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身体を効率的に動きやすくするステップワーク/長期のオフ明けに身体のキレを戻すフィジカルトレーニング

新型コロナウィルスの緊急事態宣言解除に伴い、活動再開を検討している指導者も多いのではないだろうか?
COACH UNITED ACADEMYでは、「タニラダー」でおなじみ、ヴァンフォーレ甲府・フィットネスダイレクターの谷真一郎氏に「身体のキレを上げるフィジカルトレーニング」を解説・実践してもらった。(文・鈴木智之)

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サッカーの基礎となる「足のつき方」「ステップワーク」から確認していく

谷氏は筑波大学卒業後、20年に渡り、トップチームのフィジカルコーチとして活動してきた。Jリーガーを指導する中で、「若い年代から、より良い動きを身につけることで、選手たちの伸びしろが変わってくる」と痛感したという。

その想いは強く、2020年シーズンより「ヴァンフォーレ甲府・フィットネスダイレクター」という肩書で、大人から子どもまで、様々なカテゴリーの選手の動きづくりを指導している。

今回は「長期の休み明け、試験週間、オフ開けなどにやるのが適している」(谷氏)という、休校やクラブの活動停止が続くこの時期に、適した内容を実演してもらった。

谷氏は「身体を効率的に動きやすい状態に持っていく、準備段階として使えるトレーニングです」と話し、基本的なステップについての実演と解説がスタートした。

まずは、すべてのステップの基礎となる、「地面に対する、足のつき方」から。前後左右、斜めに素早く移動するときは「足の裏の内側のアーチで地面を押す」ことがポイントになるという。

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「方向変換をするときは、必ず足の裏側にある、内側のアーチで地面を押すようにしましょう。内側のアーチとは、足の裏の拇指球とかかとを結んだ間にある、土踏まずのことを言います。この位置で地面を押すのですが、比重がかかとにより過ぎると、後ろに重心がかかりやすくなってしまうので、拇指球に6、7割、かかとに3、4割ほどのイメージで地面をとらえましょう」

サイドステップで大切になるのは「顔を上げること」

ここからは、サッカーの動きに近づけて説明していく。

(1)サイドステップ

サイドステップのポイントは、進行方向に対して、遠い方の足で地面を踏み、スタートすること。

「いつでも、どの方向にも動ける状態を作ってから、サイドステップで横方向に移動します。右方向に進むときに、右足から出ると、太ももの前側に体重が乗り、ブレーキがかかってしまいます。無駄な力が入り、スムーズさがなくなるので、右に進むときは左足で地面を踏み、地面からエネルギーを受け取ってから右足を出すと、スムーズかつ速く進むことができます」

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サイドステップで横に数歩動き、ボールに触るのは、サッカーの試合でよくあるプレーだ。このとき、足元のボールにばかり意識が行くと、顔が下がり、姿勢が崩れてしまうので、顔を上げることがポイントになるという。

「ボールが来たときに顔を下げると、姿勢が崩れて視野が狭くなります。また、身体のバランスが崩れやすくなり、パスミスにつながってしまいます。動いている間も姿勢を崩さす、顔を上げたままボールを見てプレーする意識を持ちましょう」

(2)サイドステップからのターン

この動きのポイントは「肩、ひざ、拇指球が同じラインにあること」。ひざが肩より前に出ると、必要以上に曲がっていることになり、地面からの反発力を得にくくなる。また、肩がひざや拇指球より後ろにあると、後ろ重心になっているので、バランスを崩しやすくなってしまう。

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ステップを踏むときは「足の裏のどこで地面を踏むか」だけでなく、足幅もポイントになる。

「地面から、一番力を得ることのできる足幅を探しましょう。地面がぬかるんでいる場合は、足幅が広くなりすぎないように。地面から力をもらえる足幅を探りながら、ちょうど良い位置をみつけてください。このときも、頭は下げずに上半身を起こした姿勢をキープしましょう」

(3)前後のターン

これは、後ろに下がり、前に出る。そして来たボールを蹴るというエクササイズだ。前後の動きの場合、どうしてもふとももの前側に余計な力が入りやすくなる。さらに、進行方向につま先を向けることにより、踏み込んだ後ろ足が滑りやすくなるというデメリットがある。

そこで谷氏がレクチャーするのが「下半身は半身、上半身は進行方向を向く」という動かし方だ。

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「ボールの位置に対して、下半身を半身の状態にし、足の裏の内側のアーチに体重を乗せましょう。そうすることで、踏み込んだときに地面をしっかりとらえることができて、滑りにくくなります。地面から受け取る力も大きいので、スピードもアップします」

ヴァンフォーレ甲府のアカデミーの選手たちに、このステップワークをトレーニングした後に計測したところ、2mのターンで0.3秒も速くなったという。

「上半身も半身になると、背中側にボールが来たり、背中側を相手に突破されると対応しづらくなってしまいます。そこで、上半身はボールのある方を向いて、下半身は半身にします。上半身は前方向を向き、下半身を回旋できる姿勢をキープしましょう」

COACH UNITED ACADEMY動画前編では、ここで紹介した基礎のステップに加えて「ディアゴナル(前方)(後方)」、「横向きスラローム」「グラウンダータッチ」「浮き玉リアクション」など、個人やチームでできる簡単なエクササイズを紹介している。ぜひ動画で全容を確認し、再開に向けた準備や再開後のトレーニングに役立ててほしい。

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【講師】谷真一郎/
愛知県立西春高校から筑波大学に進学し、蹴球部に在籍。在学中に日本代表へ招集される。同大学卒業
後は柏レイソル(日立製作所本社サッカー部)へ入団し、1995年までプレー。
引退後は柏レイソルの下部組織で指導を行いながら、筑波大学大学院にてコーチ学を専攻する。その後、フィジカルコーチとして、柏レイソル、ベガルタ仙台、横浜FCに所属し、2010年~2019年までヴァンフォーレ甲府のフィジカルコーチを務める。「日本で唯一の代表キャップを持つフィジカルコーチ」。現在は、「ヴァンフォーレ甲府・フィットネスダイレクター」として育成年代を中心に指導を行っている。