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平日2日の練習で関西2位に導いたサッカーを上手くする「動き創り」/身体と脳のアジリティトレーニング

今回のCOACH UNITED ACADEMYの講師は、フリーのプロサッカーコーチとして関西を拠点に小・中・高様々なカテゴリーのチームを指導する三木利章氏。

指導するグローリアガールズU15をスタート2年で「第34回 関西女子ジュニアユースサッカー大会」準優勝に導くなど、独自の指導法には定評があり、全国大会常連高校など強豪チームでも個別に指導を行っている。

中学生からサッカーをはじめた子も所属するグローリアガールズの練習は平日2日、1日2時間のみ。外遊び経験などが減り、運動能力が低下している現代の子どもたちを、いかに少ない時間で上手くするかを追求したトレーニングが、サッカーに必要な「動き創り」のトレーニングだ。(文:貞永晃二)

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ウォーミングアップで「なわ跳び」「ほふく前進」

最初は、以前COACH UNITED ACADEMYでも紹介した「ライントレーニング」と呼ばれるステップワークから。
3人1組で、前の選手を追いかけるようにいろいろなステップを踏んでいく。足を細かく動かし、スキップで、足を交差させて、足をぶらぶらさせて、そしてケンケンでというバリエーション。終わるとバックステップで同様に行う。

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次は「なわ跳び」。いわゆる"二重跳び"を10回3セット。足が引っかかってもいいから続けさせる。あくまで動き創りが目的なのだ。

3番目は「手押し車」。2人1組、足を持ってもらって腕の力だけで直進する。4番目は「倒立」。これも2人1組で10秒間を2セット。5番目は「馬跳び&股くぐり」。2人1組で馬を跳んだあと股の下をくぐり抜ける。それを10回繰り返して交代。息が上がって、結構きつそうだ。「飛ぶ、くぐるを連続してもっと早く!」と三木氏は休ませない。連続することが大切なのだ。

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そして最後は、「匍匐(ほふく)前進」。
6人1組で、5人が前に手をついてトンネルを作り、そこを腕の力だけで通り抜ける。1人目が動けばすぐ2人目が続き、通ったらトンネル役になる。それを繰り返して6人全体で前進していく。ハードなメニューだが、三木氏は「連続、連続、連続!」、「(トンネルの)間隔を引っつけて!」、「おなかをくっつけないとダメ!」と容赦ない。

やっとここで給水タイム。ここまでの6つを連続して行った三木氏。こうしたサッカーとは無関係に見えるトレーニングをする理由は、日々の暮らしでは行わない動きをすることで、身体の可動域が広がり、脳と神経系に新たな刺激を与えることで、身体をスムーズに動かせるようになるという。これが三木氏のいう「動き創り」なのだ。

動き創りのためのリフティングトレーニング

続いてはリフティング。
インステップだけ→インサイドだけ→アウトサイドだけと進み、目的は動作を早くすることなので、三木氏の声掛けは、「手で取ってもいいから、ステップを早く!」となる。

「同じ身体の向きで、同じ場所で継続。しっかり身体を動かす!」。続いては"イン・アウト"。これは右インサイド→右アウト→左イン→左アウトと進む。高くボールを蹴ると、次の足の準備が容易になるので、「上に蹴り過ぎないで小さく早く!」との指示。同じ要領で"アウト・イン"→"太もも・イン・アウト"→"太もも・アウト・イン"で終わり。

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次はコーディネーショントレーニング。リフティング中に前、右、左方向をチラ見する。「首を振るだけでなくて、目玉を動かそう!」と三木氏はチャレンジを求める。さらに「チラ見と手叩き!」。これは、手を身体の前で叩き、後ろで叩く。

そして、「チラ見しながら、頭、肩、前、後ろを触る!」となるとかなりの難しさだ。まだ続く。「リフティングしながら、両手で地面タッチ!」。もちろん、「失敗全然OK!たくさんやって」とフォローも忘れない。

「次は挟む!」。これは足首、おなか、太もも、胸、背中でボールを挟んだり受けたりする。次々といろいろな神経系を意識しながら行う。さらに、「はねさし!」これは蹴り上げたボールをトラップするもの。インステップ、イン、アウト、太もものあとは、ひねり、内回し、外回し、ラボーナと続き終了。

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ここからリフティング移動へ。最初は利き足で、インステップ、イン、アウト、イン・アウト、アウト・イン、太もも・イン・アウト、太もも・アウト・インで運んでいく。
三木氏の声は、「ステップを小さく、早く!軸足ステップして、パンパンパンと細かく!」。逆足で、そして後ろ向きと続く。次は2ステップで(タッチを右、右、左というふうに)前向き、後ろ向きと進む。かかとを浮かせるとスムーズにできるようだ。次はボールを頭に10秒乗せたら、その場でヘディング20回、そして頭乗せしたまま前向き、後ろ向きで移動、ヘディングでも前向き、後向きで移動。

正確性よりもスピード。動き創りのためのコーンドリブル

細かいボールタッチでの移動。「タッチとキックはちがう!」と言う三木氏の言葉が印象的だが、細かいステップを踏む合間にボールに触れているというイメージだ。タッチはインサイドで、アウトで、立ち足の後ろで、ルーレットで、横向きで、インロールで、アウトロールで、クロスステップで、そしてクライフターンで、と様々なタッチ。「足首をもっとひねる!」、「リズムを大事に!」、「軸足が飛ばないと重心移動じゃないぞ!」との声掛け。

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そしてコーンドリブルに移る。コーンを4つ置き、2つ目と3つ目の間隔が広め。そこを駆け抜けていく。「3つ目のコーンのところで、重心移動で飛ぶ!」、「もっと幅!」、「ドリブルは、キープと突破と運ぶの3つあって、これは運ぶドリブル!」。続いて、コーンを3つに減らして、スラローム。「足の回転率を上げて!」、「失敗してもいいよ、トップスピードで!」、「考えてやらない」、「咄嗟に足が動くように!」とチャレンジを促す。

三木氏は、正確性よりもスピードを求める。常にできないスピードでチャレンジさせることが重要なのだとか。

以上が前編の内容である。三木氏は、「この子らはめちゃ上手い。こんなコーンドリはできない。でも、これでサッカーのドリブルが上手くなるかは別。ただ、出したいところに足が出るなど身体が思い通り動かせなければサッカーも上手くならない。これだけ滑らかに動けたらケガも減りますよ」と胸を張る。後編では、この動き創りをどうサッカーの動きに近づけていくのか、実戦に結びつけるためのトレーニングを紹介する。

子どもの基礎運動能力低下の解決や、単一スポーツだけに特化することで効率的な身体の動かし方を知らない子どもたちにはもってこいのメニューばかりだ。練習時間の限られる少年チームなどにはとても参考になるものだと思う。実際の練習の詳細はCOACH UNITED ACADEMYの動画をご覧いただきたい。

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【講師】三木利章/
フリーのプロサッカーコーチとして主に少年サッカーチームやジュニアユースチームの指導やスクールを主催。『個』の技術・戦術の向上を目指し、実践で生かせる個人スキルを身につける指導を行っている。現在指導するグローリアガールズU15では、女子U-15年代の関西一を決める「第34回 関西女子ジュニアユースサッカー大会」で活動スタートからわずか2年で準優勝に導いた。サッカーの「動き創り」をテーマにしたドリブルやリフティングの指導が注目され、全国大会常連高校など強豪チームでも個別に指導を行っている。

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