12.04.2017
ポゼッションに重要な「腕の使い方」と「ペルフィラード」/ボカ・ジュニアーズに学ぶボールキープと攻撃の判断
アルゼンチンが世界に誇るビッグクラブ、ボカ・ジュニアーズ。マラドーナ、ベロン、テベス、高原直泰などがプレーし、多くの選手がアルゼンチン代表の主力として活躍するなど、世界有数のクラブとして知られている。アルゼンチンで23年のコーチ経験を持ち、現在は日本支部で指導するレアンドロ・エルナン・ブロニスコーチのトレーニング前編では、「ボールキープ時の腕の使い方」「ボールポゼッションの仕方」などをテーマとした練習を実施した。(鈴木智之)
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ボールポゼッションにも「腕の使い方」が重要
後編では、前編の最後に行った「8対2」を発展させた「7対3」のトレーニングから紹介したい。レアンドロコーチは「ディフェンス(3人)は、ボールを奪うためにしっかりとプレッシャーをかけること。オフェンス(7人)はしっかりとボールを回し、ポゼッションをすること」をテーマに掲げ、トレーニングはスタートした。ピッチサイズはフットサルコートの半面を使用し、40秒から1分ほどの時間で「7対3」を行う。時間の経過とともに、コーチの合図で守備側3人と攻撃側が交替する。
ここで強調したのは「体の向きや動き方、スペースの使い方、コントロール・オリエンタード(方向付けをともなったコントロール)、適切なコントロール、左右の足を使うこと」に加えて、トレーニング前編で紹介した「腕の使い方」だ。ボールを奪われないよう、腕を使って相手をブロックし、ボールを運ぶ、あるいはパスを出す。そこに対してコーチングをしながら、徐々にプレーのスピードを上げていく。
「Perfilado(ペルフィラード)」
続いては人数を減らし、プレーするスペースを縮めて「5対2」を実施。ここでもテーマは「ポゼッション」。やり方としては攻撃側の4人がマーカーで作った四角のエリア外でボールを回し、守備側の2人はエリア内でプレッシャーをかけ、パスカットを狙う。攻撃側の残る1人は守備側2人の間(グリッドの中央付近)にポジションをとり、攻撃側がポゼッションを継続するためのサポートを行う。攻撃側は2タッチでプレーするというルールも付け加えられた。ここでレアンドロコーチが説明したのは「攻撃側の選手に対して、パスコースを作る動き」。その動きをまずつかませるため、守備側はあまり激しくボールを奪いに行かないというルールが加えられた。このように、まずは狙いとするテーマ、動きを覚えさせてから、徐々に試合の強度に近づけていくというのが、トレーニング中に何度となく見受けられた。
また、レアンドロコーチが選手に意識付けさせていたのが「Perfilado(ペルフィラード)」。
「8対2」「7対3」よりもパスコースが少なく難易度が高まるこのトレーニングでは、パスを受ける前の身体の向きも非常に重要となる。
ペルフィラードとは、半身の状態を常に意識し、パスが来てもすぐに動き出せるよう身体を開いた状態を作っておくこと。
レアンドロコーチは、子ども達に「トレーニング中にできても、実際の試合で使えないと意味がない」と話していたが、トレーニングの難易度を段階的に調整することで、コンセプトを選手に伝えていく。
ゴールを奪うことの楽しさを伝える
最後は「4vs2→4vs2+1GK」。ゴールとGKをつけて、ポゼッションから攻撃のフィニッシュに持ち込む形を繰り返した。設定として、まずはハーフコートで4対2を行い、攻撃側のパスが3、4本つながったらコーチが笛を吹く。攻撃側は笛の合図で反対側のコートへ攻撃するのだが、反対側のコートにはあらかじめ2人の守備役+GKがスタンバイ。攻撃側は反対側のコートに入ったらバックパスはなるべくせず、できるだけ速くシュートに持ち込む。レアンドロコーチは「ここでの目的は、フィニッシュまで持っていき、ゴールを奪うことです。ゴールはサッカーにおける一番の魅力、醍醐味であり、とても大切な事です」と言葉に力を込める。実際の選手たちのプレーは、ぜひCOACH UNITED ACADEMY動画でご確認頂ければと思うが、レアンドロコーチは「4vs2→4vs2+1GK」の後、選手達にこうアドバイスを送っていた。
「サッカーの目的はゴールを決めること。ボールを保持することではありません。フィニッシュに持ち込むときは、余計なことを考えず、覚悟を決めていこう。ミスをしたらどうしようと迷いがあると、フィニッシュまで行きづらい。ミスをしてもかまわないから、フィニッシュで終わるという気持ちを持とう!」
南米の選手に比べて、ゴールへの執着心があまり感じられない日本の子ども達にとっては重要なメッセージだろう。最後に、レアンドロコーチが日本の指導者に向けて、アドバイスをくれた。
「この年代の選手を指導するにあたって大切なことは、選手自身がサッカーを楽しみながら学んでいくことです。そして、しっかりとした人間性を持ち、相手をリスペクトすること。スポーツマンシップを心掛け、正々堂々と戦う事を教えなければいけません。指導者の皆さんも、選手たちと向き合っていく上で大切なことを忘れず、選手たちに良いメッセージを伝えていきましょう。それが、ボカ・ジャパンから皆様へのメッセージです」
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【講師】レアンドロ・エルナン・ブロニス/
アルゼンチンでは23年間コーチを務め、ボカ・ジュニアーズやバルセロナ(アルゼンチン)、デポルティボ・ムニスやジュパンキ、フェニックスなどで指導。日本でのコーチ生活は3年目に突入。
取材・文 鈴木智之