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新たな攻撃の幅を手にした広島の「意義ある失敗」。森保広島・風間川崎の攻防を読み解く(3)

図表・文/五百蔵 容(いほろい・ただし)

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<<川崎は、J1最強・広島の守備ブロックをどう崩したのか? 森保広島・風間川崎の攻防を読み解く(2)

■図解:川崎の先制点のシーン

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 守備者はボールを見つつ、ボールとゴールの間のラインを遮断するように守備をしなければならない。守備者の背中側に視野はなく、その方向にゴールがある。守備者の背中を取るように動き、ボールを動かし続ければ、最終的にはシュートチャンスを得ることが可能......。
 
 この先制点は、そのような考え方に基づいて展開される川崎のパスワークによる崩しの理想形だと言えます。
 
 広島側からすると、この試合を通じ川崎のパスワークを有効に阻止することができませんでした。先制点を奪われたこともあり、終始主導権を握られることになります。

■広島の意義ある失敗:

 プラン通りに固め始める川崎の守備を破ろうとする広島の試み

 川崎の守備プランは前述の通り。逆に広島は、早々に先制した川崎がサイドと真ん中を閉塞する広島対策に移行したため、どうにも攻めあぐねるうえ、川崎のサイドの穴を突くために準備してきたプランを行使しづらい状況に追い込まれます。

 もちろん追い込まれているばかりではなく、広島はこの状況をなんとか打開しようと試みます。

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 この試合で川崎が採った方法は広島・浦和対策としては非常に汎用性が高く、あらゆるチームが採用可能なものです。このシーズンの終盤戦だけでなく、翌2014年シーズンにおいてもチームに立ちはだかるだろうやり方に対し、広島はあくまで正面から崩そうと試みています。完封されたこの試合ではうまくいきませんでしたが、トライを続けることで2014年の広島はこの対策に対抗できる新たな攻撃の幅を手に入れることになります。

 それについては次回触れるとして、次はこの試合を決めた川崎の二点目を見てみます。一点目と同じく、広島の泣き所が暴露された得点であり、失点でした。

■試合を決めた川崎の二点目

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 広島の堅牢な守備組織、中盤における中核を担うのはDMFの青山です。この青山の仕事を成立させるには、シャドー=インサイドハーフの多彩な攻守におけるタスク、とりわけ攻→守切替時のそれがカギとなります。こちらのコラムでも検討しましたが、攻→守切替時、シャドー=インサイドハーフが相手の選択肢をせばめる仕事ができてこそ青山が焦点を絞ったボール奪取・規制を行うことができます。
 
 逆に、この仕事が甘くなってしまうと青山のところで有効な守備ができなくなり、一気にゴール前にボールを持ち込まれてしまいます。それでもある程度相手から時間を奪えていれば、DFラインを整えることができシュート阻止の可能性を上げることができますが、ここではそれもできませんでした。このケースでは、高萩はなんとしても森谷に追いすがって、青山が縦を切るのに連動して中央へのパスコースを切っておけば失点の可能性を大きく削ぐことができたでしょう。

 広島は失点が非常に少なくカウンターに対する守備も強いチームですが、インサイドハーフ、主に高萩のポジショニングミスやアプローチの甘さから多くのピンチを招いており、相手チームにとって付け入ることのできる隙になっています。2014年シーズンにおいてもあまたの敵手を退け、優勝争いに絡んでいくためには、広島はここの仕事の精度、強度を上げることが絶対条件になるでしょう。

■まとめ:

 この試合で浮かび上がった、次なる対戦への両チームの課題をまとめます。

<広島の課題>
 広島にとっては多くの課題、問題点が露呈した試合でした。明確化したこれらの課題を解決することができれば、広島のチーム力は確実に向上するでしょう。そういう意味ではポジティブに捉えられる試合だったと思われます。

●攻撃面
→WBの動きで生み出すCB~SB間スペースを閉塞し、攻撃の選択肢を奪うことを意図する広島対策の攻略。

→中央の攻撃パターンの起点となる青山、千葉からのクサビを徹底的にケアされた場合移行できる別の選択肢の積み上げ。具体的にはサイドからの崩しの多様化。

●守備面
→背中を取られバイタルエリアでボールを有効に動かされ崩された。これをどう阻止するか。
 
→インサイドハーフの守備が不安定。ここにどう安定性をもたらすか。

<川崎の課題> 
 早い時間帯に先制点を取ったこと、また広島対策がハマったことなどから、この試合は川崎としては完勝といえる内容でしたが、それ故に明確な課題の抽出が難しいきらいがあります。しかし課題はあります。以下の課題はこの試合中でも見てとれるもので、修正を進めなければ相手に分析・利用され大きな弱点となっていくでしょう。

●攻撃面
→守備のバランスを整えるために起用しているCBやDMFにおいてパスの種類・精度が乏しく、有効なビルドアップの選択肢が一方のDMF(CMF)からに限られてしまう。

●守備面
→ボール支配率が十分でなく、ポゼッションによって相手の攻撃機会を奪う守備ができていない。
  
→守備は安定してきているものの、属人的要素や最後の局面での人海戦術に頼る傾向がある。とくに攻→守切替時の守備が組織化されておらず、ボールを奪われた後ある程度ボールを前に運ばれてしまう。

 風間・森保両監督がこれらの課題にどうアプローチし、どう解決したか。または解決できなかったか......次回は、2014年シーズンにおける最初の対戦を通じてその様相を検討し、戦術的に興味深い試みのもとチーム作りを進めている広島・川崎両チームの「今」、そして今後を展望してみたいと思います。

<(4)へ続く>

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