06.11.2018
GKがハイボールやクロスボールをかぶってしまう原因と対処法/FC東京U-18のGK実践トレーニング
今回のCOACH UNITED ACADEMYの講師は、FC東京U-18でGKコーチを務める、山下渉太氏。FC東京U-15からトップチームまで、幅広い指導経験を持つ山下氏に『ゲームの制空権を支配するためのGKトレーニング』をテーマに、指導を実践してもらった。ここでは、その一部を紹介したい。(文:鈴木智之)
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空間認知、落下地点を把握する能力が求められる
トレーニングのテーマ『ゲームの制空権を支配するためのGKトレーニング』について、山下氏はポイントを次のように解説する。「GKがハイボールを処理する上で重要なのが、空間認知、落下地点を把握する能力です。若いGKの中には、クロスボールをかぶってしまう、自分の前でボールに触られてしまうといったミスをしやすい傾向にあります。そこに対して、どのようなトレーニングで修正していくかを紹介します。」
トレーニングの最初は一人で行うものからスタート。ここでは「ボールフィーリング」「空間認知」にフォーカスし、動作を入れ替えてボールをキャッチしていく。トレーニングの1つ目は、GKがボールを投げ上げて、手を叩いてキャッチ。これを3、4、5回と増やしていき、ボールの高さを変えていく。さらにはGKがボールを投げ上げた後に、コーチが「顔」「胸」「腰」「膝」「足首」「手を伸ばしてキャッチ」などの指示を出し、その高さでボールをキャッチする。山下コーチは「今、ボールがどこを通っているかを考えよう。ボールが浮いている時間をコントロールすることが大事」とアドバイスを送る。
その後は、ボールを投げ上げて前転してキャッチ、後転してキャッチ、側転してキャッチなど、身体のバランスを崩した状態から素早く立て直し、キャッチする動作に移行。その際に「キャッチしたボールを離さない」「バウンドしたボールをすぐにキャッチする」といったポイントについてコーチングが行われていた。このウォーミングアップのバリエーションは多数あるので、ぜひCOACH UNITED ACADEMYを参考にしてほしい。
できるだけ少ない動きでボールの落下地点に入る
続いては、シュートしたボールをキャッチするトレーニングを実施。ここでは、できるだけ少ない動きでボールの落下地点に入り、キャッチすることに言及。さらには高い位置でボールをつかみ、胸の位置で抱えることや、GKがキャッチしたことを周囲にアピールするために、頭上にボールを掲げることなどに重点が置かれた。山下コーチが説明する。「GKがボールをキャッチする際、相手選手と接触することがあります。そのときに、ボールをしっかりとキャッチしている姿をアピールすることができたら、審判もファウルかどうかの判断がしやすくなります。キャッチしたボールを頭上でキープする、胸の中で抑え込むといった動作も重要な技術のひとつです」
続いてはGKが両膝立ちになり、 コーチがボールを投げてキャッチするトレーニングを実施。ここではキャッチングの基礎となる両手の幅や腕の振り方、自分の顔より前でキャッチすることなどについて、アドバイスが送られた。次は、片膝立ちになり、頭上にあるボールをキャッチするトレーニング。ボールの落下地点、キャッチする場所を見極めて、そこに向かって素早く手を出す動作を繰り返し、フォームを身体に染み込ませていく。
クロスボールは蹴られてゴール前に到達するまで「2秒」の余裕がある
ここまでは、正面からのボールに対応する形だったが、次はサイドから蹴られたボールをキャッチするトレーニングに移行。ルールとして「GKはジャンプせずにキャッチする」という制約が設けられた。山下コーチがサイドからクロスボールを蹴り、GKがキャッチするのだが、ボールに対してスムーズに体を運んだときに「ナイスプレー!」と称賛の声があがっていた。
さらには、ボールの落下地点を素早く判断すること。ボールを蹴ってゴール前に到達するまで、約2秒あることに触れ、「焦る必要はない」ということも実証していた。また、サイドと正面という異なる場所から飛んでくるボールへの対応について、GKの心情はどうなっているのかなどにもアプローチしているので、是非COACH UNITED ACADEMYの動画をご覧いただきたい。
山下コーチはトレーニングのポイントについて、次のようにアドバイスをくれた。
「選手個々の課題とゲームリアリティ。このバランスを備えたものが、選手にとっての良いトレーニングだと思います。とくに若い選手はクロスボールやハイボールというだけで、苦手意識を持ってしまいがちです。そのためにもトレーニングを通じて、選手に自信と勇気を与えることが、指導者にとって大事なことだと思います」
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【講師】山下渉太/
1987年、千葉県出身。FC東京U-18 GKコーチ。JFA公認B級、JFA公認GK A級ライセンス所持。東京学芸大ではキャプテンを務めた後、早稲田大学でGKコーチとしてのキャリアをスタート。2011年にFC東京U-15GKコーチとして加入。12年からは、U-15深川GKコーチ専任、16年途中からトップチームGKコーチを担当。17年よりU-18GKコーチとして、選手育成に力を注ぐ。
取材・文 鈴木智之