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ボールを奪う場所を定めるポイントは3つ。ジェフ千葉U-12が実践するグループで連動する守備のトレーニング

2021年度の「全日本U-12サッカー選手権大会」で、攻守に高い完成度を誇った、ジェフユナイテッド市原・千葉U-12。大会はベスト8で敗退してしまったが、前線からの組織的なプレス、最終ラインからのビルドアップは高いクオリティを見せていた。

そこで今回は、U-12の茂垣将太監督に「前線から連動して、ボールの奪い所を定める守備のトレーニング」を実践してもらった。個の能力だけに頼るのではなく、グループとしてどのようにボールを奪うのか? をテーマに「ジュニア年代で身につけておきたい、守備の個人戦術」を指導したい方は、ぜひ参考にしてほしい。(文・鈴木智之)

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プレスをかける時は「相手に寄せながら、どこに誘導するかを考える」

トレーニング開始前、茂垣監督は「ジェフユナイテッド市原・千葉U-12では、前線からアグレッシブにボールを奪いに行くスタイルを目指しており、どのようにプレスをかけるのか、味方とどう連携してボールを奪うのかといったことを大切に指導しています」と話し、強い雨が降る中、グラウンドに駆け出していった。

前線から連動してボールの奪いどころを定めるトレーニング。ポイントは3つある。それが次の項目だ。

・ファーストディフェンダーのプレス
・相手ボール保持者の状況を把握してポジションを変えること
・味方の動きに合わせて連動すること

トレーニングの中で、これらを重点的にコーチングしていく。最初のトレーニングは「1対1のライン突破」。

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12m×12mのグリッド内で1対1をし、相手の背後にある2つのゴールのどちらかをドリブルで通過したら勝ちとなる。

今回の動画で実施する3つのトレーニングに共通する設定が「コーチの配球により、プレーがスタートする」こと。茂垣監督は「守備側は、ボールの移動中にできるだけ寄せよう」とアドバイスを送っていく。

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さらには守備の選手に対し、「ゴールは右と左にある。相手をどっちに追い込めばいい?」と質問。選手たちの「利き足ではない方」「相手の不得意な方」といった意見にうなずくと「相手に寄せながら、どこに誘導するかを考えよう」「タッチラインとの位置関係を見て、狭い方に追い込むのも大事だよ」と考え方を整理していく。

セカンドDFはファーストDFの動きを見てポジショニングを変える

2つ目のトレーニングは「2対3(1対1+1対2)」。グリッドを2つに分け、手前のグリッドから1対1がスタートする。攻撃側は奥のグリッドにいる2人のうち、どちらかの選手にパスを通す。奥のグリッドは2つに分けられており、攻撃の選手はそれぞれ1人しか入ることができない。

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守備の選手は、攻撃側の選手どちらかにボールが入るのを見計らって奪いに行く。攻撃側の反対にいる選手はサポートできないルールなので、どちらかのグリッドで攻撃側と守備側の1対1が行われる。

ただし、手前のグリッドにいる選手にパスを戻すのはOKなので、一度ボールを戻すことで、その選手から、奥のグリッドの反対側にいる選手へとボールをつなぐことができる。(手前のエリアから奥へのパスは縦パスのみで斜めのパスはなし)

攻撃側は3つあるうちのゴールいずれかを目指す。中央はミニゴール(パスで得点)、サイドはドリブル通過で得点。守備側がボールを奪った場合は、攻撃側の背後にあるラインをドリブルで通過すれば勝ちとなる。

茂垣監督は「ファーストディフェンダーは何を考えればいい?」と問いかけ、1つ目のトレーニングで行った「ボールの移動中にプレスをかける」ことに意識を向けさせていく。

さらには奥側の守備の選手と手前の守備の選手が声を出し合い、意思疎通してプレスをかけるようにうながしていく。

ここで重視したのが、ファーストディフェンダーの状況を見て、セカンドディフェンダーはどこにポジションをとればいいかを考えること。

茂垣監督は「ファーストディフェンダーは、パスコースを切りながら寄せよう。そこでボールを奪えればOKだし、取れなくても、セカンドディフェンダーが取りやすいように寄せていこう」とコーチング。

ほかにも「ボール保持者の状況を見て、ポジションを変えよう」「良いアプローチをしたから、相手がパスミスしたね」などの声をかけていった。

自分だけで奪えなくてもよい。後ろの選手を使うことも選択肢に入れる

前編最後のトレーニングは「3対4(1対2+2対2)」。手前のエリアを12m×12m、奥のエリアを12m×16mで設定し、手前で守備1対攻撃2、奥のエリアで2対2を行う。

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手前と奥のエリアを区切るラインは「パスのみで通過」というルールはこれまでと同じだが、中央のラインをボールが越えたときに、攻撃、守備ともに手前エリアの選手1人は奥のエリアに移動して、プレーに参加することができる。

攻撃側のゴール設定はこれまでと同じ。守備側はライン突破ではなく、中央のゴールにシュートを目指す。

ここでも、ファーストディフェンダーがプレスをかけ、セカンドディフェンダーはボール保持者の状況を見て、ポジションを変えることに意識を向けさせていく。

またセカンドディフェンダーは、ボール保持者に対して味方がどの位置、角度で寄せているかを見て、次のボールの動きを予測してポジションをとることがポイントになる。

茂垣監督は「(ボール保持者を)追い込むことを考えよう。自分ひとりで奪わなくいてもいいよ。後ろの選手に取らせることを考えよう。3人で協力してボールを奪うことが大事」と声をかけて、連動してボールを奪うことの重要性を伝えていった。

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以上で前編のトレーニングは終了。ジェフの選手たちの技術レベルは高く、彼らのプレーを見るだけでも大きな学びになるだろう。

茂垣監督が伝えているのは、選手の質を問わず必要な、サッカーの原則の部分なので、自チームに落とし込むときは、そこに注目しながら見てもらえたらと思う。

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【講師】茂垣将太/
千葉県市川市にあるフッチサッカークラブで指導者としてのキャリアをスタート。
その後は、柏レイソルU-12コーチ、U-15コーチを務めた。
ジェフユナイテッド市原・千葉に移ってからは、スクールコーチ、アカデミースカウト、ダイレクター補佐、U-13コーチ、U-10、U-11監督を経て現在は、U-12の監督を務めている。