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身長を伸ばすために必要な要素は4つ。育成年代からプレーを向上させるための栄養の重要性と食事のポイント

開催中の「FIFAワールドカップカタール2022」を見ても、選手の高身長化が著しい。日本代表選手も、一部のアタッカーを除き、180cm近い選手がたくさんいる。また、海外のクラブへ移籍するときにも、身長は見逃せない要素になってきており、育成年代で身長・体重といったサイズをどのように獲得するかは、日本サッカー界の大きなテーマになっている。

サッカーをするお子さんをお持ちの保護者の方にとっても、子どもの身長についての悩みや疑問は後を絶たない。そこで今回は、神奈川県の名門・東急SレイエスFCでコーチをしながら、管理栄養士の資格を活かし、育成年代の栄養指導にあたる木下洸太朗氏に「フットボールのプレーを向上させる栄養の考え方」をレクチャーしてもらった。

より良い選手になるため、より良いプレーをするために必要な「栄養と睡眠」の知識を得て、さらなる成長に役立ててほしい。(文・鈴木智之)

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身長を伸ばすために必要なのが「睡眠」「運動」「精神状態」「栄養」

動画前編のテーマは「フットボールと栄養、身長と栄養」。講義のトピックは身体と栄養、メンタルと栄養、学習と栄養、エネルギーと栄養の4つが設けられている。

前提として知っておきたいのが、人間の身体を作る「5大栄養素」について。炭水化物、脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラルのことで、木下氏は「これらは相互に作用しあっています」と言う。

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「5大栄養素は相互に作用しあっているので、なにか一つが足りないと、他の栄養を十分に吸収できなくなります。桶で例えることが多いのですが、どこか一部分が欠けていると、そこまでしか水は入りません。栄養も同じで、どれかが欠けていると、体内で十分に使い切れなくなってしまうのです」

「栄養バランスのとれた食事が大事」という言葉があるが、それは上記のような理由からなのだ。栄養素の吸収を高めるためにも、バランスはぜひ意識したい。

また、栄養というのは食事を整えることだけに注意しがちだが、食事を摂って体内で消化と吸収ができて初めて栄養となる。つまり、100点の食事を用意しても50点分しか消化・吸収できなければ、70点の食事で70点分のきちんと消化吸収ができる方が体内では栄養となるので、「消化力」というのも気にしたいポイントだと木下氏は話す。

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講義では、気になる「背が伸びる理由」についても説明。木下氏は「身長に関して、遺伝要素は30%ほどと言われています」と前置きし、こう続ける。「身長を伸ばすために必要なのが睡眠、運動、精神状態、そして栄養です」。

育成年代の選手は大人が思っているよりも忙しい。サッカーの練習、学校、習い事などでスケジュールが詰まっており、睡眠時間が少ないという声も聞く。しかし、「寝る子は育つ」という言葉があるように、身長を伸ばすためには質の高い睡眠が不可欠で、それには栄養も大きな関わりがあるという。

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「睡眠の質を高めるポイントはメラトニンというホルモンです。眠りのホルモンと言われるメラトニンは、バナナや卵、大豆、乳製品、肉、魚から作られると言われています。メラトニンの元になるアミノ酸のトリプトファンがセロトニンになり、メラトニンになる過程で、鉄やビタミンB群、マグネシウムが必要です。このことから、睡眠の質を高めるためにも、栄養は重要なことが理解できると思います」

パンよりもお米を主食として食べた方が体は成長しやすい

身長を形成する要素として、大きな影響を及ぼすのが骨の成長だ。骨はカルシウムとコラーゲンからできていて、コラーゲンはタンパク質、ビタミンC、鉄などで構成されている。

「骨を鉄筋コンクリートに例えると、コンクリートにあたる栄養素がカルシウム。鉄筋がコラーゲンとイメージできます。この2つの栄養素がバランスよくあると、骨が強く成長しやすくなると思います。カルシウムだけだとチョークのように折れやすくなる可能性があるので、タンパク質、ビタミンC、鉄などを摂ることがポイントです」

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また、カルシウムを吸収するときに、マグネシウムやビタミンDを一緒に摂ると吸収が良くなる。その面からも「骨=カルシウム」だけではないと、頭に入れておくと良さそうだ。

育成年代の選手は、サッカーをするためのエネルギーに加えて、体を大きくする、身長を伸ばすためのエネルギーも必要になる。お米やパン、麺類などの炭水化物がエネルギーのメインだが、「主食として何を選ぶか」にも目を向けたい。

木下氏がチームで栄養調査を行ったところ、パンよりもお米を主食として食べる選手のほうが、身長・体重の平均が高かったという。

「お米はおかずと一緒に食べられるので、他の栄養素も取りやすく、バランスの良い食事ができているのではないかと推測します。また『あと一口』『お茶碗半分』のように、量を調整しやすいのもメリットだと思います」

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エネルギーのメインとなるのが炭水化物であり、それが少ないと、人間の身体は筋肉を壊してエネルギーを作り出そうとする。

「結果として骨や筋肉がもろくなり、ケガが起きやすくなる。あるいは成長しにくくなると考えられています」

このように、育成年代の選手にとって、お米をはじめとする炭水化物は、とても重要な栄養素なのだ。

今回の動画では、木下氏のサッカーコーチとしての活動をもとに、選手たちとの対話を通じて得た、理論と実践に基づいた講義が収録されている。

選手の成長を長い目で見たときに、栄養の知識を早い年代で入れることは、大きなメリットがある。ぜひ動画を見て知識を蓄え、身体の成長に意識を向けていただけたらと思う。

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【講師】木下洸太朗/
1990年9月29日生まれ。大学時代に栄養学を専攻し、管理栄養士の資格を取得。大学を卒業してから3年後にサッカーコーチを始め、現在は東急SレイエスFCでTOPチームのコーチ、U-6~12のスクールコーチ、ユースとジュニアユースの栄養指導を担当している。