変化を作り出す。

末本監督は、攻撃側の選手が横に並んでいることに対して、「その位置でボールを動かせる?」と問いかけ、選手たちは幅と深さをとるポジションへと移動していく。

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さらに守備側の選手に対して「ボールを奪った後、すぐに攻撃につなげたい。どうすればいい?」と問いかけ、「広い方へ展開する」という答えを導き出すと「狭いところでパスを繋ぐのではなく、広いところへボールを運ぶと、プレッシャーから遠ざかることができる。それをイメージしてやろう」とアドバイスを送っていった。

味方がボールを奪うことを予測して移動中に次のプレーの準備を行う

2つ目のトレーニングは「6対6+GK+2フリーマンのゲーム」。

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ボールを保持してスタートする攻撃側のチームは、パスを4本(途中から6本)つなぐことができれば、フリーマンを使ってゴールに進むことができる。ボールを奪ったチームは、フリーマンを使ってゴールを目指すというルールだ。

末本監督は途中でプレーを止めると、サイドにいるフリーマンの選手が、前のスペースが空いているのに、ボールを下げてしまったことに対してコーチング。

「今日はボールを奪って、素早くゴールに向かうトレーニングをしているんだ。まずは前に仕掛けていこう。そうすれば、相手と2対1の状況ができるよ」

攻守の切り替えの部分では、守備側の選手に対して、味方GKがキャッチしてからボールを受ける位置に移動したのか。それとも、GKがボールを受けるだろうと予測して、早めに動き出したのかについて質問。GKがキャッチすることを予測して、ポジションをとっていた選手を褒め、「みんなも、そういう準備をしよう。ボールの移動中の準備が差を分けるよ」と、予測して速く動くことの重要性を伝えて行く。

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ほかにも、最後尾の選手に対して、「ボールを奪ったら、次のプレーは何を意識する?」と尋ねると、選手は「前に運ぶ」と返答。「じゃあ、一番大事にしなければいけないことは?」「ボールを奪われないこと」「どうして?」「ボールを奪われたら、一番危険なエリアなので」というやり取りを通じて、「ボールを確実に運ぶか、サイドのフリーマンにパスを出そう」と、プレーの優先順位を説明していく。

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中盤の選手に対しては「このゾーンでボールを奪ったときに、何を考える?」と質問。そこで「前を狙う」「2対1を作る」「相手をひきつけてフリーマンにパスをする」などの答えが出る。

そこで「相手ゴール寄りの位置でボールを奪った際には、シュートを打つか、相手チームの選手が近くにいる味方、いわゆる『際どいコース』にパスを出すのもOK。もしそこでボールを奪われても、すぐに守備に入ることで取り返すことができる」と、攻守の切り替えに働きかけていくとともに、グラウンドのどこでボールを奪うかで、プレーの選択が変わることについて、選手たちの思考を整理していった。

最後のトレーニングは「8対8(3ボール)」。

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試合球以外に、各チームがランダムで1人、ボールを手に持った状態を作ってプレーをする。ボールがピッチの外に出たら、ボールを出したチームとは反対のチームの、ボールを持っている選手から再開。途中からボールを手で持つのは止め、ボールがピッチの外に出たら、コーチからの配球で再開というルールで実施。この、ユニークな設定のトレーニングは、ぜひ動画で確認してほしい。

練習後、末本監督は「ボール保持と非保持の切り替えのときにこそ、日々の習慣が表現されます。日頃から攻守の切り替えが必要なトレーニングをすることで、選手のパフォーマンスは劇的に変わってくると思います」と、COACH UNITED ACADEMY読者にアドバイスを送り、トレーニングを締めくくった。

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【講師】末本亮太/
JFA B級ライセンス、フットサルC級ライセンス、JFA公認キッズリーダー。
大豆戸FC代表理事、U12監督。ジュニアユース、シニアチームの立ち上げ、クラブのサッカー以外の多角的な活動構築にも尽力。「ちょっと自慢できる、サッカーを通じて出会うはずのない感動、人、未来を創造し、非日常を提供すること」をミッションに掲げ、自チームの活動の他に「プレミアリーグU11神奈川」の運営や地域でサッカー広場を開催するなど、育成年代の活動に力を注ぐ。
また、小学生を連れての被災地訪問などNPO団体として、サッカーだけにとどまらない活動も行っており、将来を担う子どもたちの育成にも力を注いでいる。