10.17.2022
相手のプレスを外すボールを置く位置の習得。パスを受けてから前を向いて次の選択肢を増やすトレーニング
東北の強豪クラブとして、存在感を放つバンディッツいわきジュニア。トップチーム(社会人)の監督を務めた経験を持つ荒川謙一監督。チームは2度「全日本U-12サッカー選手権大会」に出場するなど、着実に力をつけている。
チームとして大切にするのが「ドリブルとパスを正確に使い分けるためのボールの置き所」だ。それらを高めるためのトレーニング、後編では「動きながらボールの置き所を身に付けるトレーニング」をテーマに、試合形式で実践していく。(文・鈴木智之)
相手から遠い足でボールを止め、同時に前を向くことを意識する
後編最初のトレーニングは「ボールを置く位置を意識する1対1」。ゴール前の設定で、味方からパスを受けた状態で、1対1の状況を打開し、ゴールを狙う。
荒川監督は「(動画前編では)パスのトレーニングをしたけど、試合ではドリブルを仕掛けることも大事になる。ボールの置く位置を意識しながらやろう」と話し、トレーニングに入っていった。
設定としては、攻撃の選手が相手陣内に入り、マーカーを越えたら、パス役からの配球を受けて1対1がスタートする。攻撃側は守備側をドリブルで抜き、ゴールを目指す。守備側はボール奪取を狙う。
攻撃側のポイントは、守備側と駆け引きをしながら、優位な体の向きを作ってボールを呼び込むこと。さらには、相手のプレッシャーがなければボールを受けて前を向き、左右どちらにも行ける位置にボールを置くことが重要だ。
ボールを受ける前に、攻撃側は守備側の背後を狙うアクションを起こすことで、守備側の視野から消えることができる。マークすべき相手を見失うので、パスを出す選手は、その瞬間を見逃さずにパスを出すこともポイントだ。
荒川監督はパス役に、「受け手の状況をよく観て、質の高いボールを出そう」と要求。受け手の良いプレーに対しては「ボールが来たときに、相手から遠い足で止め、前を向いたから相手を外すことができた。前を向くと、相手のプレッシャーを外せるよ」と説明していた。
続いては、パス出し役がサポートに入り、2対1の状況で実施。リターンパスを受けたパス出し役は、ダイレクト(ワンタッチ)のみOKというルールだ。
動画では、良い体の向き、ボールの置所からワンツーでDFを攻略する場面が収録されているので、確認してほしい。
ボールを受けた選手が前に運ぶことで、高い位置で数的優位を作れる
2つ目のトレーニングは「2対2+2サーバー」。20m×15mのグリッドで、サーバーからサーバーへボールを動かすことを目指す。
荒川監督は「ボールの置所を意識して、プレーの選択肢を増やそう。味方が関わることが大事」と話すとともに、突破ができない場面でフリーズし「相手にとって、どんなプレーが怖い?」と質問。
「高い位置、低い位置と選手が分かれることで、サーバーを使った2対1ができる」と説明し、ボールを受けた選手が前に運ぶことで、高い位置でも2対1ができることから「ディフェンスラインを下げるイメージでポジションをとろう。相手の背後なのか、味方に近づいてボールを受けるのか。その選択が大事」とアドバイスしていく。
ほかにもボールを受ける位置、止め方なども指導しているので、映像で確認してほしい。
最後のトレーニングは「3対3+2GK」。40m×20mのグリッドで実施し、これまでトレーニングしてきた、ボールの置所、持ち方、周囲を見ること、ボールを受けたら前を向くこと、周囲の関わりを活かしてゴールを目指す。
荒川監督は「守備のギャップを狙う、作り出すためにはどうすればいいかを意識してトレーニングしよう」と声をかけてスタート。
これまでのトレーニングの成果が出て、サイドで2対1を作って突破することや、ギャップにスルーパスを通して、フィニッシュに持ち込む形が出てくる。
荒川監督は「ナイス」「グッド」と褒めるとともに、ボールを受ける選手の体の向きに言及。「ボールを受けるときに、後ろ向き(※目指すべきゴールに背を向けた状態)だと、DFはプレッシャーをかけやすい」とプレーを止めてアドバイスしていた。
また、最前線にいる選手がむやみに下がることで、スペースがなくなってしまうことも指摘し、ポジショニングで幅と深さを作り、味方のためにプレーするスペースを空ける、マークするDFを釣り出す動きの重要性を伝えていった。
最後に荒川監督は次のように話し、トレーニングを締めくくった。
「今回紹介したトレーニングには、ボールの持ち方と相手のプレッシャーをうまくかわす狙いがあります。数的優位を作ることや前を向くこと、状況の良い選手を使うことで、ボール支配と積極的にゴールを狙うサッカーへと変化していくことができます」
動画には、トレーニングを経るごとに、選手たちのプレーが向上していく様子が収録されているので、荒川監督のコーチングと合わせて、どのような指導で導いていくのかを参考にしていただければと思う。
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【講師】荒川謙一/
福島県立平工業高等学校で指導者としてのキャリアをスタート。
その後は、バンディッツいわきのトップチームの監督を務め、現在はバンディッツいわきU-12の監督を務める。JFA公認C級ライセンス所持。
取材・文 鈴木智之