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プロになった選手の80%が13歳で発育が遅れていた子供/フランスのINFが15歳までの育成にこだわる理由

3月上旬、大阪府の高槻市にてフランスナショナルサッカー学院(INF:通称クレールフォンテーヌ)のディレクターを務めるジャンクロード・ラファルグ氏を招いて指導者講習会と講演会が開催された。

今回は、アンリやアネルカらを輩出し、現フランス代表のムバペ、マテュイディ、アレオラらを育て「世界の育成のお手本」と評されるINFの指導法についてジャンクロード氏の講演の模様を紹介する。(取材・文:貞永晃二)

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13歳から15歳の「プレフォルマシオン=前育成」に注力

フランス協会はヴィシーという町で、16歳から18歳までの選手を集め最初のセンター(INFヴィシー)を始めました。1972年か88年まで行われましたが、目的はプロクラブに対して、ユース年代の指導に力を入れなければいけない、という方向性を示すためのものでした。

それはとても良い成果をもたらして、フランスのほぼすべてのプロクラブが育成センターをもつようになっています。各クラブが育成センターを充実させたことによって、協会としてはヴィシーのセンターを閉じることにしたのですが、その成果を分析し次の段階へ行こうとして、より低い13歳から15歳の「プレフォルマシオン=前育成」と呼ぶ年代に力を入れることにしました。

この育成センターの最初となるのが、INFクレールフォンテーヌです。始まったのが1990年で、現在は15カ所のポール・エスポワールと呼ぶセンターが運営されています。センターでは、選手は寮生活です。金曜日までトレーニングし、その夜に自宅へ帰り、週末は所属する地元のアマチュアクラブでプレーし試合にも出ます。そして日曜の夜にセンターに戻ってくるのです。

指導者養成にも力を入れています。いろいろな専門分野が協力し合って、この年代の選手にはどういうことをやっていかなければいけないのか、ということを指導しています。そしてどういう指導方法が最適なのかを常に研究を重ねてきて、我々としては、メンタル・テクニック・戦術・フィジカルの要素をバラバラにトレーニングすることはできない、これらすべての要素を含んだトレーニングをする必要があると考えたのです。

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「前育成」は将来のための土台作り

そしてこの前育成の年代の指導は、明日のため、将来のための指導ですので、今この考えのもとで選手に必要なものを教えなければ、将来彼らには学ぶチャンスがないと考えています。この年代は選手の土台を作っているときです。そして彼らが17歳、18歳、そして20歳になったときに彼らは自分の専門のポジションを決めてチームの中での役割のトレーニングを行います。そのとき良いトレーニングをするための土台作りを、いま行っているわけです。

この年代の選手は完璧ではなく何か足りないものがあって当然です。そこをスタート地点にして、何のプラスアルファを選手にもたらすことができるのか、考え方としては長所を伸ばしていきながら、欠点を消していくということです。この考えに則って我々はトレーニングをしますが、選手自身がトレーニングの中で主体者となってトレーニングをするということに重きを置いています。

14、15歳の選手たちはもちろんフィジカル的にはまだ大人の選手ではありませんが、メンタル的なところ、インテリジェンスのところでは十分考える力を持っているのです。ハイレベルのサッカーというのは、常に考えること、インテリジェンスが求められます。ですから、トレーニング段階から、選手に常に異なるシチュエーションの中で考えることに馴れさせるべきなのです。

最初は慣れないのでうまく行きませんが。やらせていけばきっと自身で答えを見つけていきます。大事なことはトレーニングメニューをただやるだけでなく、その中で選手自身が自ら主体性を持って取り組むこと、選手自身が考えて分析してプレーしていくことです。

そして、選手たちには問題、課題を解決していく力を与えなければいけません。選手がミスをしたとき、やるべきことはなぜミスしたかを考えさせること、次にどうしたらいいのか解決策を見つけさせてあげることです。前育成の年代の選手がミスをすることは問題ではないのです。忘れてはいけないのはプレーするのは選手自身だということです。選手自身がなぜこうなったかを分析できれば必ずその後の成功につながっていくのです。

