TOP > コラム > 東北地区の強豪クラブが実践。ドリブルとパスを使い分けるボールの置き所を習得するパス回しのトレーニング

東北地区の強豪クラブが実践。ドリブルとパスを使い分けるボールの置き所を習得するパス回しのトレーニング

福島県代表として、「全日本U-12サッカー選手権大会」に2度出場し、昨年度は決勝トーナメント進出に後一歩まで迫った、バンディッツいわきジュニア。

今夏に行われた、東北の強豪が集まる「東北地区サッカースポーツ少年団交流大会」で2年連続優勝を果たすなど、存在感を発揮するクラブだ。

バンディッツいわきはボールを支配し、積極的にゴールを狙うスタイルを目指している。その中で大切にしているのが、「ドリブルとパスの選択肢を持つためのボールの置き所」だという。

ジュニア年代で身につけておきたいこの技術を、ジュニアの荒川謙一監督に実施してもらった。正確な技術の発揮に欠かすことのできない「ボールの置所」を、どのようなトレーニングで身につけさせていくのだろうか?(文・鈴木智之)

この内容を動画で詳しく見る

arakawa01_01.png

次回の記事を読む >>

パスを受ける時は、「遠い方の足」でボールを止める

トレーニングのテーマは「ドリブルとパスを正確に使い分けるためのボールの置き所」。前編では「ボールの持ち方を習得する、パス回しのトレーニング」を行う。

トップチーム(社会人)の監督を務めた荒川氏は、強豪クラブとの対戦を経験して、「正確にボールを置くことの重要性」を感じたと言う。

「このトレーニングでは、ボールの持ち方と相手のプレッシャーをかわすことを意識してコーチングしていきます」と話し、「4対1」のトレーニングに入っていった。

設定としては、縦横4.5メートルのグリッドで、4対1のボールポゼッションを行う。攻撃はグリッドのライン上を動いてボールを回し、パスを15本つなぐか、守備側の股にボールを通すことを目指す。

arakawa01_02.png

荒川監督は「ボールの持ち方を意識してやろう」「なるべく少ないタッチで速く」などの声をかけながら、選手たちのプレーを見守っていく。

そして「左右どちらにもパスを出せる位置にボールを置くこと」を指導。そうすることで、守備側にパスコースを読まれなくなることや、インターセプトされにくくなるメリットがある。

また「何が良いからボールが回っている?」と、選手たちに質問をし、「大事なのは、遠い足でボールを止めることと、相手のプレッシャーを受けないようにフェイントを入れること」とアドバイス。「そこを意識してやっていたから、ボールがうまく回っていたよね」と、うまくプレーできた理由を説明していた。

arakawa01_03.png

ボール保持のトレーニングでよくあるのが、サポートに行く気持ちが強くなるあまり、状況を判断せずに、味方に近寄ってしまうこと。すると、選手間の距離が狭くなり、DFは人とボールを同時に見ることができるので、奪われやすくなってしまう。

そこで荒川監督は「攻撃側はDFと同じラインに立つことで、ボールが動きやすくなる」とアドバイスを送っていた。

近くしか見えていない選手は、いいプレー選択ができない

2つ目のトレーニングは「3対1+3対1」。コーンを三角形×2セット配置し、ボールを2つ使って実施。攻撃側も守備側も、どこの位置のボールに関わっても良いというルールだ。

arakawa01_04.png

荒川監督は次のように説明し、トレーニングに入っていった。

「6対2だけど、3対1のボール回しのイメージでやろう。積極的にボールを要求し、どこへでもパスを出せる位置にボールを置くことを心がけよう。マーカーは目安なので、ボールを呼び込む、バックステップを踏む、横にずれる動きを使うこと。その場に留まってているとインターセプトされやすいので、積極的に動こう」

さらには、選手たちのプレーを見ながら、ワンタッチで横の選手に落とし、守備2人の間を通すパスを狙うこと。もしそのコースが塞がれていたら、横にパスを出してやり直すプレーなど、具体的なアイデアを提示していった。

「近くしか見えていない選手は、いいプレーを選択することができないよ。実際の試合と同じように、遠いところの選手を狙おう。チャンスがあったら、すぐに前に入れるイメージを持とう」

顔が上がっていると、遠くが見える。それにより、どこにパスを出せば良いかが判断しやすくなる。荒川監督のアドバイスとともに、良いプレーが出始めていく。

3つ目のトレーニングは「4対2」。4つの隣り合うグリッドに攻撃の選手を配置し、4対2のボールポゼッションを行う。

arakawa01_05.png

ここでは「いままでやってきた練習を活かして、ボールの持ち方や置所、積極的にボールをもらいに行くこと、ギャップを狙うことを考えて、ボールを回そう」と意識付けを行っていた。

また、プレーを途中で止めて、選手4人が四角形の位置に立つと、ボールが動きづらいことを指摘。守備側にギャップを作るために、どこに立てばいいかをレクチャーすることで、狙いを持ったプレーをするように導いていく。

arakawa01_06.png

以上で前編のトレーニングは終了。

荒川監督は「このトレーニングでは、ボールの持ち方と、相手のプレッシャーをかわすことが重要になります。また、関わることも大事になるので、そこもコーチングすると良いと思います」とアドバイスをくれた。

動画を通じて、デモンストレーションを交えて、わかりやすくコーチングしているので、ぜひ全容を映像で確認してほしい。後編では「動きながら、ボールの置所を身につけるトレーニング」を行っていく。

次回の記事を読む >>

この内容を動画で詳しく見る

▼▼COACH UNITED ACADEMY 会員の方のログインはこちら▼▼

【講師】荒川謙一/
福島県立平工業高等学校で指導者としてのキャリアをスタート。
その後は、バンディッツいわきのトップチームの監督を務め、現在はバンディッツいわきU-12の監督を務める。JFA公認C級ジェネラルライセンス所持。