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今の時代で大切なのはサッカーを通して人間力を高めること/コロナ禍におけるサッカーコーチのあるべき姿

コロナ禍において、サッカーコーチはどのような考えで指導にあたればいいのだろうか? このテーマでセミナーを実施してくれたのが「サッカーコーチ専門コーチ」の倉本和昌氏だ。

前編はマインド編と題し、コーチングや心理学の知見をベースとした、倉本氏の考え方を話してもらった。サッカーの指導に限らず、生き方や人生のビジョンについてなど、改めて考えることのできる動画になっている。ぜひ、動画内での発言に耳を傾け、ご自身の考え方、スタンスを振り返るきっかけにしてほしい。(文・鈴木智之)

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みんなでどう戦って勝つのかのプロセスが重要視される時代に

倉本氏は長くスペインで指導者として活動し、スペインの上級指導ライセンスを取得後、湘南ベルマーレ南足柄、大宮アルディージャで育成コーチを務め、2018年から「サッカーコーチ専門コーチ」として活動中。

国内外で得た指導に対する経験値だけでなく、心理学などからのアプローチも豊富で、スポーツにとどまらず、社会生活や学校生活などでも役に立つ情報を提供している。

今回のテーマは「コロナ禍におけるサッカーコーチのあるべき姿」。新型コロナウイルスは「ビフォーコロナ」「アフターコロナ」と区切っても差し支えないほど、人々の考え方や行動にパラダイムシフトを起こした。

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倉本氏はコロナ禍において、およそ500人のサッカーコーチの無料相談を実施したという。今回のセミナーは数多の相談を通じて深めた見識を踏まえ、興味深いトピックが並べられている。

たとえば「グレートリセット」という、経済フォーラムのテーマを用いた話題では、お金を稼ぐことが良しとされていた時代から、人間の幸福度にフォーカスしていく考え方を提示。それをもとに、「サッカーをする子どもの幸福ってなんだろう?」と展開していく。

「今までは強いチームに人が集まることや、厳しく指導してくれていればOKという考え方がありました。でも、コロナ禍で活動がストップしたことによって、例えば親としては、子どもに理不尽な思いをさせてまで、サッカーをやらせることのメリットはなんだろうと考えるわけです」

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さらに、こう続ける。

「子ども自身も、あんなにきつい思いをさせられて、それでも耐えられないと『お前が弱いんだ』などと言われてしまう。もちろん競技志向が高く、上を目指す子がいることは良いのですが、全員がそれを強要されるのはおかしなことです。そもそもスポーツは楽しむものです。余暇で楽しむもののはずが、頑張らなければいけないものになってしまっているのです」

そのような現状を踏まえて、西洋占星術の考え方である「土の時代」(産業革命から始まった物質の時代)から、2020年末に「風の時代」へと星の動きが変わったことを紹介し、「お金などの物質的な豊かさから、人とのつながりやコミュニケーションなどが重要視されるようになります」と話す。

「これをサッカーに例えると、結果よりも、目標達成のプロセスやみんなで取り組む充実感があった上で、ただ勝てばいいのではなく、みんなでどう戦って勝つかが大切になってきます。はたして、厳しい指導をして、選手を追い込んで勝つ、弱いチームはダメだという考え方がいいことなのでしょうか?それが、いまの人々に求められていることなのかを、考えなければいけない時代に来ています」

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時代の変化に対応するには「理想の状態に向けてトライを続けること」

倉本氏は「なによりも、子どもたちにサッカーを楽しいと感じてもらい、競技レベルはどうであれ、パフォーマンスを高めることに取り組んだおかげで人間力が上がり、社会で活躍できるようになってほしい」と言葉に力を込める。

倉本氏がセミナーを通じて投げかけていたのが、「価値観が変わり始める中で、いままでのような勝利至上主義、がんばりを強要する指導でいいのか」という疑問だ。

「いまの時代で良くないことは、何もしないことです。変わらないこと、そのままで居続けようとすることが、一番危険なのではないかと思います。なぜなら、もう世の中が変わってしまっているからです。その変化に適応しようとするのか、それとも頑なに自分を変えないことによって、大変な思いをするか。その二択になりつつあります」

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変わるためには、仮説を立ててチャレンジし、失敗をもとに改善すること。理想の状態に向けてトライを続けること。それが大事なことだと倉本氏は語る。

「コーチがそのような考え方であれば、子どもたちがトライをしたときに『素晴らしい』『もっとこうしたら良くなるんじゃない』とアドバイスをし、寄り添うことができると思います」

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COACH UNITED ACADEMY動画の中では、子どもたちがトライできるような環境づくり、コーチの心構え、幸福度や承認欲求について。感動の体験や共有の重要性など、わかりやすいトピックを元に解説している。

指導に行き詰まりを感じたとき、方向性を振り返りたいとき。そして指導者として成長し、子どもたちにより良い指導をするために、何が必要なのかを模索しているとき。動画には、それらを解決するための手助けとなるヒントが詰め込まれている。繰り返し見て、自問自答したくなる。そんな動画だ。

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【講師】倉本和昌/

サッカーコーチ専門コーチ。高校卒業後、スペインのバルセロナに留学。アスレチック・ビルバオにて育成の仕組みについて学び、スペイン公認上級ライセンスを日本人最年少で取得。帰国後は湘南ベルマーレ南足柄、大宮アルディージャのアカデミーでコーチを務め、2018年よりサッカー専門コーチとして独立。Jクラブ、大学、高校、町クラブ、幼児など様々なカテゴリーのコーチをサポートしている。2021年にオランダ移住計画を計画中。