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引いた相手を攻略するスペースの作り方/中盤エリアからアタッキングサードへのビルドアップトレーニング

ジュニアサッカー激戦区・神奈川の強豪街クラブ、SCHフットボールクラブU-12監督の樋口智哉氏が実践する「中盤エリアから、アタッキングサードへ侵入するビルドアップトレーニング」。後編では「実戦形式でビルドアップを行う応用練習」をテーマに、試合に近い状況の中で、どのようにして技術、判断、コンビネーションを磨いていくか? を紹介したい。(文・鈴木智之)

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守備側を前に食いつかせないとボールを失う場面が増えてしまう

後編最初のトレーニングは「3対2+2対3」。ゴールを使用し、それぞれにGK役としてDFを配置する(手を使ってボールをキャッチすることはできない)。

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攻撃側のポイントは「チームとして、どのようにボールを動かし、前進していくか」。そのため、周囲の選手がボール保持者に対し、パスコースを作るサポートの動きを行うこと。そして、ボール保持者が気づいていなければ、声を出してコミュニケーションをとり、パスを呼び込むことなどがポイントになる。

樋口監督は選手たちがプレーする中で、ボールを失う場面が多いことに着目し、「どうしてだろう?」と問いかける。

「守備側が引いて守っている時に前進しても、自分たちが取りたいスペースが開かないよね。その場合はボールを下げて、守備側を前に食いつかせて、スペースを作ろう。そこを理解しないと、ボールを失う場面が増えるよ」と、状況判断やゲームの理解について、意識づけしていく。

さらには「相手を引き出そう」「(パスの出し手と受け手の)タイミングを合わせよう」などの声掛けを通じて、効果的なボールの受け方、つなぎ方にアプローチしていった。

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その際に重要なのが、縦にボールを動かす意識を持ちながら、使いたいスペースを開けておいて、そこに選手が入って行くといったように、相手と駆け引きをすること。

ボール保持のためにポゼッションするのではなく、ゴールを狙いながらボールを動かし、相手を動かすことでスペースを作る。そこに選手が入ってボールを受けることで、前進しやすくなり、最終的にシュートに持ち込むことができるのだ。

樋口監督は、攻撃の選手が、守備側の選手の視界の中でボールを受けようとしていたことに言及。

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そうではなく、相手の背後に抜けてボールを受けることや、背後の位置から降りてきてボールを受けるなど、相手と駆け引きをし、ボールを受けるタイミングを作り出すことについてアドバイスしていった。

どこのスペースを使いたいかを選手同士が共有する

続いては「5対5+1サーバー+1GK」。攻撃側はゴールにシュートを決めれば1点。守備側はサーバーにパスをするか、コーンゴールにドリブルで通過すると1点となる。

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このトレーニングも同じように、攻撃側は「相手の状況を観ながら前進していくこと」がポイントになる。

樋口監督は「より良い攻撃をするために、どこのスペースを使いたいかを選手同士が共有して、ポジションをとることが大事だよ」と声をかけていく。

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途中からオフサイドラインを設定し、強度の高い中で、素早く状況の変化を観て、ボールに関わるタイミングやパスの受け手を変えることなどを求めていった。

最後のトレーニングは「5対5+1フリーマン+2GK」。攻撃側はフリーマンを使い、数的優位を活かして攻めていく。ここでは守備の強度もポイントだ。ボール保持者に素早く、強くアプローチに行くことにより、攻撃側は的確なボールコントロールや周囲の選手の素早いサポートなどが求められるようになる。

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攻撃側は守備側の素早い寄せに対し、どこにボールを置くのか、どうやって相手を外すのかなどを、ボールを受ける前やボールの移動中に観て、判断していく。さらにはゴールを目指しながら、どのスペースをいつ使うかなど、周囲の選手との意識の共有、パスの出し手と受け手のタイミングを合わせることにも意識を向けていく。

樋口監督は「素早い動きで相手を外し、その瞬間にタイミングを合わせてボールを受けよう。そうすることで次のプレーがしやすくなり、前進しやすくなる」とアドバイスを送っていた。

SCHの選手たちによる、高い技術をベースに判断やコンビネーションが向上していく様子は、ぜひ動画で確認していただければと思う。

トレーニングの最後に、樋口監督がCOACH UNITED ACADEMY読者に向けて、メッセージをくれた。

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「中盤エリアからアタッキングサードへ侵入していく際、相手の守備がコンパクトになります。その中での技術の発揮、サポートの質、距離、角度。タイミングを、いつ、どのようにとるかにフォーカスし、指導を行いました。今回のトレーニングが、少しでも皆様のお役に立てればと思います」

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【講師】樋口智哉/

2009年からSCHフットボールクラブで指導者を始める。
現在はSCHフットボールクラブのジュニア統括兼U-12監督として指導し、SCHフットボールクラブスクール、横浜市トレセンU-11・12、横浜市泉区の技術部長として泉区トレセンU12でも指導を務めている。