06.18.2018
ハイボールが苦手なGKに教えたい「正しい動作とポジショニング」/FC東京U-18のGK実践トレーニング
COACH UNITED ACADEMYでは、FC東京U-18 GKコーチ、山下渉太氏のトレーニングを公開中。前編につづき『ゲームの制空権を支配するためのGKトレーニング』をテーマに、若いGKに苦手な選手が多いハイボールやクロスボールへの対処、トレーニング法について紹介してもらった。(文・鈴木智之)
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手の振りは小さく、ステップは少なく
後編のテーマは「クロスボールに対する苦手意識を、強みに変化させる発展トレーニング」。山下コーチは「ジャンピングキャッチのフォームの獲得、クロスボールを想定したポジショニング、体の向き、正しいステップなどを意識して、トレーニングを進めていきたいと思います」 と狙いを語る。
最初のトレーニングはジャンプキャッチ。コーチが台の上に立ってボールを差し出し、 GKはジャンプして顔の前でキャッチする。何度か動作を繰り返した後、山下コーチは「ステップ」と「手の振り方」に言及。
「手を振りすぎると、自分の前でボールを捉えるときのバランスが悪くなり、相手に引っかかったり、手とボールがずれてしまう」とアドバイスを送り、「ステップは少ない方が、ボールに対してパワーを持ってアプローチできる。より強く、速く、パワーを持ってプレーしよう」と声をかけていた。
また、ステップを踏む際の歩幅が細かいことを指摘し、改善するために青と赤のリングを地面に置き、その間を踏むように設定。選手のプレーを見て、どのようなアプローチをすることで改善するかといった部分も参考になるだろう。
続いてはコーチが台から降り、GKと向き合ってハイボールを投げる。それをGKはジャンプして、最高到達点でキャッチする動きを繰り返していく。ここでのポイントも、顔の前でボールをつかむこと。GKがキャッチする球種も、ハイボールやゆっくりとしたボールなどのバリエーションがつけられ、正確な動作の習得に重点が置かれた。
さらにはサイドステップを踏んでジャンプキャッチなど、動きの出るトレーニングへと発展していく。続いてはパンチングのトレーニング。GKは膝立ちになり、5メートルほど前にコーチが向かい合って立つ。コーチが下手投げでGKの胸元にボールを投げ、両手を揃えてパンチングする。 ここではパンチングするときの拳の作り方、力の入れ方をアドバイス。「握った拳は力まず、親指が拳より前に出ないようにして、ボールに当てるときに押し出す。ボールの叩く場所で軌道が変わる。どこを叩くかをイメージしよう」
ほかにも、クロスボールをイメージして体の前でパンチング、片手ずつパンチングなど、基礎動作を重点的に実施。片手のパンチングでは「体のひねりを使うように足を踏み出して、腕を前に押し出す」という動きを繰り返し、コーチングしていた。
ジャンプする場所・キャッチする場所の判断を瞬時に行う
続いてはサイドからのクロスボールを想定したハイボールキャッチ。 コーチがゴールエリアの角から下手投げでハイボールを投げ、GKは落下地点を素早く見極めて、無駄のないステップワークで移動し、ジャンプしてキャッチする。
ここでは「どこにボールが上がってくるかを想定しながら、ファーサイドでもニアサイドでも対応できるような準備をしよう」「ボールのスピード、滞空時間を自分のコントロール下におこう。ボールをキャッチする場所、ジャンプする場所をコントロールできないと、強い、速い、ジャンプができないよ」といったアドバイスを通じて、選手へ意識付けをしていく。
動画ではボールに対して、どのように足を運び、ボールをつかむ/弾くといったことを意識。広いエリアを守るときに、どちらの足からステップを開始するかなど、専門コーチならではの視点でアドバイスが送られていく。
サイドからのクロスに対する、キャッチングのトレーニングも収録されているので、GKトレーニングの仕方がわからない、どこをチェックすればいいのか、悩んでしまうというフィールドのコーチにとっては、練習メニュー、トレーニングの組み立て方も含めて、大いに参考になるだろう。
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【講師】山下渉太/
1987年、千葉県出身。FC東京U-18 GKコーチ。JFA公認B級、JFA公認GK A級ライセンス所持。東京学芸大ではキャプテンを務めた後、早稲田大学でGKコーチとしてのキャリアをスタート。2011年にFC東京U-15GKコーチとして加入。12年からは、U-15深川GKコーチ専任、16年途中からトップチームGKコーチを担当。17年よりU-18GKコーチとして、選手育成に力を注ぐ。
取材・文 鈴木智之