08.13.2018
蹴り足は次の一歩に。コントロールはバックスピンで!/狭いスペースでも打開できる技術と判断の指導法
COACH UNITED ACADEMY、今回の講師は多摩大目黒高校サッカー部監督、中学総監督の遠藤雅貴氏。現役時代は富士通川崎サッカー部(現・川崎フロンターレ)で選手として活躍し、2008年から多摩大目黒高校の監督を務めている。2017年度は全国中学校サッカー大会で3位に輝くなど、進境著しい多摩大目黒中学のトレーニングをお届けしたい。(文:鈴木智之)
ボールを保持している時間を短くする
「現代サッカーでは、コンパクトフィールドでサッカーが展開されており、狭いスペースで、いかに正確なコントロールができるか、そしてより短い時間で判断できるかが求められます。その中でどのようにボールを前に運び、どの場所で、いつしかけるのか、ここを追究して指導しています」と話す遠藤監督。今回は、狭いスペースやハイプレッシャーの中でも打開できる技術と判断の習得について多摩大目黒が取り組むトレーニングを紹介していただいた。
前編のトレーニングは、判断スピードが上がる中での正確な技術と、狭いエリアで相手の位置を見て自分たちでスペースを作りだし使う、サポートをテーマにスタートした。
最初はウォーミングアップを兼ねたスクエアパスから。選手が四角形の角に並んで立ち、手で横の選手にボールをパスして前方に走る。ラグビーの要領で、手でボールを扱いながら、小気味よくパスを回していく。
ここでのポイントは「ボールを保持している時間を短くすること」。スピードに乗ったプレーをするためには、ボールを持ってから次のプレーを考えているようでは遅くなってしまう。遠藤監督からは「ボールが来る前に周りを見て判断すること。スピードを上げよう」という指示が繰り返し送られていた。
続いてはハンドパスからインサイドキックに移行。ここではボールをコントロールする際に「バックスピンをかけること」に言及しながら、できるだけ足元にボールを置く時間を短くし、止めて、蹴る動作のスピードアップを徹底。これは川崎フロンターレの中村憲剛も徹底している技術だ。
さらには、パスを出した足が移動の一歩目になるようにアドバイスを送り、蹴って止まって走り出すのではなく、蹴り足がそのまま走る足になるように、流れるような動作とスピードアップにつなげる声掛けがされていた。
遠藤監督はその理由を「ディフェンスを振り切る場面や、ゴール前の仕掛けのスピードにつながる」と説明。笛の合図でプレーのテンポを上げ、スピードが求められる中で、正確な技術の発揮を高めていった。
味方のためにスペースをつくり、使う
続いては「6vs2」のボールポゼッション。長方形の横5メートル、 縦8メートルほどのグリットの中に守備側が2人入り、攻撃側はパスをつないでいく。2人1組が4チーム作られ、それぞれ異なる色のビブスを着用。ボールを奪われた選手とペアを組んでいる選手が守備側になるというルールだグリッドが狭いため、ボールを保持して考える余裕はない。攻撃側は「リターンパスは禁止」というルールなので、オートマチックに来たボールを返すプレーができない。ボールが入った選手の周りにいる味方は、すばやくサポートの位置に入ること。パスをした選手はすぐに味方のためにポジションチェンジしスペースを空けなくてはならない。そして、パスを受けた選手は、少ないタッチでパスを届ける意識付けがされていく。
遠藤監督はまず、守備側の選手に「攻撃側はリターンパスができないので、パスコースが限定されるよね? それを考えながらパスコースを切りに行こう」とアドバイス。攻撃側には「黙ってボールを動かすのではなく、連動するために声をかけあいながら、コミュニケーションをとろう」とコーチングしていた。
遠藤監督のコーチングや選手たちのプレーは、ぜひCOACH UNITED ACADEMY動画でご確認頂ければと思う。トレーニング後、遠藤監督は選手たちを集めて「プレー強度」について言及。「ディフェンスが緩く、プレッシャーがない中で練習しても、トレーニング効果はないよ」と話していたが、これは日本の育成年代において共通の課題だろう。
遠藤監督は「ゲームと同じで、プレッシャーの中で速く判断して、どこでサポートをすればいいのかを考えよう。そのためには、自分たちでハイプレッシャーの中で、プレーする雰囲気を作ること。そこを追求していかないとレベルアップしない。集中してやろう」とゲキを飛ばしていた。
動画前編はここまで。次週公開の後編では、さらに人数を増やした実戦形式のトレーニングを紹介したい。
【講師】遠藤雅貴/
多摩大学目黒サッカー部 高校監督・中学総監督。現役時代は富士通サッカー部(現・川崎フロンターレ)でプレー。引退後は川崎フロンターレの巡回指導コーチを経て、仙台育英学園サッカー部で高校、中学でヘッドコーチを務める。横浜FCサッカースクールU-12強化カテゴリー担当コーチとして活動した後、2008年より現職。2017年度は全国中学校サッカー大会でチームを3位に導いた。
取材・文 鈴木智之