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プレーに必要な身体を作る動的ストレッチの行い方/清水エスパルスアカデミーが取り組むストレッチの実践法

連戦で溜まった疲労をどうケアするか。これは選手、指導者に共通する悩みだろう。実際にJリーグクラブの指導現場では、どのような取り組みをしているのだろうか?

清水エスパルス育成部門で活動するフィジカルコンディショニングコーチ・齋藤佳久氏に聞く「パフォーマンス向上に必要なストレッチの実践方法」。後編は「バリスティック、ダイナミックスストレッチの実演と疲労回復の行い方」と題し、ハードな試合や練習後に、自宅でできるストレッチを解説してもらった。(文・鈴木智之)

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ダイナミックストレッチはプレーをイメージして、良い姿勢で行う

前編では静的ストレッチ(スタティックストレッチ)を紹介したが、後編では動的ストレッチ(ダイナミックストレッチ)とクーリングダウンとしてのストレッチの実演に移っていく。

「サッカーのプレーは動きを伴うものです。その動きに合わせたストレッチをすることで、プレーにつなげることができます。イメージとしてはスタティックストレッチで可動域を広げてから、ダイナミックストレッチを行い、プレーするための筋肉の準備をするという流れです」

ダイナミックストレッチをするときのポイントが、プレーをイメージして、良い姿勢で行うこと。

「筋肉の収縮と弛緩を繰り返し、動きを実際の試合につなげていきます。そのため、猫背や骨盤の後傾に気をつけ、良い姿勢でやることを心がけてください」

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ここからは齋藤トレーナーに、練習や試合前に行うダイナミックストレッチを実演してもらった。まずは背中からハムストリングスまで、伸ばしていくストレッチから。

①背中~ハムストリングス

上半身の肩甲骨から背中を伸ばすストレッチをし、片足を一歩前に出す。つま先を浮かし、上半身を上に伸ばした状態から前方へ倒していく。痛みのない範囲で反動をつけて行う。

②上肢(屈伸交互)

手を片方ずつ、交互に上げ下げするストレッチ。上の手を耳の後ろ、下の手を体よりも後ろに伸ばし、上半身の柔軟性を高めていく。

③上肢(肘回し)

両手を肩に付け、肘を大きく回す。上半身から肩甲骨の可動域を広げていく。横から見たときに、肘で大きな円を描く動作を意識する。

④上半身~肩関節周り→上半身~体幹①

上半身をひねる動きのストレッチ。片膝を地面に着け、膝と同じ方の手を地面に着ける。
その状態で反対側の手を上げ、胸椎を開くように伸ばす。伸ばしている腕は、自分の体の後ろまで伸ばすことを意識して行う。

⑤上半身~体幹②

片方の膝を曲げ、もう片方の膝は地面すれすれの位置でキープ。その状態で両腕を頭上に伸ばし、横に倒して、体の側面を伸ばしていく。

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動画では、ここで紹介したものに加えて、腸腰筋(股関節付け根)、ハムストリングス(太もも裏)、股割り(上下、左右)、ふくらはぎ~アキレス腱、飛行機バランス、クロスモーションスイング、ハムストリングス(太もも裏)、腸腰筋(股関節伸展)、内転筋、腰回旋内転筋、股関節回旋(外回し)といったダイナミックストレッチを実演している。

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各メニューはサッカーに必要な可動域を確保するとともに、キックを始めとするプレー動作に近いので、どの筋肉を意識して刺激を入れるのかといったイメージも湧きやすい。動き自体はシンプルなので、ぜひチームや個人で取り入れてみてほしい。

運動後にスタティックストレッチを行うと疲労を軽減することができる

ここからは「疲労回復(クーリングダウン)」のストレッチに移っていく。激しい運動をした後に出現する筋肉痛は、ストレッチによって軽減することができるという。

「運動後には痛みのない範囲で、ゆっくり長く行うスタティックストレッチが一般的です。自宅では時間をかけて、じっくり行いましょう。柔軟性を高めるためにするので、痛みや筋肉の張りがある場合は、無理してやらない方がいいと思います」

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動画後編の最後には、「プレー後のスタティックストレッチ」を収録。下記のメニューを実演している。大腿四頭筋(太もも前)4種類、ハムストリングス(太もも裏)3種類、内転筋、股関節回旋(おしり)、腰回旋、ふくらはぎ~アキレス腱~三方向。

プレー前、プレー後に必要なストレッチが網羅されているので、この動画を見ることで、必要な準備とケアを理解することができるだろう。

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最後に齋藤氏が、COACH UNITED ACADEMY読者に向けて、メッセージをくれた。

「プレー前には可動域を広げ、筋肉が十分に動くことができるように、刺激を入れる必要があります。そのためにダイナミックストレッチをします。プレー後には、明日以降の準備として、静的ストレッチをしましょう。身体に疲れを残さないことに加えて、育成年代の選手は身体が固くなりやすいので、継続してストレッチをしましょう。姿勢も柔軟性に関連するので、日常生活からプレーにつなげていくことを意識してみてください」

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【講師】齋藤佳久/

理学療法士(PT)、国際PNF協会認定PNFセラピスト、スポーツ栄養スペシャリスト。PTとして10年以上スポーツを専門とするリハビリとサッカーのトレーナー活動に携わる。現在、エスパルス育成部PTとしてメディカル部門を担当する一方、フィジカルコンディショニングコーチとして、身体作りやパフォーマンス向上、食育に対しての取り組みも行う。姿勢・動作分析から選手を客観的に評価し、必要に応じてパーソナルトレーニングも実施している。