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17歳までにプロになれるか判断するのは難しい

13~15歳の選手は発育段階にすごく差がある年代なので、180cmの子もいれば、140cmの子もいます。そしてこの年代の試合を見ていると、どうしても目につくのは発育段階の早い子のプレーです。

しかし、私はこのINFでの18年で見てきたプロになった子の80%は、13歳の時に発育段階が他よりも遅れていた子なのです。私はINF以外にもいろいろな年齢の選手を指導しましたが、確かに17歳までに誰が最終的にプロになれるかを判断するのは難しいところがあります。

ですから、大事なのは、比べられることで比べるということです。例えばスピードです。我々は10、20、30、40mでスピードのトレーニングやテストをします。そして、13歳時点で我々が重要視するのは10m、20mです。

10mと20mは、発育段階の差がほとんどパフォーマンスに関係ないのです。この年代で大事なことは、指導者が辛抱強く選手の成長を待つということです。発育段階が終わらないうちにこの選手はプロになれる、なれないという判断を下さないことです。

そして、選手に感情が揺れ動く状況でトレーニングさせることも大事です。私は選手によく言うのですが、PKを蹴ってみろと。8万人の観客がいるときのPKもキック自体は変わりませんから、同じだろう?と言うと選手は違うと、ボールは同じだし、距離も同じ、ゴールの大きさも変わらないしと。選手は観客もいるし、テレビもあるからと。でも、それは関係ないだろうと言うのです。

やはりハイレベルの選手というのは、練習でのPKも8万人の前でも自分のキック自体に注意を向けて行っている。つまりどっちのキックも同じなのだと。そういうことに馴れさせるのが必要だと思います。子どもたちに徐々に感情が高ぶる中でも、普通にやるべきプレーに集中できるように馴れさせていかなければいけません。

先日、練習で順番を待っている選手に、今プレーしている選手の邪魔をするような、プレッシャーのかかるような声掛けをしてくれと言いました。そういう感情が動くような状況に馴れさせるようにわざとそういう状況を作り出すわけです。

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いいFWを育てるためには、いいDFを育てないといけない

トレーニングにはいろいろな要素をすべて含めてやっていきます。戦術、つまり動きですね。攻撃のときも守備のときも、チームとして動く。次にテクニック。テクニックはシチュエーションの中でのテクニックです。個人のテクニック、ボール扱いの自由さですが、大事なことはその状況に適したテクニックを使うことです。

そしてフィジカルです。大事なことは攻撃のトレーニングをしたら、守備のトレーニングもしっかりするということです。テクニックと戦術を一緒にトレーニングするのと同じで、攻撃と守備の両方に働きかけてトレーニングしていくことが大事です。FWを良くしようと思ったらDFも良くしないといけません。反対にDFを良くするためにもいいFWが必要です。やはりFWにとってはDFがいい反応をしてくれないと良いFWには育っていきません。

例えば攻撃の練習でゴール前での3対2をやります。そのためにはDFに数的不利で守れるように教えていかなければいけません。でないとFWにとって簡単すぎます。つまりいいトレーニングとはいえなくなります。次の週の試合で相手チームにいいDFが2人いたら、突破できなくなります。

ポジションはコーチではなく自分で決める

クレールフォンテーヌに入った選手にはどのポジションがいいかは言いません。彼らを1人の選手として育てることに向かいたいのです。練習の中でいろいろな状況を与えて、考えさせます。そして、出ていく時にどこが自分の能力を発揮できるポジションだと思うかを質問します。

10人中9人が最も力を発揮できるポジションをしっかりと答えるのです。コーチがポジションを決めるのではなく、自分のスピードやテクニックの向上具合を見て、FWとしてはスピードが足りないな、中盤だな、というように自分の能力がどこなら活きるかをしっかりと分かってポジションを決めていくのです。

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