TOP > コラム > スペースと時間が限られる相手のゴール前。サイドの幅を使ってニアゾーンを攻略する実践トレーニング

スペースと時間が限られる相手のゴール前。サイドの幅を使ってニアゾーンを攻略する実践トレーニング

2022年に行われた「高円宮杯JFA第34回全日本ユース(U-15)選手権大会 神奈川県大会」で優勝を果たした、大豆戸FC。横浜市港北区を拠点に活動するクラブで、ジュニアユースのOBに、横浜FCの小川航基選手がいる。

チームを神奈川王者に導いた森下亮監督による「ニアゾーンの崩しのバリエーションを増やすトレーニング」。後編では、ゲーム形式のトレーニングを通じて、実戦に近い強度の中でパフォーマンスを向上させていく。(文・鈴木智之)

この内容を動画で詳しく見る

morishita02_01.png

<< 前回の記事を読む 

サイドを効果的に使うために、幅を取って中央にスペースを作る

後編のテーマは「ニアゾーンの崩しを実践するゲーム形式の練習法」。トレーニングは「7対7+1サーバー+GK」を実施。設定としては、50m四方のグリッドでプレーし、サーバーは中央のコーンの間と前方にあるマーカーで区切られたエリア内でのみプレー可能というルールだ。

morishita02_02.png

攻撃側はゴールを目指し、守備側はボールを奪ってコーンゴールをドリブルで通過するか、コーン間でサーバーへパスを通すと1点となる。(サーバーへのパスはグラウンダーのみ)。

選手の配置に関して、森下監督は「攻撃は3トップ、インサイドハーフ、サイドバックがいるイメージ。守備は4-3で組もう」と提示。攻撃側は、サイドにいるウイング、サイドバックを使いながら、ニアゾーンの攻略を目指し、ゴールを狙う。

森下監督は「守備はゴールを守る、ゴールを奪われないこと。そのために、まずは中央を固めよう。攻撃側は外と内側の両方を使いながらやろう」と声をかけ、トレーニングがスタートした。

選手たちのプレーを見ながら、森下監督が強調したのが「チャンスを逃さずに突破やシュートを仕掛ける」こと。「ゴール前の設定なので、仕掛けられるときは仕掛けよう」と、繰り返し、声をかけていた。

morishita02_03.png

また「サイドの選手は、大外のレーンからスタート」という設定にすることで、選手の配置で幅を作り、相手の守備を広げることも狙いのひとつ。そうすることで、ニアゾーンのスペースが空くので、そこをうまく使っていきたい。

さらに森下監督は相手の状況を見ながらポジションをとることや、駆け引きの重要性を指摘。「相手が引いたら、ボールを受けに来て、相手を引っ張り出そう」とアドバイスし、プレーの優先順位を改めて整理して伝えていく。

morishita02_04.png

「このトレーニングでは、意識が外(サイド)に向くのもわかるけど、まずはゴールを目指して、中央の位置でシュートを狙えるなら打つ。相手が引いているのなら仕掛けていく。目指すのはゴール。外に逃げるのは簡単。内側を攻める中で外を使っていこう」

単独での突破だけにならず、サイドの選手を使って崩すことを意識する

後編、最後のトレーニングは「9対9のゲーム」。グリッドサイズは1つ前のトレーニングと同じで、ゴールとGKをつけて行う。システムは3-4-1+GKで実施する。

morishita02_05.png

森下監督は改めて「サイドの選手を使って崩すことを意識しよう。突破だけにならず、味方を見ながらやろう」と、サイド攻撃を織り交ぜながら、ゴールを攻略することへ意識付けしていく。

トレーニングでは、DFラインや選手の間に顔を出してボールを受けること、最初に受ける選手が積極的にアクションを起こすこと、それに合わせて周りの選手が反応することなどをコーチングしていった。

morishita02_06.png

トレーニング終了後、森下監督は次のように振り返った。

「今回のトレーニングは、普段の試合の配置でポジションをとり、試合に近い形で行いました。チームの中である程度、型を共有し、選択肢を絞った中でプレーを行うことにより、スペースと時間の少ないゴール前で、チームとして早くプレーすることが狙いです。ぜひ、日々のトレーニングの参考にしてみてください」

今回の動画は、なかなか見ることのできない、U-15年代のトレーニングとなっている。激戦区・神奈川の強豪クラブは、どのような強度で、どのようなトレーニングを行っているのか? 動画で確認し、日々の活動に役立てていただければと思う。

<< 前回の記事を読む 

この内容を動画で詳しく見る

▼▼COACH UNITED ACADEMY 会員の方のログインはこちら▼▼

【講師】森下亮/
2006年より、大豆戸FCで指導者としてのキャリアをスタート。現在は、大豆戸FC U-15の監督とU-7のアシスタントコーチを務める。2022年に行われた「高円宮杯JFA第34回全日本ユース(U-15)選手権大会 神奈川県大会」でチームを優勝へと導いた。