TOP > コラム > ドリブルは相手の矢印の逆をとり、ズラして抜いたら内足を入れる/身体と脳のアジリティトレーニング

ドリブルは相手の矢印の逆をとり、ズラして抜いたら内足を入れる/身体と脳のアジリティトレーニング

前編に引き続き講師は三木利章氏。「第34回 関西女子ジュニアユースサッカー大会」で準優勝したグローリアガールズ(今回の実技モデル)をはじめ小・中・高様々なカテゴリーの男女チームの外部コーチとして活動している。

今回はそのトレーニング紹介の後編である。サッカーは最終的に「ゲームでしか上手くならない」と考える三木氏は、「失敗と間違いは違う」と言う。どんなに優れたボール扱いの技術があったとしても試合での使い方を知った上でのミスと、知らないでミスするのでは意味が違うからだ。

前編で習得したクローズドスキルを時間的、空間的プレッシャーの中で実戦で使えるオープンスキルにどう繋げるか、認知・判断の伴った対人形式やゲーム形式のトレーニングを紹介する。(文:貞永晃二)

この記事の動画はオンラインセミナーで配信中!詳しくはこちら>>

<< 前回の記事を読む 

dribble_miki1.PNG

相手の矢印の逆をとり、ズラして抜いたら内足を入れる

【ドリブルゲーム①】
まず、フットサルコートの4分の1ほどの狭いエリアで、17人全員参加。ビブスあり8人対ビブスなし9人に分け、中央にボールを5つ。両端から走り、先にキープした者から、相手は1~3人で奪いに行く。

三木氏は「スピードはわざと落として、中盤のドリブルのイメージ。相手と正対してしっかり逆をとり、ズレを作る」と指示。そして、「運ぶ、キープ、突破の3つのドリブルを使い分けろ!」、「同じ場所にとどまらず、動きながら持て!」と声を掛けて、「アイディアを出せるか?」と股抜きやボールを浮かせるといった技、遊び心も促した。奪う側にも「守備は激しく!インテンシティを強く!」と強度を求めていた。

dribble_miki2.PNG

少し様子を見て、三木氏はストップさせて、説明を始めた。「どうやってズレを作る?」。「1つ目はドリブル。ドリブルしたら相手も動くから逆をとれるチャンス。2つ目はボールタッチ。相手がついてくるか、こないかで逆をとれる。3つ目はステップ。ボールを動かさなくても相手を動かせる。この3つでズレを作る」。

三木氏は、相手の体の向きを「矢印」という言葉を使って説明を続けた。「相手に(寄せられて)後ろを向かされた時に、(ターンして)相手の矢印に正対したら、ズレていないのでやられてしまう。相手の矢印に対して、ヨコに外さないといけない。ヨコに外せば、相手の矢印も動くので、逆をとったら相手は動けない」。

dori.jpg

しばらくして、三木氏は再びゲームを中断し、説明した。「ボールを取られるのが一番ダメ。相手を抜けなくても、とられないこと。抜いたらどうする?内足(=相手に近い方の足)を入れてブロックする。ズラして抜いて、内足を置いて出る。相手が強く来たら回って、また内足を置く!」「失敗と間違いは違う。知っていることはできないといけない」と学んだことをしっかり実践し身につけるように求めていた。

【ドリブルゲーム②】
次も同じドリブルゲームだが、ハーフコートに広げられた。当然要求も変わる。「広くなったから、突破できるタイミングだったらスピードを上げろ!」。そして、「相手の矢印の逆をとれ!ズラせ!抜いたら内足!いつスピードを上げるかだぞ。駆け引きして!取られたらトランジッションを早く!」、「(前編の)コーンドリブルと同じで、相手の2人目、3人目まで考えて、ゴールまでの道を見つけろ!」と矢継ぎ早に様々なことを求めていた。

2人だけでなく、3人目までのイメージを持ってプレーする

【4色ビブスを用いたゲーム】
17人をビブスで黄、緑、黒、無の4つに分けて、「黄と緑」、「黒と無」を同じ組にして行う。元日本代表監督のオシム氏がよく行っていた設定だ。

まず、フルコートで「2対2」。「黄と緑」から2人、「黒と無」から2人が出て行う。シュートはゴール前の半円の中からのみ。シュート、タッチラインを割れば次の組へ。

dribble_miki3.PNG

次は「3対3」。「黄と緑」から3人、「黒と無」から3人が出て行う。オフサイドあり。「ワンツー、スイッチ、ラストパスあり、常にスルーパスを狙え」との指示。1つシュートが終わっても、もう1球が入る。プレー時間は長く負荷が高い。3人の組み合わせが変わるので色で敵・味方を見分けるのに頭を使う。

kohen3-3.1.jpg

3対3はオフサイドあり。ただし、シュートは半円の中でパスを受けてワンタッチシュートだけ。自分で持ち込んでは打てない。「寄る、ワンツーの動き、3人目の動き」を三木氏は強調した。さらに、「ワンツーと見せかけて騙すこともやれ」と駆け引きを求めた。どうしてもスピードが上がってミスが増え、なんとなくのパスなどが続くと、「スピードを落として、落とした分は見ろ!2人のイメージだけでなく、3人目までのイメージを持って」と受ける前の考えたプレーを求めていた。

kohen3-3.jpg

つづいて「6対6」。シュートは半円でパスをもらってというルールは継続。ただし、同色ビブス間でパスは禁止。ここでも色を見分けるのが難しいが、味方からボールホルダーに向かって、何色にパスしていいのかのコーチングが盛んに聞こえた。三木氏からは、「まずは背後をとれ!」、「受ける前に考えておいて、ワンタッチパスを出すイメージを持ちながらドリブルできるのが一番いい」。守備側には、「相手がどの色に出せないか分かるだろう」という指摘。

最後に「5対5」では、自陣で4本パスをつなげば敵陣に入れる。攻撃側が入ったら、守備側も全員が入らないといけないという運動量が求められるルール。「インテンシティはだいぶ高いよ」と三木氏。シュートのルールは継続。

前編のトレーニングにつづき、2時間の集中した練習ではテンポよく豊富なメニューが進み、技術、戦術を効率的に身につけさせたいという三木氏の思いが感じられた。インテンシティ、負荷の高いトレーニングを行っても、週2回の練習なので、回復する時間がとれる。ただ、「高校の部活は毎日なので、そこへ持っていける負荷を作っておかないと、いきなりだと高校でこわれてしまう」という心配もあるようだ。

また、この日は中3だけだったが、中1、2がいるときは組分けを縦割りにして、中3が見本となり下の子に教えるという。「教えるというのは、本当に分かっていないとできない」とは三木氏。上級生は日々の練習を通して、自分ができること、できないことを認識し、考える習慣を身につけて個の成長にもつながるのだろう。詳細はCOACH UNITED ACADEMYの動画をご覧いただきたい。

<< 前回の記事を読む 

この記事の動画はオンラインセミナーで配信中!詳しくはこちら>>

【講師】三木利章/
フリーのプロサッカーコーチとして主に少年サッカーチームやジュニアユースチームの指導やスクールを主催。『個』の技術・戦術の向上を目指し、実践で生かせる個人スキルを身につける指導を行っている。現在指導するグローリアガールズU15では、女子U-15年代の関西一を決める「第34回 関西女子ジュニアユースサッカー大会」で活動スタートからわずか2年で準優勝に導いた。サッカーの「動き創り」をテーマにしたドリブルやリフティングの指導が注目され、全国大会常連高校など強豪チームでも個別に指導を行っている。

mikidrible01_800x240_02.jpg