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静的ストレッチを行う目的と実施すべきタイミング/清水エスパルスアカデミーが取り組むストレッチの実践法

日々の練習前や練習後に必ず行うストレッチ。果たして、効果的な方法で取り組んでいるだろうか? そこで今回は清水エスパルスの育成部門で活動する、フィジカルコンディショニングコーチの齋藤佳久氏に「清水エスパルスアカデミーが取り組むパフォーマンス向上に必要なストレッチの実践方法」を教えてもらった。選手のパフォーマンスアップ、コンディション向上に向けて、知っておきたいストレッチの知識と実践法を紹介したい。(文・鈴木智之)

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静的ストレッチは筋肉が緩まない程度であれば試合前に行ってよい

ストレッチには、大きく分けて2種類ある。静的ストレッチと呼ばれる「スタティックストレッチ」と、動的ストレッチと呼ばれる「バリスティックストレッチ(ダイナミックストレッチ)」だ。

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静的ストレッチは、反動をつけずにゆっくりと筋肉を伸張させ、一定時間保持する動作のことで、関節の可動域を広げたり、筋肉の柔軟性を高めるために行う。

「静的ストレッチは、プレー前にやらない方がいいと言われていますが、筋肉が緩んでしまうほどでなければ大丈夫です。試合や練習の前に、学校や移動で長時間座っていると、筋肉が固まってしまうので、痛みを感じない程度の可動範囲で静的ストレッチを行い、その後に動的ストレッチを行うと効果的です」

動的ストレッチは反動をつけたり、動作の中でリズミカルに筋肉を伸張させることを目的に行うものだ。

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「動的ストレッチはプレーの準備として行うものです。動きの中でストレッチを行うことで、筋肉の相反抑制(※伸びたり縮んだりすること)を発生させます。静的ストレッチ、動的ストレッチともに、痛みに耐えながらする姿を目にしますが、痛みは体を守るための反応なので、逆に体が固くなってしまいます。筋肉の正常な働きが失われてしまうので、痛みが伴わない範囲で行いましょう」

ストレッチを行うことで得られる効果は全部で4つ

ストレッチの重要性は多くの人が理解していると思うが、あらためて効果を説明したい。

1:柔軟性の向上
2:コンディションチェック
3:筋肉への刺激(パフォーマンス向上)
4:疲労回復(クーリングダウン)

「ストレッチをすることで、体温、筋肉温度が上昇します。筋カルシウムが活性化し、関節内の滑液が分泌され、筋や関節の動きがスムーズになります。柔軟性が高いと、無理なく足を伸ばすことができるので、パフォーマンス向上や怪我の予防につながります」

体が固いと、筋肉や腱などに負荷がかかりやすくなり、怪我につながるおそれがある。ストレッチをすることで、怪我の予防に加えて、柔軟性が備わるので、より良いプレーにつながる。

柔軟性の向上を目的に、風呂上がりにストレッチをしている人も多いだろう。齋藤トレーナーによると「筋肉の温度が上昇した状態でストレッチをするのは効果的」だという。

「風呂上がりの静的ストレッチは、反動をつけず、一箇所に対して30秒以上行うほうが良いと言われています。痛みに耐えると筋肉を傷つけてしまいかねないので、痛みのない範囲でゆっくり伸ばしましょう。このとき、15秒以下では効果が減るという研究結果も出ています」

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静的、動的ストレッチともに忘れてはいけないのが、正しい姿勢で行うこと。腰が丸くなったり、骨盤が後傾した状態では、筋肉に正しい刺激を入れることができなくなる。トレーナーの手本や動画を見ながら、正しい姿勢で行ってほしい。

ストレッチにはコンディションチェックの役割もある。毎日同じ負荷でストレッチをすることで、「今日はいつもより固いな」「ふとももが痛いぞ」といったことがわかる。このような違和感によって、ストレッチの時間を長くしたり、アイシングをするなどのケアに意識が向き、結果として怪我の予防にもつながるだろう。

ここからはストレッチを通じた、セルフチェックの仕方を紹介したい。

静的ストレッチを行う前に4つのセルフチェックを実施してみる

●セルフチェック

1:立位体前屈

まずは柔軟性のチェックから。ひざを伸ばした状態で、手を床につける。このとき、指の腹まで地面につくことが望ましい。指先がつかない人は柔軟性が低いので、しっかりストレッチをしよう。

2:上半身の柔軟性チェック

手を背中で交差し、後ろで組む。左右行うことで、両方の柔軟性を確認しよう。

3:しゃがみこみ

かかとを地面につけ、両手をすねの前で組んだ状態で下までしゃがむ。足首が硬いと後ろに倒れたり、手でバランスをとってしまうので気をつけよう。ひざが内側に入らないように、ひざとつま先を正面に向けてしゃがむのがポイントだ。

4:股割り

つま先とひざを外側に向けて、腰を落とす。股関節が固いとひざが内側に入ってしまったり、腰が丸くなるので注意したい。

4つのセルフチェックを終えたところで、動画では、プレー前に行う動的ストレッチの実践に移っていく。上半身から体幹ストレッチ、肩関節、肩甲骨周り、太もも前、股関節付け根、太もも裏、内転筋、ふくらはぎ~アキレス腱、足首など、すぐに実践できるメニューが収録されているので、怪我を予防したい、パフォーマンスをアップさせたい選手、コーチ、トレーナーはぜひ動画で確認してほしい。

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「前編では柔軟性の拡大など、プレー前の準備を中心に進めました。ストレッチをするときは、痛みに耐えて一度に伸ばそうとせず、コツコツと続けることが大切です。ぜひ毎日、続けてみてください」

後編では動的ストレッチの様々な実践方法や練習や試合後に行う、クーリングダウンのストレッチについて紹介したい。

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【講師】齋藤佳久/

理学療法士(PT)、国際PNF協会認定PNFセラピスト、スポーツ栄養スペシャリスト。PTとして10年以上スポーツを専門とするリハビリとサッカーのトレーナー活動に携わる。現在、エスパルス育成部PTとしてメディカル部門を担当する一方、フィジカルコンディショニングコーチとして、身体作りやパフォーマンス向上、食育に対しての取り組みも行う。姿勢・動作分析から選手を客観的に評価し、必要に応じてパーソナルトレーニングも実施している。