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千葉県2位のバディーSC千葉が実践。バイタルエリアでボールを失わないポゼッショントレーニング

ボールを保持する、ポゼッションスタイルを志向するバディーSC千葉。同じ傘下のバディー横浜とは異なり、バディー千葉はホームグラウンドでもある、さざれ幼稚園の卒園生を中心に構成されている。

限られた戦力、環境ながら、大宮アルディージャでGKを務める志村滉やジェフユナイテッド市原・千葉のルーキー・佐久間太一といったプロ選手を輩出。2021年の「全日本U-12サッカー選手権大会(千葉)」では決勝まで進み、全国大会出場まであと一歩に迫った。

今回はクラブが大切にする「ボールポゼッション」を、どのようなトレーニングで身につけていくのかを、統括責任者を務める小峯力コーチに実演してもらった。認知・判断・技術、周囲との連携を高めるトレーニングは必見だ。(文・鈴木智之)

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味方がプレーするためのスペースを作る一つが「キャンセルの動き」

「バイタルエリアでボールを失わないポゼッショントレーニング」。前編のテーマは「ボールの保持に必要な、相手の動かし方とスペースの作り方」。

小峯コーチは「バディーSC千葉では、ボールを保持することをプレーモデルに、チーム、個人でビルドアップしてボールを前進させることを育成方針としています」とコンセプトを説明する。

最初のトレーニングは「3対1」。10m四方のグリッドをマーカーで区切り、4つのエリアを設置。

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「4つの部屋に対して、選手は3人。そのままだとパスラインがつながらないので、選手がスライドしながらポゼッションをしよう。空いているコートに進入するのが目的なので、相手を動かして、空いたスペースにドリブルで進入していこう」

ここでは、「体の向きはボール方向ではなく、空いているコートの方向に」などのコーチングを実施。続いて、コーンにボールを当てたら1点というルールを加える。

試合中よくあるのが、味方を助けるために近寄ることで、味方がプレーするスペースを消してしまうこと。そこでサポートを止めるのが「キャンセルの動き」(小峯コーチ)だ。

その判断を高めるために「1つのグリッドに、2人が入ってはいけない」というルールを追加。味方がドリブルで進入しようとする際に、同じグリッドに入らないことや、ドリブルで進入できるタイミングがあれば、ボールを持っていない選手が「行け」などのコーチングをすることも重要になる。

続いて「4つの部屋にボールが循環したら1点」というルールに変更。小峯コーチは「相手をどう動かせば、誘うことができるか。相手が来たときはやばいではなくチャンスだよ」と声をかけていった。

ドリブルを取り入れれば、次の受け手のプレー時間を確保できる

2つ目のトレーニングは「7対2~3対2」。20m四方のグリッドで、7対2のボールポゼッションを行う。「ボールを失った選手は守備者と手をつなぐ」というルールのため、ボールロストのたびに、攻撃の選手が減っていく。

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小峯コーチは「攻撃は幅をとるか、守備者の間を通す狙いを持って、その作業を繰り返そう」と話し、選手たちからは「間!」とDFの間を狙うような声が飛んでいた。

また「攻撃の人数が減ってきた時に、パスラインのどこで入り口を使うのか」と話し、どの選手が優位な状況にあり、パスが出しやすいかを常に確認することの重要性を伝えていった。

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さらに強調したのが、味方のプレー時間を減らさないこと。

「ポゼッションをするときに、忘れてはいけないのがドリブル。ただボールを動かすのではなく、ドリブルを意識して、受け手の時間を作ろう。ドリブルをすれば、次の受け手の(プレーする)時間は減らなよ」

前編最後のトレーニングは「4対3+1」。手前のグリッドで4対3をして守備を突破し、奥のグリッドへドリブルで進入し、スタンバイしている選手にパスを通す。グリッド内は常に4対3の状況になり、奥から手前へとボールを動かしていく。

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「必ず1人がフリーになっているので、それをチーム全体で狙っていこう。自分ひとりでプレーするのではなく、味方のためにポジションをとったり、スペースを作ることを考えてやってみよう」

数的優位を活かし、連動してボールを動かすことが、ボールポゼッションに必要な要素である。それを各トレーニングの中で、段階を経て取り組み、難易度を上げながら実戦に近づけていく。非常に参考になるトレーニングだ。

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小峯コーチはトレーニング終了後、次のように話した。

「前編では、ボール保持に必要な、相手の動かし方とスペースの作り方のトレーニングを行いました。育成年代の技術、知識ではポゼッション=パスとなりがちです。ドリブルを前進のアクションとすることで、楽しさとスキルアップにつながります」

後編では、「自陣のバイタルエリアで数的優位を作り出すトレーニング」を紹介したい。

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【講師】小峯力/
大学卒業後に都内私立高校にて指導者としてのキャリアをスタート。同校にてインターハイという場をコーチの立場で経験し、大学研究室にて指導者としての経験を積み、バディースポーツクラブに入社。その後2000年に「バディーSC(神奈川県)」の兄弟チーム「バディーSC千葉」を立ち上げ現在に至る。
バディーSC千葉では22年、平行して千葉市U-11・U-12トレセンスタッフに携わり、現在はバディーSC千葉 統括責任者とU-12の監督を務めている。 現在までにバディーSC千葉の卒業生で3名のJリーガーを輩出している。