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味方がボールを奪った時にとるべきサポートのポジショニング/大豆戸FC実践の守⇒攻の切り替えトレーニング

2019年度のフジパンカップ関東少年サッカー大会で3位、神奈川県チャンピオンシップで優勝するなど、神奈川屈指の育成クラブとして知られる大豆戸FC(横浜市・港北区)。U-22日本代表の小川航基などのJリーガーを輩出している同クラブでは、どのような指導をしているのだろうか?

大豆戸FCの代表であり、U12の監督を務める末本亮太氏に「守備から攻撃の切り替えを身につけるトレーニング」をテーマに実践してもらった。前編は「守備から攻撃の切り替えに必要な動きと技術の習得」と題したトレーニングを紹介したい。(文・鈴木智之)

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常に攻撃・守備の両方の切り替えが発生するようなメニューを設定する

末本監督は「育成年代ではボール保持、非保持を分けるのではなく、常に両方の切り替えが発生するようなトレーニング設定をしていきます」と話し、練習のポイントとして「自分と味方と相手といった近いところから、広いスペース、より遠い味方、ゴールなど、近いところから遠いところへ、単純なものから複雑なものへと広げていきます」と説明する。

最初のトレーニングは「4色の切り替え鬼ごっこ」。

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ウォーミングアップを兼ねて行われるこのメニューは、コーチの「黄色」「青」などの声に合わせて、鬼が変わるので、単純に身体を動かすだけでなく、認知や判断にも働きかけることができる設定になっている。

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末本監督は選手たちに「鬼からうまく逃げ切るため、鬼が相手にタッチにするために必要なことは?」と質問。選手からは「空いているスペースに行く」「後ろからタッチする」「ハードに追い込む」など、次々に答えが出てくる。質問から返答の時間が非常に短く、普段から考えてプレーしていることがうかがえる。

2つ目の練習は「ランダムドリブル」。

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1人1個ボールを持ち、逃げる役と追いかける役(鬼)を決めて、ともにドリブルで進んでいく。「鬼にタッチされたら役割を交代する」というルールなので、攻守がすぐに切り替わるところがポイントだ。

この練習ではただドリブルをするだけでなく、鬼の動きを見ながらボールを運ぶこと、緩急をつけて鬼にタッチされないようにすることなど、プレーの実行に加えて、認知、判断の要素も加えられていた。

ボールを奪ったら周りの味方はスペースに広がり攻撃エリアを広くする

3つ目の練習は「2vs2対2vs2のポゼッション」。

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ビブスを4色使い、その中で2色同士が味方となる。攻撃側はグリッド内でパスを6本繋ぐと1点。守備側は味方同士でパスを3本繋ぐか、グリッドの角にいるフリーマンにボールを渡せば1点となる。

この練習は得点が決まると攻守が入れ替わるので、常に切り替えの意識を持つことが大切だ。末本監督は選手たちのプレーを見ながら「守備側はボールを奪って、パスを繋いで遠い方へ行きたい。どうすればうまくいく?」と問いかけて、選手たちに考えてプレーするようにうながしていく。

また「ボールを奪ったらどうする?」と質問をし、選手が「広がる」と答えると「どうして?」と返して、思考を掘り下げさせていく。選手もその形式に慣れているのか、「相手が密集しているから」と返答。すると末本監督は「そうだね。ボールを奪うときは狭くなり、攻撃のときは広がる。それを意識して、距離感も考えながらやってみよう」とアドバイスを送っていく。

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さらに末本監督は、マイボールになったときに選手が広がったことにより、パスコースが生まれたことに言及。プレーにシンクロしながら、より良い判断ができるようなコーチングをし、選手たちを導いていった。

末本監督の声掛けの内容、トーンなどは選手目線に立っており、非常に参考になる。練習メニュー、コーチングの内容もさることながら、高圧的とはかけ離れた、指導者としての丁寧な振る舞いの部分もぜひ見てほしい。

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末本監督は前編のトレーニングを終え、次のように語った。

「前編では個人でボールを奪って運ぶところから、パスを使って次の目標に向かって切り替えるトレーニングを行いました。ボールを取られたら終わり、奪ったら終わりではなく、必ず目標があって、そこに向かっていくトレーニングをすることが大事だと考えています」

後編ではより試合に近い状況でボールを奪い、ゴールを目指すトレーニングを紹介したい。

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【講師】末本亮太/
JFA B級ライセンス、フットサルC級ライセンス、JFA公認キッズリーダー。
大豆戸FC代表理事、U12監督。ジュニアユース、シニアチームの立ち上げ、クラブのサッカー以外の多角的な活動構築にも尽力。「ちょっと自慢できる、サッカーを通じて出会うはずのない感動、人、未来を創造し、非日常を提供すること」をミッションに掲げ、自チームの活動の他に「プレミアリーグU11神奈川」の運営や地域でサッカー広場を開催するなど、育成年代の活動に力を注ぐ。
また、小学生を連れての被災地訪問などNPO団体として、サッカーだけにとどまらない活動も行っており、将来を担う子どもたちの育成にも力を注いでいる。