11.20.2018
太ももガッチリ体型は要注意!?スペインと比べて日本の子どもにオスグッドが多い理由と予防策
サッカーをする子どもたちにとって、怪我はその楽しみを奪う厄介な"敵"です。
なかでも、成長期においてはオスグッド(ヒザの痛み)や、シーバー病(かかとの痛み)、あるいはグロインペイン症候群(股関節の痛み)といった、スポーツ障害に悩まされる子どもが多くいます。
なぜ、そのような障害が引き起こるのか。ならないためにはどうすればいいのか。スペインの強豪RCDエスパニョールや、Jリーグのベガルタ仙台でトレーナーを務めていたアスレティック・トレーナーの松井真弥さんに、スポーツ障害の痛みの原因と、予防について話を伺いました。
(取材・文:原山裕平)
※サカイク2018年1月23日掲載記事より転載
■オスグッドの原因は太ももの筋肉
まず、最も多くの子どもたちが悩まされているオスグッドについて。オスグットは、太もも前の筋肉とすねの(筋肉)をつなぐヒザのお皿の部分が引っ張られることによって痛みを引き起こす症状です
筋肉がお皿を介してすねの骨に付いているのですが、そのすねの付着部分が引っ張られる事により 痛みを引き起こす症状です。
では、なぜすねの付着部分が引っ張られてしまうのか。松井さんはそのメカニズムを次のように説明します。
「ももの筋肉を酷使し、疲れがピークを越えると、筋肉に柔軟性がなくなってきます。柔軟性がなくなり筋肉が硬くなると、付着部に負担がかかる。それが積み重なることで、痛みが出るんです。オスグッドは子どもがなりやすいのですが、それは大人と違って、筋よりも骨のほうが柔らいから。だから、筋肉ではなく付着部に炎症が起こるんです」
原因はやはり練習のやりすぎにあると松井さんは言います。筋肉を酷使することで、筋肉ではなく付着部が悲鳴を上げるのです。
■太ももが張り出している子は注意
こうしたスポーツ障害にならないためには、練習の時間や負荷を減らすことが何よりも重要です。そして、もうひとつ大事なのは、正しい姿勢です。
「重要なのは姿勢なんですよ。良い姿勢とは、骨盤が前に傾いている状態のことです。そうするとヒザが伸びて、足の負担が減る。でも、多くの子どもたちは骨盤が後傾した悪い姿勢、要するにお尻が落ちて、ヒザが曲がった状態で動いているんです。そうすると、太ももばかりに負担がかかります。オスグットになる子は、太ももがガッシリ張っている子が多いんです」
悪い姿勢でプレーすることで、太ももに余計な負担がかかってしまう。その負担を身体の様々な部分に分散することが必要で、そのためにはやはり良い姿勢を保つことが大事なのです。
「姿勢を良くすることによって、負担が減り、疲れにくくなる。そうすると、付着部の痛みも減っていくんですよ」
■スペインの子にオスグッドが少ない理由
スペインで10年間トレーナーを務めた経験のある松井さんによれば、スペインではオスグッドの症状をほとんど見たことがないといいます。
「日本とスペインとでは、負荷が違うというのはもちろんあります。向こうは明らかに練習量が少ないですから。オーバーユースによる怪我というのは、ほとんど起こりません」
また松井さんは姿勢の違いも、その理由に挙げます。
「彼らはやっぱり、骨盤が起きていますよね。だから、特定の部分に負担がかかりづらい。向こうの子は実は、もも前、ふくらはぎがそんなに太くない子が結構います。 余計な筋肉がついていないんです。逆に、日本の子は骨盤が下がっているため、もも前に負担がかかって、筋肉が必要以上に発達してしまうのです。特に5、6年生くらいになると、そういう子が増えますね。そしてそういう子のほうが、痛みが出やすい。だから、彼らにアドバイスをするとすれば、姿勢や身体の動かし方を変えるしかない、ということですね」
■オスグッドの予防には
オスグッドになった場合は、当然、ストレッチや電気療法、その他治療はあるものの、松井さんは根本的な部分の改善が重要だと言います。
「もしオスグッドになったら、病院で見てもらって、練習量をコントロールするしかない。ひどい場合は、練習を休む必要性も出てくるでしょう。でも、結局、何をしなければいけないかといえば、根本的な原因を解決すること。例えば、猫背でお尻が落ちた状態でバタバタと動いていれば、姿勢の良い子よりも明らかに負担がかかる。そういう部分を改善することが、オスグッドの予防になるのです」
姿勢を良くするには骨盤を上げること。そしてその為には背中の広背筋、脊柱起立筋、肩甲骨に刺激を与えてあげることもポイントとなります。あるいは、日常生活から良い姿勢を意識することも大事になってきます。
良い姿勢は、スポーツ障害を引き起こさないだけでなく、パフォーマンスの向上にもリンクするポイントです。良い姿勢を意識してプレーすることは、様々な点においてメリットを生み出すのです。
次回は、大人になってからでは治療が厄介な「かかとの痛み(シーバー病)」の原因と予防法をお送りします。
取材・文 原山裕平 写真 新井賢一(U-12ジュニアワールドチャレンジ2017)