TOP > コラム > エムバペ、アンリらを育てたINFのトレーニングとは?/状況変化と"動きながらのテクニック"に馴れさせる

エムバペ、アンリらを育てたINFのトレーニングとは?/状況変化と"動きながらのテクニック"に馴れさせる

アンリやアネルカらを輩出し、現フランス代表のエムバペ、マテュイディ、アレオラらを育て「世界の育成のお手本」と評されるフランスナショナルサッカー学院(INF:通称クレールフォンテーヌ)。

キリアン・エムバペなどINFの卒業生として世界のトップリーグで活躍する選手は多い。彼らが評価される理由は卓越したテクニックやスピードだけではなく、インテリジェンスの高さだと言う。15歳までを育成の土台づくりとして重視するINFではどのようなトレーニングが行われているのか?

INFのディレクターを務めるジャンクロード・ラファルグ氏が大阪の金光FC(U-15)で行った指導実践をレポートする。(取材・文:貞永晃二)

<<前回の記事を読む | 次回の記事を読む>>

111.JPG

【ウォーミングアップ】対面パス

ジャンクロード氏は「テーマはフィニッシュの局面で、ラストパスからのシュートです。私にとって日本に来て楽しみなのは、皆さんと意見交換をしてお互いに見方を共有できたらいいなと思っています」と笑顔で指導を始めた。

まずは、アップとしてボールへ寄って、コントロールして、パス。パスしたら下がって次の人へ、というシンプルな対面パスを行った。その際の声掛けは「ステップワークを入れながらだよ」「ラインよりも十分下がって」というもの。ラインよりも下がるというのは、キックの距離を長く取りたいのだと思われた。

165.JPG

【トレーニング1】パス交換

次に行ったのは、中間にコーンを複数個置いて、それを倒さないように左右でパスを蹴り合うもの。下図のようにAとBのグループとCとDのグループにエリアを分けて行う。

inf_tr1s.PNG

<<ルール>>
●左から右へ、右から左へとボールが2つ常に行き交うように動かすこと
●3人の誰がボールを蹴ってもいい
●コントロールは、マーカーの反対側へ
●ラインより後ろでキックする。パスが弱くても、ボールを待って蹴ること。(キックの距離を一定にするためと思われる)
●イメージはコーンが仮想の相手DFで、その間をスルーパスで通す感じで
●コーンを倒した人が起こしに行くこと
●パスはダイレクトが無理ならコントロールして蹴る
●最初は足の左右、キックの種類は限定しない

<<発展形>>
●左足だけで 
●コーン倒した人は腕立て伏せ3回!など

さらに条件を変えていく
●右足だけで
●右アウトサイドキックだけ、左アウトサイドキックだけ、右足インステップだけ、左足インステップだけなどキックを限定した後、インサイドで、アウトサイドでなどコントロールにも条件をつける

176.JPG

声掛けとしてあったのは、「来たパスが難しかったら、2タッチしてもいい」、「ボールを浮かさないでグラウンダーで」、「マーカーはDFと思って」、「パスなのだから、強すぎてはダメ。あまり強過ぎたら腕立て3回!」など。

終了に近くなると、エリア対抗で「ここから競争!」とプレッシャーをかける。 
「マーカーの反対へトラップして出ないとミスだよ」、「最初に3回ミスしたら負け」、「コーンを3回倒したら負け」。

この、わざと競争を入れるというプレッシャーかけについてジャンクロード氏は、「選手に感情が揺れ動く状況でトレーニングさせることも大事です。選手に難しい状況を与えて、その中で選手に考えさせて反応させていく。こういうことをやって行くことが必要なのです」と言う考えからだ。

【トレーニング2】クロスからシュート

ジャンクロード氏の説明は「選手を2グループに分けてそれぞれのグループが、片方のゴールでやります。ラストパスとシュート。その中でいろいろな選択肢を持たせながらやりたい。FWがシュートに向かうが、誰からラストパスが来るのかが分からないシチュエーションでやります。目的は選手に動きながらのテクニックに馴れさせること。でもそれをいろいろな状況が変わる中で正確にテクニックを発揮することに馴れさせることです。それは試合と同じですね。選手に状況の変化がある中でプレーすることに馴れさせていかないといけない。相手がいてもいなくてもそういう状況を作り出していくのです」。

inf_tr2.PNG

<<ルール>>
●ゴールにGK2人ずつ入る(最初は交代で守り、発展形では2人ともプレーする)
●スタート:FWのAがペナルティエリア(PA)ラインに平行にドリブルしてから、Bにパス
●Bの選択肢は4つ(3つのパスコースと自分でクロスを入れるという4パターン)

