TOP > コラム > ドリブルとパスが併用できると戦術の選択肢が増える。駆け引きをして認知・判断力を高める実践トレーニング

ドリブルとパスが併用できると戦術の選択肢が増える。駆け引きをして認知・判断力を高める実践トレーニング

『JFA 第46回全日本U-12サッカー選手権大会』でベスト4に輝いた、滋賀県の街クラブA.Z.R(アッズーロ)。相手と駆け引きをしながらボールを保持して攻めるスタイルで、全国の舞台でも存在感を発揮した。

A.Z.Rを全国レベルに引き上げた、古荘隆徳監督によるトレーニング。後編は「1対1とパスを併用して目の前のDFを攻略するトレーニング」の実践編として「4対4+3サーバー」、「5対5」を実施していく。技術と判断をともなう設定で、個とグループを高めるトレーニングは必見だ。(文・鈴木智之)

この内容を動画で詳しく見る

furusho04_01.png

<< 前回の記事を読む 

実践の中ではボールを受ける前からプレーの選択肢を決めないこと

動画後編のテーマは「実践の中での駆け引きと相手の逆を突く練習法」。トレーニングでは「4対4+3サーバー」を行っていく。

設定としては、縦横8mの隣り合うグリッド内で4対4+3サーバーを実施。縦ライン上にサーバーを3人置き、攻撃側(ボール保持側)はパス15本成功で1点。(サーバーは2タッチ以内)。守備側がボールを奪うと、瞬時に攻守交代となる。

furusho04_02.png

攻撃側は横のライン上に選手を均等に配置し、ライン上のみ動いて良いというルールで、守備側はグリッド中央部を起点にボールを奪いに行く。

古荘監督はプレーを見守りながら「ボールを動かしながら」「相手の位置を気にしよう」「DFを食いつかせよう」など、判断と駆け引きの部分にアプローチしていく。

「攻撃側は、4対2の数的優位ができているので利用しよう。相手を引き付けると、スペースが空く。数的優位を作り、どうやってボールを逆サイドまで持っていくか。試合の中でもあると思うけど、GKからFWまで、どうボールを運んでいくかをイメージしてやろう」

furusho04_03.png

また「プレーを決めている選手が多い」と指摘。プレーをあらかじめ決めておくのではなく、相手の状況を見ながら、直前で判断を変えることの重要性を伝えていった。

「最初にやろうと思ったプレーが無理そうだったら、方向を変えるなどしてみよう。状況を見ながら直前で判断して、プレーを変えること。みんなはそれができるはずやから、どんどんやってみよう」

相手の重心がどこになっているのかをチームで見極める

続いてのトレーニングは「5対5」。30m×25mのグリッド内の両サイドに2つのゴールゲート、中央にコーンを置いて、5対5を行う。ゲートをドリブルで通過すると1点、中央のコーンにボールを当てれば2点となる。

furusho04_04.png

ポイントは「相手の逆を突くこと」。相手と駆け引きしながら背後をとるためにはワンツーが効果的で、前編で取り組んだトレーニングが活きてくる。

古荘監督は「中央のコーンに当てると2点なので、真ん中をどう狙うかが大事。相手も当然、中央を守ってくるので、どうやってサイドを使うか、相手の重心はどこかを考えよう。3つあるゴールのどこを守ればいいか、守備側に絞らせないようにしよう」とアドバイスを送る。

さらには「相手の重心はどこになっている?」と声をかけるとともに「重心が前になっているときは、裏に一人が抜けてスペースを作って受けたり、空いたスペースに人が入るのが判断。それぞれが相手の状況を見て駆け引きし、相手を揺さぶろう」と考え方を提示していく。

「相手を寄せて、逆サイドを突く。守備で密集させると逆サイドが空いてくる。相手が逆サイドを意識すると真ん中が空く。そうやって駆け引きをして、できたスペースを使っていこう。そうすると(中央コーンの)2点も狙えるよ」

furusho04_05.png

「一人ひとりの距離が同じだと、ボールが回りにくい。密集で相手を食いつかせたり、離れて相手を広げて揺さぶると、真ん中が空いてくる。相手に重心をかけさせて、かかっていないところを狙おう」

古荘監督は認知・判断の部分にアプローチすることで「相手の逆を突くためにどうすればいいか」を選手たちに考えさせていった。

以上でトレーニングは終了。古荘監督は「選手個々が相手と駆け引きを行い、どうやって相手の逆を突くのかを考えることで、ドリブルとパスを併用するスキルを身につけていきます」と話し、次のように続ける。

furusho04_06.png

「そのような選手が育っていくと、チーム全体でボールを保持する時間が確保でき、プレーや戦術の選択肢が増えます。A.Z.Rでは指導方針を明確にした育成を積み重ねて、全国で上位に行けるようになりました。ぜひ日々のトレーニングの参考にしてみてください」

A.Z.Rは、多くのチームと同じように、クレーのグラウンドでトレーニングしている。その中で、正確な技術の習得や発揮、周りを見ることなど、サッカーに必要な要素をていねいに指導し、全国ベスト4の結果を残した。

彼らの取り組みから学ぶ部分は多い。ぜひ動画を見て、全容を確認してほしい。

<< 前回の記事を読む 

この内容を動画で詳しく見る

▼▼COACH UNITED ACADEMY 会員の方のログインはこちら▼▼

【講師】古荘隆徳/
東京農業大学を卒業後、甲賀クラブ(滋賀)、 アリーバ甲賀(滋賀選抜)、SR2008(滋賀選抜)でプレー。「選手が考え、判断することにより自立心を育て、将来プロで活躍する選手の育成に務めること」をモットーに2014年に設立されたA.Z.R(滋賀県)で設立当初からコーチを務める。2020年度よりトップチームの監督に就任し、チームを初の「JFA全日本U-12サッカー選手権大会」出場へと導くと、2022年には、同大会でチームを滋賀県勢最高となる3位に導いた。