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休むこともトレーニング!「休養」に大切な3つの要素とは?/サッカー大国ドイツの育成環境の実情

COACH UNITED ACADEMY、講師はドイツサッカー協会の公認A級ライセンスを持つ中野吉之伴氏。

近年の日本の育成環境では、「練習のやりすぎ」が問題視されるようになってきたが、サッカー大国のドイツでは、どのような育成環境の形をとっているのだろうか?

今回、ドイツで10年以上育成年代の指導にあたる中野吉之伴氏に「ドイツに学ぶ子どもの成長に必要な『休養の重要性』と『トレーニング環境』」をテーマにドイツの育成環境について紹介していただいた。

中野氏は前編で主に「子どもの成長に休養が必要な理由」を解説。

育成大国のドイツの考え方をぜひCOACH UNITED ACADEMY会員の方にも参考にしていただきたい。

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休養はただ体を休めることだけをすればよいわけではない

日本の子どもたちは大変だ。毎日忙しいスケジュールで暮らしている。学校に行く。授業を受ける。学校から帰る。サッカーの練習がある。塾がある。サッカースクールがある。他にも習い事はある。(文:中野 吉之伴)

こうした姿を見て、「うんうん、みんな頑張っているなぁ」と思っていたら、ご自分の感覚を少し疑った方がいい。

頑張っているんじゃない。ほとんどの場合、頑張らされているのだ。

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みなさんは成長のメカニズムをどこまでわかっているのだろうか。放っておいても子どもは勝手に成長する?やればやるほど強くなる?そうではない。子どもが成長するためには「準備-実践-休養」のバランスが取れていなければならない。

特に休養に関する考え方は重要だ。あった方がいいとかのレベルではなく、なくてはならないものだ。そして今の日本で一番気をつけなければならないところが、休養の仕方についてだ。本当に今、どれだけの子どもが健全な生活を送れているだろうか。今回は休むために大切な要素として次の3点を挙げたいと思う。

1:バランスの取れた食事
2:十分な睡眠
3:ゆとりのある遊び

1:バランスの取れた食事

バランスとは何だろう。人間は箱ではない。栄養素を満たした物質を体内に取り込めばそれで万事オッケーということにはならない。

リラックスした雰囲気で、家族団らんの中で、その日あったことを振り返りながら、時に話に夢中になりすぎて、お母さん・お父さんに「ご飯もちゃんと食べなさい」と叱られたりしながら、ちょっとすねて、でもそうした空気感が彼らにもたらすものは大きい。そうした時間は心をのびやかにする。

とはいえ、両親共働きだったら、毎日毎日そんな理想的な食事環境を整えるのは難しい。そういう場が大事だと無理をしたら、そこで気持ちが疲れてしまって、せっかくの食事の席であくせくした空気がもやっとしていたらむしろ何のためにやっているの?ということになってしまう。

週間スケジュールの中にはみんなの予定が絡み合って、どうにも時間が取れないところもある。そういう時はさっとそれぞれ食事をとれる方が、お互いにとってストレスは少ない。だからといって、毎回の食事がそれでは心の交流が行われない。サッカー選手としての成長を願うのであれば、彼らが子どもとして子供らしく成長できる場をしっかりと理解して、一緒に作ろうとすることが大切だ。

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チームで食事をとる時はどうだろう?みんなゆとりをもって、のびやかな時間を過ごせているだろうか?スケジュールに追われて、食べ終わることが先にきてないだろうか。指導者の方は、だれがどんなものを食べているかなんとなくでもチェックしているだろうか?

「練習後○○分以内にタンパク質を取るべき」みたいなルールよりも、日常生活に無理がないように気を配る方が大切なのだ。

2:十分な睡眠時間

スケジュールに追われているからと睡眠時間を削るのは子供の成長にとって悪影響を及ぼす。寝る時間が減れば、朝起きるのは大変になるし、コンディションを取り戻せないと、集中力も持続できない。学校で寝るようになってしまったら、何のために行っているのかわからなくなる。考え方が逆になってしまってはダメだ。スケジュールが多いから睡眠時間を削るのではなく、睡眠時間を十分に確保するためにスケジュールを削るべきなのだ。

「よし、じゃあだいたい9時間は睡眠時間を確保したいから、遅くとも10時には眠るとして、9時過ぎに練習から帰ってきて、お風呂入って、軽くご飯を食べて、ベットに入ったらで大丈夫だな」

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いや、そんなふうにリズムよくすべてが回るものでもないはずだ。ベットに入ったらすぐに眠れるものではないし、質の高い睡眠をとるためには、眠りに入る前にリラックスした時間が必要になる。そのためには余白の時間が必要で、「眠らなきゃ」というプレッシャーをかけるのとはまた違う。

これも毎日、ゆっくりと休んで眠れる日を作るのが難しいのだとしたら、週に3回はゆっくりご飯を食べて、おふろにのんびり入って、部屋でぼんやりくつろいで、それから眠るみたいな日を作ることが求められる。

3:ゆとりのある遊び

「学校が終わって家に帰って、サッカーの練習が19時からだから、17時から18時までだったら友達と遊べるかな」

最近の子どもたちは友達と遊ぶこともスケジュール管理しなければできないようになっていないだろうか。遊ぶことをあくせくしなければできない。

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それは"遊び"だろうか?

友達と遊ぶというのは細かい時間設定の中で行使される用事だろうか?

次のスケジュールのことを考えずに、頭を空っぽにして、夢中になって友達と遊ぶ。そんな時間が子どもたちを子どもたちらしくするなによりのものだし、そうした時間の中で育まれることなく、心は成長していかない。人間関係の構築を学ぶこともできない。

サッカーの指導者とは、サッカーを教える人ではない。サッカーの技術や戦術を伝えるだけの人ではない。人として、子どもたちが身体も心も頭も人間関係も自分たちで大事にしながら生きていくことの大切さを伝えられなければ、指導者失格ではないか。

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勝つか負けたかが指導者の質を表すわけではない。選手としてだけではなく、人としても育つ下地をじっくりと築き、いずれ自分で考え、自分の足で歩き、自分の思いを体現できるような大人となるための環境を整理するのが、我々大人の役割なのだから。

動画では、中野氏が指導するドイツのクラブで実施している選手育成のプロジェクトなども紹介しているので、ぜひこの機会にドイツの育成環境を参考にしてみてほしい。

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【講師】中野 吉之伴/ 武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。
2009年7月にドイツサッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA-Aレベル)。SCフライブルクU-15チームでの研修を経て、元ブンデスリーガクラブのフライブルガーFCでU-13の監督を務める。