12.26.2022
前進するコツは縦と横のパスを状況に応じて使い分ける。横浜FMプライマリーのビルドアップトレーニング
2022年の「JA全農杯 全国小学生選抜サッカー選手権」(チビリンピック)で3位に入賞した、横浜F・マリノスプライマリー。トップチーム同様に、後方からボールをつないでビルドアップし、ゲームを支配する攻撃的なサッカーを目指している。
ジュニア年代において、自陣からのビルドアップは難易度が高く、パスが途中でカットされるといった課題が見られる。チームを率いる土井孝徳監督は「前進する意識を常に持たせること」「縦パスと横パスを状況に応じて使い分けること」を意識して指導を行っているという。
そこで今回は、長年クラブのアカデミーで指導者を務める土井監督に「ビルドアップから前進する縦パスと横パスの使い分け」をテーマにトレーニングを実施してもらった。
ジュニア年代の日本トップレベルと言える、横浜F・マリノスプライマリーでは、どのようなトレーニングを通じて、ビルドアップを植え付けているのだろうか? 普段はなかなか見ることのできない、貴重なトレーニングの様子をお届けしたい。(文・鈴木智之)
味方がボールを持っている時に三角形をつくること
最初のトレーニングは、ビルドアップのベースとなるパス&コントロール。最初の選手がパスを出し、中央の選手がボールを受けてターンをし、前方へパスを出す動きを繰り返していく。
土井監督は「ビルドアップの際には、最終ラインの選手でも、相手ゴールを意識すること。攻撃の優先順位を意識して、前へプレーすることがポイントになります」と話し、トレーニングに入っていった。
ここでは「ボールを止めるところからパスまで、テンポよくやろう」「前にプレーできるように」「相手がいるイメージを持って」と声をかけるとともに「角度をつけるだけで、相手や前の選手が視野に入ってくるよ」とアドバイス。
ポイントとしては、味方がボールをコントロールした瞬間に動き出し、ボールを受けられる体の向きを作ること。パスの出し手は、もっとも遠くの選手にパスを出せる位置にボールを置きながら、手前の選手にパスを出すイメージでプレーしていく。
また、土井監督は「中央にいる受け手は、出し手のコントロール(ボールの置所)を見て、右か左かサポートの位置を変えることで、奥にいる選手と三角形をつくることができる」と実演を踏まえて説明。このあたりは動画で確認してほしい。
続いて、横パスと斜めのパスを交えてボールを動かしていく。中央には「奪いに行かないDF」を配置し、その選手を外してボールを受ける。
ここでも引き続き、ボールの置所やコントロール、味方とタイミングを合わせること、パスの質などにこだわりながらプレーする。
土井監督は「味方がボールを止めたときに動いて、パスを受ける。その際に、次にパスを出す、前方の選手の位置を観ておくこと」を重点的にコーチング。観ること、判断することを連続して行い、多くの情報を取り入れるように声をかけていく。
途中から、最後のパスは味方へのスルーパスに変更。試合中、相手ゴールに向かってパスを出し、攻撃をするイメージを植え付けていく。ほかにも、中央の選手の動き方のオプションを増やすなど、徐々にプレーの選択肢を増やしていった。
練習から「縦(前)へのパスコースを観ること」を意識させる
前編最後のトレーニングは「5対3(3ゾーン)」。3つのゾーンに攻守1名ずつ、手前と奥にフリーマンが入り、それぞれのゾーンでプレーする。
土井監督は「前の練習を思い出そう。どういうイメージを持ってプレーした?」「どこで味方を助ける?」「どのタイミングでボールを受ければいいのかを考えよう」といった声掛けを通じて、周囲と連動すること、味方とタイミングを合わせてプレーすることの大切さを説いていく。
また、実際の試合で相手ゴールを目指す上で重要な「縦(前)へのパスコース」を見ていなかった選手に対して指摘するとともに、ボールを置く位置によって、相手の守備と駆け引きすることの重要性を伝えていった。
ほかにも「前線へパスを出しやすいポジションを意識して、ボールを受ける」などのアドバイスも実施。細やかなコーチングを通じて、選手たちの意識にアプローチしていった。
前編終了後、土井監督は「このトレーニングでは、試合のイメージを持たせながらコーチングすることが重要です。動きながら、相手を観ながら技術的な精度を上げること。相手を観た上で前進できるのか、ボールを失わないようにプレーするのかを判断することが大切になります」と話し、トレーニングを締めくくった。
動画には、マリノスの選手たちの高い技術をベースに、テンポよくパスが回る様子が収録されている。土井監督の指導に加えて、日本トップレベルの選手たちのクオリティも参考にしてほしい。
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【講師】土井孝徳/
桐蔭横浜大学を卒業後、2003年から自身がジュニアユース時代に所属していた横浜F・マリノスで指導者としての活動をスタート。横浜FMでは、プライマリー年代やジュニアユース年代を中心に10年間、指導に携わった。2013~2014年はFC岐阜U-15の監督も経験。その後、2015年から再び横浜FMへ戻り、現在は横浜F・マリノスプライマリーで監督を務めている。
取材・文 鈴木智之