・パターン1:BはAの足下へダイレクトでリターンパスする。AはPA外なら中へ入るまでは3タッチ可。PAへ入れば2タッチ以内でシュートへ

inf_tr3.PNG

・パターン2:Bは右前のCへダイレクトパスし、Cはワンタッチ後、PAへ入ったAへマイナスのクロスを送り、Aが2タッチ以内でシュート

inf_tr4.PNG

・パターン3:Bは左後ろのDへダイレクトで落とし、Dはワンタッチ後、PAへ入ったAへアーリークロスを送り、Aは2タッチ以内でシュート。

inf_tr5.PNG

・パターン4:Bはトラップし、ファーサイドからPAへ入った、(順番待ちFWの)Eへクロスを送り、EはBのトラップを見極めてその場合だけPAへ入り、シュートを狙う

inf_tr6.PNG

●PAエリアのラインをオフサイドラインと想定し、AとEはオフサイドに気をつける
●シュートが次のFWスタートの合図となる
●GKはゴールを守る
●FWはボールを拾って戻る

声掛けは、「(Bは)自分のパスはラストパスだという気持ちで」、「パス受けが難しかったら、判断してコントロールしよう」、「時々は逆サイドも狙おう」など。

<<発展形1>>
●2人目のGKもプレー(攻撃側の難易度を上げるため)。GK1人目が前へ出て、CBのように動いてキャッチを狙う。残るGK2人目はゴールを守る。GK2人は役割を適宜交代する
●パサーグループとシューターグループを入れ替える

<<発展形2>>
●シュートの直前に左右どちらのコースを狙うかをコールしてから打つ。指で方向を指示して、同時に声も出す

「(コールするのは)シュートはゴールへのパスだからだよ」とはジャンクロード氏。ここでも、「青対ピンクで 先に2点取った方が勝ち!などと競争をあおる。

ジャンクロード氏は、Bに対して選択肢を用意した理由を「シチュエーションのトレーニングをやりましたが、ある1つだけのシチュエーションに選手を馴れさせてはいけません。もちろん反復はさせますが、その反復の中に少なくとも2つの選択肢を入れる。今回は指導者講習なのでわざと選択肢を4つに増やしました」と説明した。

【トレーニング3】5対5+サーバー各5+各GK(ゲーム形式)

inf_tr7.PNG

<<ルール>>
●ピッチ内で5対5
●サーバーは5人ずつ。自陣・敵陣の両サイドタッチライン外に1人ずつと攻める側のゴール裏に1人(これは左右のゴールポストからどちらに動いてもいい
●使えるサーバーは味方だけ
●PAの外から決めたゴールは2倍
●PAの中でワンタッチゴールなら2倍
●残りは普通に1点
●オフサイドあり
●サーバー同士のパスもOK
●サーバーがCKを蹴る

声掛けは、「クロスの練習でしたようにパスコースを選んでプレーしよう」、「前を見て、 ロングパスの練習だと思って!」、「ポゼッションだけではダメ、パスを回しているだけになっているぞ、前へ行こう」、「サーバーをもっと使おう」、「ゴール前へもっと入っていこう」、「シュートが足りないぞ」、「もっと前へ早く運ぼう」、「ゴールの後ろのサーバーも使おう」、「サーバーももっとボールを要求しよう」など。

5-0と大差がついた状況で競争を煽ろうとして「ゴールの後ろのサーバーを使った得点も2倍にしよう」、「ラスト、得点は4倍!」、「「あと2分、ここから全部4点!」。そして前述の「感情を揺さぶる状況をつくる」ためにカウントダウンを始めることで選手をさらに焦らせようともした。

178.JPG

ジャンクロード氏は翌日の講演で、「自ら考えられる選手を育てなければいけません。メニューはたくさんありますが、それをいかにして生きたものにするのかが大事です。だから、選手はトレーニングをやらされていてはダメです。自ら主体的に参加しないといけない。時には選手にある程度の自由を与えなければいけません。つまり、トレーニングの中で、最初に練習メニューの説明をして、それをある程度やったあとに選手自身がどれだけできるかを見ました。我々コーチなしでも選手はトレーニングを自分たちで実施できるのです。もちろんコーチが選手の間違いを修正はしていかなければいけませんが、そうして考えられる選手が育っていくのです」と語っていた。

「選手に動きながらのテクニックに馴れさせる」「状況が変わる中で正確にテクニックを発揮させる」「選手の感情を揺さぶる」「主体的に参加させる」など、シンプルではあるが、これら育成年代において重要な要素が盛り込まれたジャンクロード氏のトレーニング。ぜひCOACH UNITED読者のみなさんにも参考にしていただきたい。

<<前回の記事を読む | 次回の記事を読む>>