TOP > コラム > サッカーのビルドアップの練習はどうする?指導案作成に役立つ練習メニューを紹介

サッカーのビルドアップの練習はどうする?指導案作成に役立つ練習メニューを紹介

『サッカー指導者のためのオンラインセミナー「COACH UNITED ACADEMY」』、今回のテーマは「U-12年代から、11人制サッカーを指導する練習法」。U-12からU-13に進むに当たり、8人制から11人制へと設定が変わる。その際に、「どのように指導すれば良いか分からない」「どのような練習メニュー・指導案にすればいいのかわからず困っている」という指導者もいるのではないだろうか。

そこで今回は、神奈川県の強豪クラブ、大豆戸FC U-11、ジュニアユース統括コーチの末本亮太氏に、11人制の攻撃についてのトレーニング法を教えてもらった。

前編のテーマは「攻撃におけるゾーン1、ゾーン2のポジショニング&ビルドアップトレーニング」。ビルドアップの練習におけるキーポイントが整理されており、分かりやすいトレーニングは必見だ。(文・鈴木智之)

この内容を動画で詳しく見る

suemoto01_01.png

次回の記事を読む >>

U-12年代の選手が11人制を行うと速攻と遅攻の使い分けがしにくくなる

末本氏は今回のビルドアップの練習メニューについて、次のように説明する。

「今回は、攻撃にポイントを当てて紹介します。選手たちは、5人制、8人制、11人制と人数が増えることで順応していきます。その際に、狭いコートから広いコート、2ラインから3ラインへの変化。

個人戦術、グループ、ユニット、チームという発展を指導者が頭に入れて指導することが重要です。そうしないと、U-13になったときに、何をしていのか、どこにいればいいのかがわからなくなってしまいかねません」

8人制と11人制では、グラウンドの大きさ、人数が違う。たとえば、8人制と11人制のグラウンドを比べると、縦で40m、横で20mの違いがある。

「U-12年代の選手が11人制を行うと、グラウンドの縦が長いことによる間延びが起き、速攻と遅攻の使い分けがしにくくなります。さらに、リズムの変化への対応が弱い。スペースの開閉が感じられないといった課題が発生します」

suemoto01_02.png

そのため大豆戸FCでは、U-12から、縦のゾーンを細分化(6つに分ける)して指導をしているという。

「11人制では6つ、8人制では3つにゾーンを区切り、ポジショニングやプレーの原則を落とし込んでいきます」

suemoto01_03.png

今回のテーマは「攻撃」だ。攻撃の構成要素は、ゾーン1でビルドアップ、ゾーン2では中盤を経由する攻撃、ゾーン3でフィニッシュ(中央とサイド)という流れになる。

「U-12年代では認知、判断、選択、決断のもと、後ろのゾーンから優先順位を意識し、保持→前進→フィニッシュの戦術的意図を持って、ゴールに向かっていく過程を身につけてほしいと思っています。そのためには、観ること、頭の処理、実行のすべてが必要になります」

攻撃の考え方をレクチャーしてもらったところで、グラウンドでのトレーニングに移っていく。

最初のトレーニングは「3対2+1サーバーのラインゴール」。これはゾーン1において、DFがMFへパスを送り、ビルドアップするイメージで行うものだ。

suemoto01.png

練習のポイントは次のとおり。

・攻撃の深さ、サポートの動きを意識すること
・2人組で幅をとり、前進か保持の判断を行う
・数的優位を作り、相手の守備ラインを超える

suemoto01_05.png

「まずはゴール方向への縦パス。そこがダメだったら斜め前、それも無理なら横という形でパスの優先順位を理解させます。パスだけでなく、どのような状況でボールを運ぶのか、パスをするのかといった判断、それにともなう周囲のサポートも大切です」

PC.png

攻撃の際に始めに意識するのは「ゴール方向への縦パス」を狙うこと

続いての練習は「4対4+3フリーマン+2サーバー」。1つ目のトレーニングから人数が増え、進行方向をつけてボールを保持する。よりビルドアップの実戦に近い練習と言えるだろう。

練習は、ゾーン1においてセンターバックの選手がサイドバックやMFにパスを展開し、ビルドアップするイメージで行う。

suemoto02.png

この練習のポイントは次の通り。
・トライアングルを作る
・相手を引きつける
・まずは縦パスを狙う
・横パスだけにならず、内側、空いているレーンを狙う

末本コーチは、縦のコースが空いていることを見逃さず、鋭いパスを通した選手を褒めることで、サッカーの攻撃の優先順位を意識させていた。

「攻撃側は、縦に行かないと怖くないよ。守備側の選手は、縦のコースの中央を閉じよう。そのとき、守備の2人が並列になると、間をパスで通されやすいので、段差をつけたポジションをとろう」

suemoto01_06.png

3つ目は「2対2×2+3フリーマン+2サーバー①」。さらには同②と続き、ゾーン3へ侵入していく動きをトレーニングしていく。グリッドが広くなり、実際のサッカーの試合に近い状況の中で、どのような設定、声かけでトレーニングをするかといった部分は非常に参考になるので、詳細はぜひ動画で確認してほしい。

suemoto01_04.png

「前編では、ゾーン1、ゾーン2の攻撃のトレーニングを行いました。後方から数的優位を作り、ボールを運ぶのか、パスをするのかの判断。パスの優先順位を伝えました。

ボールを持っていない味方は、DFの位置を見て、どこに立てばサポートできるかを考えます。ゾーン2でボールを保持しながら、ゾーン3に入っていきます。深さ、幅を意識し、できる限り中央のゾーンを狙い、サイドの幅を有効に活用して、ボールを保持して侵入を狙うのがポイントです」

後編では、ゾーン3のトレーニング、11対11と発展していく。

引き続き、11人制におけるビルドアップの練習メニューや指導案作りで悩んでいる人は参考にしてみて欲しい。

次回の記事を読む >>

この内容を動画で詳しく見る

【講師】末本亮太/
JFA B級ライセンス、フットサルC級ライセンス、JFA公認キッズリーダー。
大豆戸FC代表理事、U12監督。ジュニアユース、シニアチームの立ち上げ、クラブのサッカー以外の多角的な活動構築にも尽力。「ちょっと自慢できる、サッカーを通じて出会うはずのない感動、人、未来を創造し、非日常を提供すること」をミッションに掲げ、自チームの活動の他に「プレミアリーグU11神奈川」の運営や地域でサッカー広場を開催するなど、育成年代の活動に力を注ぐ。
また、小学生を連れての被災地訪問などNPO団体として、サッカーだけにとどまらない活動も行っており、将来を担う子どもたちの育成にも力を注いでいる。