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指導者をやりたい若い人へ。多様な働き方がもたらす新しいキャリアの可能性

サッカー指導者と別の仕事、2つのキャリアを両立しながら、自身の成長とサッカーの夢を追い続ける。そんな「デュアルキャリア」を実現するコーチを紹介する本企画。今回は、槙野智章氏が監督でも知られる品川CCのトップチームコーチ藤井翔さん(34歳)にお話を伺った。

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指導者としての再出発。そこで得た挫折

---- 指導者としてどんなキャリアを歩んでこられましたか?

「所属していた拓殖大学サッカー部でコーチははじめたのが、指導のスタートでした。卒業後も指導を続けていたのですが、一度、指導者をやめて別の仕事に就いたんです。でも、サッカーから離れてみて、改めて自分がサッカーに戻りたいと思っていることに気づきました。そこで友人から長野にあるクラブチームを紹介してもらい、ジュニアユースとスクールのコーチとして再び指導の道に戻りました」

---- 育成年代のコーチになって、大きな挫折を経験したそうですね

「長野ではたくさんの経験をさせてもらいました。大学までサッカーを続けて、自分はサッカーを理解していたつもりでしたが、原理原則など全く理解できていないことに気付かされました。さらに言語化することが難しく、子どもたちに全然伝えられない自分がいて、かなり落ち込みましたね。厳しいご指摘も受けたり、大変さもありましたが、この2年間は今の指導のベースになっています」

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トップチームコーチとのデュアルキャリア

---- トップチームの指導と育成年代では何か違いはありますか?

「その後、長野を離れて、品川CCと契約させていただきました。クラブがサポートする少年団チームも指導しながら、今年からトップチームのコーチに招いていただき、監督(槙野智章さん)やヘッドコーチのアシスタント役としてチームをサポートしています。サッカーの原理原則は同じなので、ベースは変わりませんが、セオリー通りじゃない発想というか、その原理原則を超えるアイデアを持っているのが、あの世界の人たちなんだなと日々勉強させてもらっているところです」

---- デュアルキャリアを選択した理由は?

「お金が必要だから、というのが正直なところです。0歳、2歳の子どもがいるので、家族を支えていくためにも、収入が安定する働き方を選びました。日中はビルなどの建築現場で塗装を行う仕事をしながら、夕方から少年団の指導、トップチームの指導に携わっています。サッカーだけで食べていけるのが一番よいのかもしれませんが、別に仕事を持つことの良さも感じています。塗装の仕事と、指導の仕事は全く別物ですが、塗装をしている時間は、自分にとって大切な時間になっているんです」

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デュアルキャリアで感じるメリットと難しさ

---- 「別の仕事も大切な時間」というのは興味深いですね

「たとえば集中して塗装をしていると、無心になれる時間があるんです。その無心の時間に、ふっとトレーニングのアイデアが降りてきたり。サッカーから離れる時間を持つことで、考えが柔軟になったり、新しい発想を生み出す機会につながってるんじゃないかなと思います。グアルディオラもバスケットを見たりするって言うじゃないですか。それと似てるのかもしれませんね(笑)」

---- 2つのキャリアを両立する難しさはありますか?

「そうですね。やはり周りからの理解を得ることは必要だと思いますし、苦労する点かもしれません。サッカーのために仕事を早めに切り上げなければならない時もあります。僕の現場はベテランの職人さんも多くいらっしゃるので、ご理解いただくために周りとのコミュニケーションは気をつかっている部分です」

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多様な働き方がもたらす新しいキャリアの可能性

---- 今後、どんな指導者を目指したいですか?

「僕が大切にしている「忘己利他」という言葉があります。「自分のことを忘れて、他者のために尽くす」という意味なのですが、長野で指導している時、指導者のあるべき姿として、先輩コーチに教わった言葉です。」

「僕のサッカー人生は、様々な人たちのご縁でつながってきました。皆さんが自分のために尽くしてくださったからこそ、今の自分があると思っています。この感謝を忘れてはいけないと思いますし、自分自身も人のために尽くすという想いは忘れないようにしたいと思っています」

---- 藤井さんのような働き方がもっと認められるといいですね

「指導者をやりたい若い人は多いと思います。でも、生活のために別の仕事を選ばざるを得ない人もたくさんいると思います。もっと多様な働き方が認められるようになれば、好きなサッカーに情熱を持ちながら別のキャリアも築ける人が増えるのではないでしょうか。世の中的にもっとこういう働き方が認められていくとサッカー界にとってもいいのかなと思います」

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