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「身体の向き」と「正しいポジショニング」の習得/セビージャFC考案の U-10年代までに身につけておきたいスキル

スペインの名門クラブ、セビージャFC。セルヒオ・ラモスや ヘスス・ナバス、アントニオ・プエルタなど下部組織から有名選手を多く輩出し、育成に定評のあるクラブとして知られている。今回のCOACH UNITED ACADEMYでは、福島県にある「セビージャFC サッカーアカデミー福島」のトレーニングを通じて、スペインの名門クラブでは10歳以下の選手に対して、どのような指導をしているのかを紹介したい。(文:鈴木智之)

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トラップした足の逆足でパスを出すことで、次の動作にスムーズに入れる

子どもたちを指導するのが、ロドリゴ・ラサルテ氏。アルゼンチンとスペインのコーチライセンスを取得し、フィジカルトレーナーの資格も保持する人物だ。

ロドリゴ氏は「我々のサッカースタイルは、ボールを回すポゼッションをベースとしています。今回のトレーニングでは、しっかりと動いてポジションをとること。身体の向きを作り、無駄の無いポジショニングの重要性を伝えたいと思っています」

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トレーニングのテーマは「身体の向きと方向付けのコントロール」。最初のトレーニングでは「インサイドターン」に取り掛かった。まず3人1組になり、前方から来たパスを右足インサイドでトラップして、反対にターンし、左足でパスを出す。この動きを繰り返す。

ロドリゴ氏は「パスを受ける人は常にサイドステップを踏み、パスを受ける準備をしよう。右足で方向づけをするコントロールをするときは左足でパス、左足でコントロールするときは右足でパスを出そう」と動きのイメージを伝えていく。

さらに「マーカーを相手選手だと思って、背後に人がいることをイメージしてターンする」「パスは強く、グラウンダーで出すこと」を強調。うまくできない選手に対しては、手取り足取りサポートし、見本を見せて、上達を促していく。そしてうまくできたときは「ビエン!(いいね!)」と何度も大きな声で褒めていた。

次は「アウトサイドターン」。設定は同じで、右足のアウトサイドでボールを触ってターンをしたら、左足のインサイドでパス。左足のインサイドでターンをしたら、右足のインサイドでパスをする。ディフェンスの選手が背後にいると仮定し、ワンタッチ目のコントロールでボールを身体の横に流すようなイメージで行っていく。

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ここでは「ターンをするときに背後に相手がいるとイメージして、ターンする方向に腕を使い、相手をブロックして回ること」にも言及。さらにパスの出し手には「身体の向きから判断して、(イメージ上の)相手DFから遠い方の足にパスを出そう。ボールを受けた選手はアウトサイドでコントロールしてDFと入れ替わり、ターンして前を向く。相手を腕でブロックしながら回るイメージを持という」と、一連の動作についてコーチングが飛んでいた。

ポゼッションサッカーでは、味方同士の連動を高めることが重要

ここからは、周囲の選手と連携し、技術や個人戦術を高めていくトレーニングに移行。それが「パス交換⇒スルーパス」 だ。3人1組でプレーし、MF役の選手がFWの選手にグラウンダーのパスを出す。FWは「パスを受けたけど、ターンして前を向けない」というイメージで、ボールをMF役に戻す。その瞬間、右サイドにいるウイングが相手のDFラインの背後を突き、スペースでパスを受けてシュートに持ち込むという設定だ。

「強い正確なパスで攻撃がスタートします。パスを受ける選手は背後にマークがついている状況を想定し、ボールをキープして、ターンができないためボールを戻します。ボールを受けた選手はパスライン(ディフェンス選手の間)を見つけて、3人目の選手(右サイドのウイング)に深いパスを入れ、フィニッシュまで持ち込みます。これは試合を想定としたトレーニングです」(ロドリゴ氏)

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ポジションごとにポイントがあり、スタートのパスを出すMF役の選手は、グラウンダーの速くて正確なパスをFWとウイングに通すこと。FWはパスを受けてリターンを戻し、右サイドのウイングへのパスコースを作るために、身体の向きを作りながら外側に開いていくこと。ウイングはDFがいると仮定し、相手を引きつける動きをしてから前線へ走り、パスを受けて方向づけたコントロールでゴールへ向かい、ファーサイドに強いシュートを打つこと。3人の動きが連動すると、素早いボール回して相手をかく乱しながら、フィニッシュに持ち込むことができる。

続いては、MFからパスを受けたFWがウイングに落とし、MFからリターンパスを受けてDF(イメージ)の裏でパスを受ける動きにチェンジ。ここでは「パスはスペースに出して、走り込んで受ける」ことを中心に、細かなコーチングがされていた。

COACH UNITED ACADEMY動画、前編の最後は「コントロール⇒シュート」。背後のポールをDFと見立て、ボールを受けてターンをしてシュートに持ち込む動きを繰り返す。これは、トレーニングの前半(パス&トラップ)で行った動作を、実戦に近づけてレベルアップしていく流れだ。

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このようにセビージャのトレーニングは、サッカーに必要な要素を、シンプルなシチュエーションから、実戦に近い複雑なものへと段階を経て組み立てられている。このあたりのメニュー構成、そしてなにより、コーチの情熱的かつ論理的な指導の様子を、ぜひ動画でご確認頂ければと思う。

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【講師】ロドリゴ・ラサルテ/
スペイン・バレンシア出身。バレンシアFCの下部組織で育ち、 スペイン3部、ドイツ2部にてプロとして活躍。現役引退後は、アスレチック・ビルバオ、バレンシアの育成指導者として、若手エリートの育成にあたる。育成指導者時代にセビージャFCとも関わりがあり、スペインサッカーとセビージャサッカーを熟知した指導者。