TOP > コラム > GKのコーチングに大切な10個のフレーズとは?/GKに伝えるべき「声」の重要性と「言葉」の理解

GKのコーチングに大切な10個のフレーズとは?/GKに伝えるべき「声」の重要性と「言葉」の理解

GKに指導すべき「声」の重要性と「言葉」の理解。後編のテーマは「声を出す目的と、伝わりやすい言葉の発し方」だ。講師の澤村公康氏は育成年代の指導を経て、ロアッソ熊本、サンフレッチェ広島でトップチームのGKコーチとして活動。大観衆の中でプレーするGKを指導した経験も踏まえて、「味方に伝わりやすい声の出し方」について、レクチャーしてもらった。(文・鈴木智之)

この内容を動画で詳しく見るには
こちらから会員登録!

sawamura02_01.png

<< 前回の記事を読む 

GKのコーチングは味方に具体的な行動を短い言葉で伝える

澤村氏は「動画の後編では『より良い指示の伝え方』『GKのマインドセット』『言葉の力』の3つについて話していきたいと思います」とあいさつをし、講義がスタートした。

sawamura02_02.png

まずは「具体的な指示の出し方」について。普段のトレーニングや試合で、コーチやチームメイトから「もっと声を出せ」と言われているGKは多いのではないだろうか。しかし、具体的な指導を受けていないと、「何を」「いつ」発せばいいのかがわからない。

澤村氏は「試合中に、よく耳にする言葉」として、次の3つを挙げる。

・(シュートを)打たすな!
・(DFライン)下がるな!
・(ボールを取りに)行くな!

「私も、学生時代はこの言葉を連発していたと思います。しかし、指示を聞くフィールドプレイヤーの立場になると、1文字で伝える否定は理解しにくいのです」

澤村氏の言う「1文字で伝える否定」とは、「な」をつけて、否定することを言う。

・打たすを「な」で否定している
・下がるを「な」で否定している
・行くを「な」で否定している

「野球では、バッターに対して『高めのボールに手を出すな』という指示をよく聞きますが『高めのボールに手を出す』まで言って、最後に『な』をつけて否定しています。そうすると、意識は高めのボールに手を出すところに行きかけますよね。高めのボールに手を出してほしくないのであれば、『低めのボールを狙え』で良いわけです。低めのボールに対して意識を持つことで、高めのボールに意識が向かわなくなります」

sawamura02_03.png

この考えを踏まえて、「打たすな!」「下がるな!」「行くな!」の表現を変えると、次のようになる。

・打たすな!→寄せろ!(寄せて足を降らせなければ、シュートは打てない)
・下がるな!→ストップ!(その場に留まる=下がらない)
・行くな!→我慢しろ!(我慢する=ボールに行かない)

sawamura02_04.png

「○○するな」ではなく、「寄せろ」「ストップ」「我慢しろ」など具体的な行動を、短い言葉でわかりやすく伝えている。これが、瞬時の判断が求められるサッカー、とくに得点に直結するゴール前の指示出しにおいて、重要なことだ。

指示を受けるフィールドプレイヤーの立場からすると「相手に寄せればいいんだな」「この場にとどまればいいんだな」「いまは行くべきときではないな」など、思考の整理もしやすい。

試合でGKのコーチングに必要な言葉は10種類

一方で「打たすな」では「打たさないためにはどうすればいいか?」と考える必要があり、ある選手は相手の前に立つ、ある選手はボールを奪いに行くなど、プレーの選択は様々だ。そうなると、周りの選手もプレーの予測が立ちにくく、次の動作が遅れてしまう。

それが「寄せろ」であれば、1人目の選手が寄せることがわかるので、周囲にいる選手は「空けたスペースをカバーリングしよう」「こぼれ球を奪いに行こう」など、プレーの予測がしやすくなる。このように、指示の声ひとつとってみても、プレーにこれだけの影響を及ぼすのだ。

澤村氏は「10個の言葉で試合はできる」と説明する。それが、次の言葉だ。

・キーパー
・クリア
・マーク
・カバー
・ディレイ
・アップ
・絞れ
・~を切れ
・ストップ
・フリー

動画では、各フレーズの詳細を紹介。言葉の意味やどのような動作があるのかについて解説されているので、ぜひ全容を確認してほしい。

sawamura02_05.png

「この10個の言葉を活用し、応用してほしいと思います。GKもそれぞれの言葉の意味を理解して、自分の言葉にしていきましょう。チーム戦術として『この状況では、この声掛けをしよう』と、監督・コーチ、チームメイトと意見をすりあわせるのも良いと思います」

sawamura02_06.png

ここからは発展型として「守備時に適切な指示を出すためのセオリー」の話題に入っていく。

パスを出させない→狙っておけ!準備しろ!
インターセプト→行け!取り切れ!
タックリング→寄せろ!強く!
前を向かせない→寄せろ!
ディレイ/ジョッキー→遅らせろ!時間かけろ!

「パスを出させないために、『マークする相手にボールが来たら、すぐに寄せるぞ』という意識を持って、ボールとマークする相手を見ておこう。それが『狙っておけ』『準備しろ』の意味です」

インターセプトを狙う場面では、「チームメイトが、ボールに対して追いつけるか、インターセプトに行くという判断は大丈夫かという迷いを後押しするために、GKから見て行けると思ったら、仲間に意思を強く持たせる声を勢いよく出しましょう」とアドバイスを送る。

そして、ボールホルダーにアプローチしに行く場面では、「『前を向かすな!』ではなく、『寄せろ!』の3文字で意思は伝わります。相手に寄せれば、前を向けなくなりますからね」と、効果的な言葉の選択を提示する。

sawamura02_07.png

他にも、攻撃時のセオリーから相手のプレーを分析し、シュートを打たせない、DFラインの背後にパスを出させない、パスをカットするための、具体的な指示の言葉についても説明。

GKのマインドセットや言葉の力についても言及しており、指導者はもちろんのこと、現役のGKにとっても知っておくべき内容が詰まっている。ぜひ動画を見て学ぶとともに、澤村コーチの情熱を感じてほしい。

<< 前回の記事を読む 

この内容を動画で詳しく見るには
こちらから会員登録!

【講師】澤村公康/

1971年、東京都大田区出身。三菱養和サッカークラブ、仙台大学を経て、指導の道に入る。熊本県立大津高校、浦和レッズアカデミー、JFAナショナルトレセンコーチ、川崎フロンターレアカデミー、浜松開誠館中学校・高等学校、ロアッソ熊本を経て、2019年シーズンはサンフレッチェ広島のGKコーチとして大迫敬介の才能を開花させた。2020年より拠点を東京に移し、GKスクールを立ち上げる他、大学チームの指導に当たっている。