11.07.2022
半身の状態でボールを受けると次の動作に移りやすい。攻守の切り替えを早くしてゴールへ向かうトレーニング
2年連続で「全日本U-12サッカー選手権大会」に出場しているフォルツァ松本FC(長野県)。同クラブは個で局面を打開し、マイボールの時間を長くすることや、攻守の切り替えの早さを重視してトレーニングを実施している。
前回より、U-12でコーチを務める新村大介氏による「素早い攻守の切り替えからフィニッシュに持ち込む練習法」を紹介中。後編では「複数対複数の状況で、切り替えのスピードを高めるトレーニング」を実施してもらった。土のコートでも高い技術を繰り広げる、選手たちのトレーニングは必見だ。(文・鈴木智之)
攻守の切り替えが連続して起こるルール設定を行う
後編最初のトレーニングは「1対1→2対1①」。30m×15mのグリッド内で、中央から守備の選手が攻撃の選手にパスを出して、1対1がスタートする。
攻撃の選手がシュートを打つか、ボールがグリッドの外に出たら、次の攻撃の選手がドリブルで入り、最初にシュートを打つ、もしくは外した選手がDFになり、2対1を行う。
新村コーチは選手たちのプレーを見た後、「パスを受ける選手は、ゴールから遠い位置ではなく、なるべくゴールに近い位置でボールを受けよう。そうすることで、守備側が間に合わなくなる。スペースを見つけて運んでいくことで、シュートを打てるようになる」とアドバイスを送っていく。
さらに、パスを選択しがちの選手に対し、「頭の中がパスばかりだと、守備側は怖くない。目的はゴールなのだから、シュートを打つと見せかけて、パスを出すならいいけど、パスばかりにならないようにしよう」と、ゴールを見据えてプレーを選択することの重要性を説いていく。
続いては「1対1→2対1②」。1つ目のトレーニングでは、守備側がボールを奪ったら、シュートもしくはボールアウトで終了だったが、ここではプレーが続き、シュートを外した選手がまた守備側になり、2対1を継続する。
攻守の切り替えが連続して起こるシチュエーションを作ることで、シュートを打った後、すぐに守備へ移行することに意識を向けさせていく。
ここでも、突破に意識を向けるようにコーチングしていった。
「パスを出すタイミングでしか、ボールを運んでいないよね。突破は頭にあった? 突破の意識を持って、相手を外してパスをするのもあり。パスだけでなく、突破のイメージを持ってやろう」
体の向きを作ることは、攻守の切り替えを素早く行うために重要な要素
2つ目のトレーニングは「2対2→3対2」。グリッドの設定は同じで、中央からパスを出して2対2がスタート。シュート(ボールアウト)したら、次の選手がドリブルで入って攻撃側となり、3対2を行う。
ここでは、スタンバイしている選手は状況を見て、素早くプレーに加わることや、ファーストディフェンダーが誰になるのかを、コミュニケーションをとって連動するように声をかけていた。
「試合中、無言でやっていたら変な風になるよね。GKもフィールドプレーヤーの一人だと思ってコーチングしよう」
また、自陣ゴールにおへそを向けた状態でボールを受けた選手に対して、半身になって受けることをレクチャー。体の向きを作ることは、攻守の切り替えを素早く行うために、重要なポイントだ。
さらにはドリブルをする選手に対して、味方はどこへ動けば効果的かをデモンストレーション。
ドリブルする選手の進行方向に進んでしまった選手に対し、「ボール保持者の背後のスペースに動くことで、味方のドリブルを助けるとともに、ボールを受けやすくなる」とアドバイスをするとともに、「ドリブルの方向や動きを見て、自分の動きを変えて、ゴールを目指そう」とわかりやすく伝えているので、動画で確認してほしい。
強度が高く、テンポの良いトレーニングは以上で終了。
新村コーチは練習後「このトレーニングでは、攻守の切り替えの速さを意識づけすることができます。また、数的同数、数的優位の状況で、フィニッシュに持ち込むための、ゴール前での駆け引きが上達すると思います。ぜひ参考にしてみてください」と話して締めくくった。
攻守の切り替えを早くし、素早くゴールへ向かいたいチームにとって、参考になるトレーニングになっているので、ぜひ動画を見て、日々の練習に取り入れていただければと思う。
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【講師】新村大介/
2017年からフォルツァ松本で指導者としての活動をスタート。
キッズ、U-7、U-8で指導経験を積み、現在はU-12でコーチを務める。
2020年、2021年には長野県代表としてチームの2年連続での「全日本U-12サッカー選手権大会」出場に貢献した。
取材・文 鈴木智之