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慌ててボールを失う選手に指導すべき2つのこと/ボカ・ジュニアーズに学ぶボールキープと攻撃の判断

サッカーの神様マラドーナを始め、ベロン、リケルメ、テベス、そして高原直泰がプレーしたことで有名なボカ・ジュニアーズ。今回のCOACH UNITED ACADEMYでは、アルゼンチンで23年のコーチ経験を持ち、現在は日本支部で指導するレアンドロ・エルナン・ブロニスコーチに登場いただいた。(鈴木智之)

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全て素早くプレーすることが重要ではない


現代のサッカーでは非常に「スピード」が求められる、判断のスピード、プレーのスピードなど様々だが、レアンドロコーチは「全て素早くプレーすることが重要ではない」と指摘する。

COACH UNITEDをご覧いただいている指導者の方々のチームにも、素早くプレーすることを意識しすぎて慌ててミスをしてしまう選手が少なくないのではないだろうか? 

実際に、海外の指導者が日本の子どもたちの試合を見て、「相手と関係なく、自分とボールだけの関係でプレーをしている」や「常にせわしなくプレーしている」という印象を聞くことも多い。

「ボールを受けた瞬間は2つの大事なことがある」というレアンドロコーチ。そうした課題も踏まえた上で、ジュニア年代でどのようなトレーニングを行えばよいのか実践してもらった。

トレーニングの開始前、レアンドロコーチは子ども達を前に「正しい判断をすること」「イニシアチブをとってプレーすること」を伝え「みんな良い選手、レベルが高い選手なので自信を持ってやって欲しい」と勇気づけてスタートした。

最初のメニューはウォーミングアップを兼ねたドリブル。フットサルコートの両端に2人1組で向かい合って立ち、1人がボールを保持し、もう1人がボールを持たずにスタンバイ。コーチの合図で、コートの中央にある目印に向かってそれぞれスタートする。ボールを持っている選手はドリブルで中間地点の目印に到達したら、スタートポジションに戻る(往復する)。ボールを持っていない選手は、腕や股関節を動かしながらランニングをして戻る。

コーチからは「ランニングの選手はリラックスしてやろう。ボールを持っている選手はインサイド、アウトサイドなど、足の色々な場所でたくさんボールを触ろう」という声が飛んでいた。

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体の使い方、腕の使い方、体の向きなどポイントを絞った指導を行う

続いては、ボールを使ったドリブルと守備の動き方のトレーニング。2人1組になり、攻撃側と守備側に分かれる。ドリブルをしている選手は右足と左足でボールを入れ替えながら前に進んでいく。守備側の選手は、攻撃側の選手のドリブルに対して下がりながらついていき、相手がボールを運ぶ方向に対して半身になって対応する。

レアンドロコーチは「まずは、ボールをキープする際の目的を理解すること。攻撃の選手は相手より遠い足でボールをコントロールし、守備の選手は重心を下げて対応する。しっかりした姿勢をキープする事など一つひとつ意識しながら、選手に理解させていきます」と狙いを明かす。

さらにトレーニングは、守備側が攻撃側(ドリブルする側)の選手の背後からプレッシャーをかけるというメニューへ移行。攻撃側は片方の腕で守備側を抑えながら、前方にドリブルしていく。アルゼンチンの選手は腕を使って相手を抑えるプレーに定評があるが、その理由を垣間見ることのできるトレーニングだ。

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さらに、ドリブル(1対1)のトレーニングでは、フィジカルコントタクトの仕方についても言及。レアンドロコーチは「サッカーはコンタクトがあるスポーツ。どんなシチュエーションでも腕を使おう。肘でなく腕で当たること!」とアドバイスをし、「試合のどんなシチュエーションでこのプレーが使える?」と実戦をイメージする問いかけを行っていた。

レアンドロコーチのトレーニングは、ステップバイステップの形式で設定されている。ベースとなるシンプルなトレーニングから始まり、テーマに沿ってプレーのポイント、難易度などが、階段を昇るように少しずつ上がっていく。

それについてレアンドロコーチは「テクニックや戦術面に対して、慎重にトレーニング内容を考えなければなりません。体の使い方、腕の使い方、体の向き一つでも、しっかりポイントを絞った指導を行うこと。さらに、対戦相手に対するリスペクトを持ってプレーすることを教えるが大切です」と考え方を教えてくれた。

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ボールを受けた瞬間に大事な2つのこと

個人の技術にフォーカスしたトレーニングの後は、実戦形式の中で意識付けをしていく。ここで行われたのは8対2だ。フットサルコート半面を使い、コーンをグラウンドの四角とピッチの中央部に2つ、3メートルほど離して置く。(設定はCOACH UNITED ACADEMY動画を参照)。グラウンドの中では攻撃8人、守備2人で行うのだが、コーンを「動かない守備の選手」と考え、攻撃側はコーンにボールを当てないようにプレーする。

攻撃側は守備側にボールを奪われないよう、ポゼッションすることを目的とし、40秒経過したら攻撃と守備の選手が入れ替わる。ここでレアンドロコーチが強調したのが「周囲とコミュニケーションをとること」「パスをした後に動くこと」「素早くボールを回すこと」の3つ。選手達がパスを回した後に、その場にとどまっていると「鳥かごをしているのではないので、パスをした選手はピッチの中に入るなどして動こう」とコーチングしていた。

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さらに、もっとも強調したのが「数的優位なので、落ち着いてパスを回すこと」。アルゼンチンでは「パウサ(小休止)」というが、プレッシャーがかかっていない状態であれば、慌てて素早くプレーする必要はない。

「ボールを爆弾のように慌てて扱うとミスをします。そしてボールを受けた瞬間は2つの大事なことがあります。『ボールを守ること』と『攻撃をしかけること』。ボールを持つことイコール、キープすること。つまり、守ることです。ボールをキープして守り、次にパスを出すことによって攻撃を仕掛けます。そのために大切なのは落ち着くこと。落ち着いてプレーしないと、ミスが多くなり、相手にボールを奪われてしまいます」(レアンドロコーチ)

さらにコーチは「ボールを受けたときにパスコースがなければ、腕を使ってボールをキープして守ろう。そこで時間を作り、サポートを待ってパスをすること」をポイントとして挙げていた。これもトレーニングの序盤で練習した動作である。

前編のトレーニング紹介はここまで。ポイントを絞ったトレーニング、わかりやすい実技のアドバイス、それらを実戦形式で身につけていく設定など、的確なオーガナイズの真髄をぜひ動画で確認してほしい。

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【講師】レアンドロ・エルナン・ブロニス/
アルゼンチンでは23年間コーチを務め、ボカ・ジュニアーズやバルセロナ(アルゼンチン)、デポルティボ・ムニスやジュパンキ、フェニックスなどで指導。日本でのコーチ生活は3年目に突入。