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子どもの成長に最適な練習の頻度は週に2~3日/サッカー大国ドイツの育成環境の実情

COACH UNITED ACADEMY、講師は前編に引き続き、ドイツサッカー協会の公認A級ライセンスを持ち、現地で育成年代の指導にあたる中野吉之伴氏。

前編では、「子どもの成長に休養が必要な理由」を解説していただき、「休養」に大切な3つの要素を説明していただいた。

後編では、「子どもの成長には、どのくらいの頻度でトレーニングを実施するべきなのか」、「限られた時間の中でどんなトレーニングを行うことが選手を成長させるのか」。といったことについて中野氏の考えをご覧いただきたい。

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ドリル練習は取り入れず、様々な要素を入れたメニューを設定する

前回のコラムでは休むことの大切さをお伝えさせてもらった。身体も心も頭も十分にケアする時間を取る。休養時間をしっかりとるためには、1週間における練習スケジュールもしっかりと配慮されなければならない。(文:中野 吉之伴)

そうすることで一回一回の練習や試合へ集中して、本当の意味で全力で取り組むことができるというサイクルになる。子どもたちはサッカーだけではなく、様々なスケジュールで忙しい。そんな中、適切な練習頻度を考えると、週に2回、多くて3回の練習+週末に1試合というのが望ましいのではないだろうか。

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私が現在指導しているフライブルガーFCのU13は、ドイツのU13リーグ1部に所属している。ドイツは生まれた年で年代を分けるのだが、学校は9月からスタートし、7月に終わるので、小学校6年生と中学校1年生が一緒になる感じだ。

規模的にみると都道府県リーグくらいの広さではないかと思われる。U13ではこれが一番上の大会で、カップ戦もあるが、範囲は基本的に一緒だ。日本でいう関東・関西大会や、それこそ全国大会というものは存在しない。

このくらいの年頃の子どもたちにとって刺激が強すぎる大会は成長にのちのち悪影響を及ぼす危険性が高いとされている。やればやるほど成長するということではない。負担がかかりすぎると、必ずどこかに無理が生じる。だから大人はそうならないように気を配ることが求められるのだ。

私のチームには現在16人の選手が所属しているが、うち半分以上がシュツットプンクト(日本でいうトレセン)に選ばれている。が、みんながみんなシュツットプンクトの練習にも参加しているわけではない。何人かは自分から断りを入れた。なぜだろうか?

週に3回の練習と週末の試合、それに加えてシュツットプンクトでの練習にも行ったら、子どもにとってやることが多くなりすぎてしまうことにもなるからだ。

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断りを入れた子の保護者は一様に「学校のこともあるし、週に3回の練習がいいと思っている。クラブの練習の方がいいと子どもも言っているし、集中してしっかりサッカーができる環境を大事にしたい」と語っていた。

学校の勉強に問題なくついていき、自分で自分の時間をコントロールでき、シュツットプンクトのトレーニングに行っても日常生活を問題なく過ごせるのであれば、プラスになるだろう。でも、だからとそこに行かなければならないということはない。

練習頻度を週に2回から3回くらいに留めることがフィジカル的、メンタル的、思考的にも望ましい。その中でサッカーの要素を身につける環境を整えることが指導者には求められる。練習時間が限られていることを考えると、「ボールコントロール」、「基礎練習」、「リフティング」、「コーンドリブル」、「対面パス」といったドリルトレーニングに時間を割くことは避けたい。

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そもそも基本技術はそうしたドリルトレーニングからしか身につかないわけではない。元SCフライブルク育成ダイレクターのイラクシス・メタクシスはこんなことを言っていた。

「ゲームで感じ、ゲームから学ぶ。指導者が長々と何十回説明するよりも、それは意味があり、役に立つことなんだ」

子どもたちがトレーニングに来るのはなぜか。それはサッカーがやりたいからだ。トレーニングだからといって、大好きなサッカーをする機会がないまま終わってしまったら、彼らは悲しむ。モチベーションにも影響する。それなら、彼らの気持ちを大切にしながら、その中でサッカーの仕組みを学び、サッカーの技術に取り組み、サッカーの面白さにどんどん目覚めていくようにオーガナイズするべきではないだろうか。

一つの練習で一つの要素だけを取りあげるのではなく、様々な要素が身につくようにする。遊びながらも、相手との駆け引きがあり、そこに戦術的な動きも絡んでくるというのが必要なのだ。

各トレーニングを行うとどのくらいの負荷がかかるのかを知っておく

ドイツではB級ライセンス(日本のC級ライセンス相当)でそういったトレーニングマネージメントやオーガナイズについての基本を学ぶ。それが現場で必要な情報だからだ。最初の1週目でフィジカルのあり方を学び、どれだけの負荷でトレーニングをしたら、どれくらいの休養が必要なのかを知る。

それがなければトレーニングプランを作ることができないからだ。そのあとで、どのようなオーガナイズやルール設定をしたら、どのような効果が期待できるか、ということに取り組む。

大切なのは1度のトレーニングで結果を求めすぎないことだ。日本で指導実践をすると、「今日のトレーニングでどこまで持っていきたかったというのはありましたか?」という質問をよく受ける。目標設定は大切だ。だからとそれは義務ではない。私のチームでは戦術的なポイントをもとに、2週間ごとにテーマを持ってトレーニングをする。

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私もトレーニングに対する方向性やコンセプトは持って臨むが、だからと「今日は絶対これをみにつけてほしい」という線引きをしたりはしない。

トレーニングの中で、いろいろなことが起きる。その日準備していた通りにトレーニングが進むことはほとんどない。子どもたちのテンションもモチベーションもコンディションも日によってもちろん違う。

ものすごくトレーニングメニューがはまる日もあれば、かみ合わない時もある。子どもたちができていると思っていたことが、まだ不十分だったりすることもある。そうした様々な事象に対応し、方向性は保ちながら、成長するためのきっかけを作ろうとしていく。1回の練習ですべて変わることはない。1回上手くいったからといって、それですべてができるようになったというわけでもない。

長期的ビジョンで、辛抱強く、一つひとつの成長を楽しみにしながらともに歩んでいく。それが育成指導者のあるべき姿ではないだろうか。小学生の間に結果を残さなければならない必要は全くないのだから。

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動画では、遊びや戦術、メンタルといった様々な要素を同時に強化するトレーニング方法などを紹介しているので、ドイツの育成環境で行われている考え方や練習方法をぜひこの機会に学んでみてはいかがだろうか。

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【講師】中野 吉之伴/ 武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。
2009年7月にドイツサッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA-Aレベル)。SCフライブルクU-15チームでの研修を経て、元ブンデスリーガクラブのフライブルガーFCでU-13の監督を務める。