01.17.2022
前進するためのGKを使った数的優位の作り方/蹴らずに繋ぐゴールキックからビルドアップを行うトレーニング
自陣ゴール前からビルドアップし、攻撃を展開するチームに必要なのが、「GKからの組み立て」だ。そこで、ボールを保持するスタイルに定評のある、ソレッソ鹿児島U-12コーチの瀬戸口大翼氏に「ペナルティエリア内に味方がいる状況から、ゴールキックを行うビルドアップトレーニング」をテーマに、トレーニングを実施してもらった。
後編は「人数を増やした状況で、ビルドアップを行う応用練習」に取り組んでいく。(文・鈴木智之)
GKを使って数的優位を作り、ボールを失わないことを意識する
後編最初のトレーニングは「3対3+GK」。GKをつけるが、目的はシュートではなく、パスをつないでGKに届けること。いわゆる「ボール保持(ポゼッション)」のトレーニングだ。
この練習のポイントは「GKがドリブルで相手を引きつけて、数的優位を生かし、ボールを前進させていくこと」。ボールを保持しているGKは、相手のプレスが来ない場合はドリブルで進み、守備の選手を食いつかせ、パスコースができたところでフリーの味方にパスをつける。
フィールドプレーヤーはGKからのパスを受けられるポジションに素早く入り、プレーしやすい体の向きを作ることもポイントだ。
トレーニングの目的が反対側のGKにパスを届け、ボール保持を継続することなので、優先すべきは縦パスになる。しかし相手の立ち位置などから、縦のコースがない場合は、サイドへのパスやバックパスを使い、相手を動かしてパスコースを作っていく。
瀬戸口コーチからは、ボールを受けた選手に「トラップのときにボールを動かそう。そうしないと詰まるよ」とアドバイスが送られていた。
さらには「フリーでボールを受けるときは、前を向いてオープンの位置にボールを止めること」と指示。これは、前編でもコーチングした部分だ。
さらには「自分たちのゴール前という意識を持とう。チャレンジの要素が大きすぎると、取られたら失点するよ」「GKを入れたら5対3。確実にボールを届けよう」など、ボールを失わないことを重点的にコーチングしていた。
ピッチのどこで数的優位ができているかを確認する
トレーニング2つ目は「5対5+フリーマン+GK」。先程のトレーニングから人数を増やし、フリーマンを追加する。それにより、実践に近い形で行うことができる。
このトレーニングの目的は、GKにパスを渡すことではなく、ゴールを奪うこと。ビルドアップから、どのようにフィニッシュ(シュート)につなげていくかを、スペースが制限され、高い強度の中でトレーニングしていく。
瀬戸口コーチはゴールキックの場面で「GKを使って、どうやって前にいる味方に届けるか。やってみよう」と話すとともに、GKが自陣のサイドにいる選手にパスを出し、そこで1対1の状況が生まれた場面でプレーをストップ。
「なぜそこにパスを出したのか」「どこにパスコースがあるのか」「ピッチのどこで数的優位ができているかを、GKが見て判断するように」「ただパスを出すのではなく、相手や味方を見よう」とコーチングしていった。
GKや最終ラインからのビルドアップで優先すべきは、「相手にボールを奪われないこと」。ゴール前でボールを奪われると、途端にピンチになる。そのため、自陣ではフリーの味方、もしくは数的優位の状況にいる選手にパスを出し、ボールを保持しながら、相手を動かしていく。
さらには無理に縦パスを入れず、バックパスなどを使い、主導権を握ってボールを展開していきたい。そこで自陣から中盤、ゴール前へとボールが進むに従って、積極的なプレー、チャレンジするプレーに切り替えていく。
ソレッソ鹿児島の選手たちのプレーが、瀬戸口コーチの声掛けでどう変わっていくかは、ぜひ動画でご覧いただければと思う。
トレーニング後、瀬戸口コーチは次のように振り返った。
「後編では、人数を増やし、実践に近い形で行いました。自陣からのビルドアップはミスが出やすく、失点に直結するデメリットはありますが、相手を見る、しっかりとボールを扱うなどを積み重ね、長い目で見て行うトレーニングだと思います。今回紹介したトレーニングは、中学、高校に向けて大事な部分だと思うので、日々の活動の参考にしてみてください」
最終ラインからのビルドアップは、中学、高校とカテゴリーが上がるにあたり、重要な要素になる。そのベースをジュニア年代で身につけることができれば、成長する上でのアドバンテージになるだろう。
最初のうちは上手くいかないことも多いかもしれないが、ぜひ忍耐強く続け、子どもたちの成長につなげていただければと思う。
【講師】瀬戸口大翼/
大阪東淀川FCで指導者を始める。
その後は、地元の鹿児島に戻り、現在はソレッソ鹿児島U-12でコーチを務めている。
取材・文 鈴木智之