TOP > コラム > 運ぶ・突破するドリブルの使い分け! 子供にレベル差があっても直ぐに実践できるドリブルスキルを磨く練習法

運ぶ・突破するドリブルの使い分け! 子供にレベル差があっても直ぐに実践できるドリブルスキルを磨く練習法

サッカー指導者のためのオンラインセミナー『COACH UNITED ACADEMY』では、U-8やU-10など、サッカーと出会ったばかりの子どもを指導する際の参考になるトレーニング動画を多数配信中だ。

指導経験の少ないコーチ向けの動画を配信する中で、「動画に出てくる選手が上手なので、自分のチームでトライするときに、うまくいかない」「チーム内の選手にレベルの差があるので、動画で見たトレーニングをどのように導入すればいいかがわからない」という悩みが寄せられた。

そこで、エルマルカサッカースクール代表の山本雅史氏に「レベル差がある選手たちの中で、ドリブルスキルを磨く練習法」を実施してもらった。サッカーを始めたばかりの子に「何をどのように伝えればいいのか?」を理解したい人は、ぜひ動画を参考してほしい。(文・鈴木智之)

この内容を動画で詳しく見る

yamamoto_000.png

<< 前回の記事を読む 

状況を観て、運ぶ・突破するドリブルを選択する

テーマは「運ぶドリブルと突破するドリブルの使い分け」。山本コーチは次のように話し、トレーニングに入っていった。

yamamoto_001.png

「このトレーニングには、自分とボール、味方、相手の要素が入ってきます。味方がどこにボールを運んでいるのか、相手の体の向きはどうなのかを見ながら、突破するドリブル、運ぶドリブルを使い分けて、ボールを持つことが重要になります」

実施するトレーニングは「トライゲーム」。文字通り、突破にチャレンジすることが狙いだ。設定としては、四角形のグリッドの中にオニが1人、ドリブル役が2人入る。ドリブル役はそれぞれ別の辺からスタートし、鬼を突破して反対側の辺に到達したら1点となる。

映画 & テレビ 2022_07_18 23_13_42.png

グリッド内でオニの動きを見て、スタートした辺に戻ることや、左右にある別の辺に進んでもOKだ。オニは攻撃側のボールを足で踏むことで、攻撃側の点数をリセットすることができる。

山本コーチは子どもたちのプレーを見た後、「1人がDFを引き付けている間に、もう1人が突破することをしてみよう」「オニに対して、1人が前、1人が後ろの関係性だと、後ろの選手は突破しやすい」「味方と相手を見ることが大事。守備の背中をとろう」などのアドバイスをしていく。

yamamoto_002.png

さらには「仕掛ける勇気を持とう。3点(ハットトリック)を狙おうと」声をかけ、チャレンジをうながしていった。

発展形として、「ドリブル役は、スタート地点の辺に戻ることができない」を追加。縦に勝負するか、横に逃げるしかないので、「突破できると思ったら行く」という決断も大切になる。

有効にドリブルテクニックを使い、ボールを運ぶ、突破する

yamamoto_003.png

2つ目のトレーニング。テーマは「相手との距離感と仕掛けるタイミング」。

山本コーチは次のように説明する。

「このトレーニングでは、自分、ボール、味方、相手に加えてスペースの概念が入ってきます。相手との距離感や、どこにボールを運ぶかによって、ボールを失ってしまったり、シンプルに相手を抜けることもあります。そこを経験させながらトレーニングしていきます」

ここで行うのは「進入ゲーム」。選手が向かい合った状態で1対1を開始し、2つのゴールにいる選手のどちらかにパスをする。基本的には逆サイドの人にパスをするのだが、ドリブルで真ん中のラインを超えたら、前方と後方のどちらにパスをしてもOKというルールだ。

yamamoto_004.png

子どもたちのプレーを観察していると、ドリブルはうまくできているのだが、パスが味方につながらない場面が頻出する。そこで山本コーチは「ドリブルをしながら、どういうパスをしたらいいかを考えよう」とデモンストレーションを交えて説明していく。

続いては、グリッド内で1対1を2組で同時に行う。ここでのポイントは「周りを観て、確認すること」。山本コーチは「相手との距離感を観て、いつフェイントを仕掛けるのか。そこを考えよう」と、判断に言及していった。

トレーニングメニューもさることながら、山本コーチの言葉選びや、子どもたちにチャレンジをうながす声掛け、雰囲気づくりも参考になる。

最後に山本コーチは、次のように話し、トレーニングを締めくくった。

「低学年や初心者の場合、まずはボールに慣れること。ボールを自分の意志で扱えなければ、サッカーを楽しむことができません。思ったところにボールを運ぶ、ボールを持ちながら情報を入れる、フェイントをして相手を騙す(1対1を楽しむ)。この3つを繰り返し行い、自分とボールの関係が安定したら、味方や相手を意識したオフザボールの動き、スペースやゴールと本質へつなげることが上達のポイントです」

yamamoto_005.png

さらに、こう続ける。

「また、子どもたちにどう伝えていくかも大切になります。指導の中で『何度言ったらわかるんだ!』『教えたばかりだろ!』というフレーズが出るのは、伝え方に問題があるからです。言葉で伝える、動きを見せる、体に触れて、体感させるなど、色々なやり方を取り入れて、トレーニングの参考にしてみてください」

低学年やサッカーを始めた子どもたちに、どのようなドリブル練習で技術、認知、判断を身につけさせればいいのか。その解決策が、この動画に含まれている。ぜひ参考にしていただければと思う。

<< 前回の記事を読む 

この内容を動画で詳しく見る

【講師】山本雅史/
埼玉スタジアム2002サッカースクールで長年指導し、専門学校講師やスポーツ幼児園コンサルタントなどを経験。各年代の監督・ヘッドコーチを歴任し、
現在は、///自己肯定感を高める///をコンセプトとした【エルマルカサッカースクール】の代表として活動している。
→2022年度U-16サッカー 日本代表2名輩出
また(一社)日本凸凹支援スポーツ協会の代表理事として、発達障がい児たちにサッカー教室を通じてスポーツ療育『ジャッジをしない個育て』を行っている。