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特別な選手も特別視しない、バランスよく子どもたちと接する方法/エンゲルス流・個々の武器を生かす育て方

COACH UNITED ACADEMY、講師は2019年から京都サンガF.C.のトップチームコーチに就任しているゲルト・エンゲルス氏。

前編では、日本の育成年代が見習うべき海外の指導理論についてお話しいただき、日本はゲーム形式のトレーニングの比重が少ないと指摘。後編では、ヨーロッパの勝利への執念についてや、指導者が理解すべき、選手と最適なコミュニケーションの取り方をテーマに独自の理論をお話しいただいた。(取材・文:内藤秀明)

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勝利の執念の育み方

近年変わってきていますが、従来ドイツにはテクニカルな選手よりも強いファイティングスピリッツを持つような選手が多かった過去がありました。そこでエンゲルス氏にそういうメンタリティや勝利への執念の育み方について伺うと、

「文化的な歴史もあるので難しいところです。ただし一つ言えるのはリーグ戦が子供たちに勝ち負けを強く意識させる部分はあると思います。シンプルですが、日々のゲームのトレーニングで、勝てば褒めて、負ければ簡単な罰ゲームを準備するなども効果的ですよね」

と語った。ただ現状の日本では公式戦のリーグ戦が少ないことは仕組み的な課題であり、目の前、簡単に解決できる問題でもない。しかし、指導者自身の工夫や、近隣のチームと協力し合うことで、公式戦のリーグ戦に近しい環境を子供たちに準備してあげるのも、育成年代の指導者に必要な要素なのだろう。

一方で勝利へのこだわりを教えるのは重要ではあるものの、指導者自身が勝ち負けにとらわれすぎることに対しては警鐘を鳴らす。

「これは日本だけでなくヨーロッパでも課題になりがちですが、勝つためにメンバーを決める。具体的にはフィジカルのある選手など勝てるメンバーを重宝して、選手起用が偏ったりすることは危険です。育成年代の目的はあくまでも選手の成長なので、バランスよく選手たちには出場機会を与える必要があります」

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また時代は移り変わっており、単純にファイティングスピリッツさえあればいいというわけでもない。

「冷静に自分たちのサッカーを遂行することも重要視され始めています。ペップ・グアルディオラ監督のマンチェスター・シティなどがそうですよね。そういう意味では監督はモチベ―ションを上げるだけでは不十分でもあります」

異なるメンタリティの選手とどのように付き合うべきか

またエンゲルス氏は、前所属チームのヴィッセル神戸ではアンドレアス・イニエスタや、ルーカス・ポドルスキなど、名だたるスーパースターたちを指導する仕事を行っていた。彼らに対してはどのようなコミュニケーションをとっていたのか。

「基本的に、誰であれ一人ずつ違うアプローチをするべきです。例えば皆の前で指摘することで奮起する選手もいれば、落ち込んでしまう選手もいるのですから。ただ気を付けないといけないのは内容は全く同じ内容を伝えないといけません」

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と明かした。誰を相手にしても伝え方を変えるという意味では、誰であれ特別扱いするし、特別扱いしないと言えるのかもしれない。

長らく日本や海外で指導の現場に立つエンゲルス氏だからこそ、バランスの良い指導論やコミュニケーション論の原理原則をシンプルに語ってくれた。無意識のうちに偏ったコミュニケーションをしていないか、あるいは、指導をしていないかなどを確かめることができるセミナー動画となった。

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【講師】ゲルト・エンゲルス/ 1990年にアセノ・スポーツクラブ(水戸ホーリーホックの前身)の選手およびコーチとしてドイツより来日。滝川第二高校のコーチを務めた後、横浜フリューゲルス、ジェフユナイテッド千葉、京都パープルサンガ(現:京都サンガF.C)、浦和レッズでコーチや監督を歴任し、天皇杯、Jリーグ、AFCアジアチャンピオンズリーグを制した実績を持つ。その後は日本を離れてモザンビーク代表監督に就任したが、昨年2018年にヴィッセル神戸のヘッドコーチを務めるために再び来日。2019年からは京都サンガF.C.のトップチームコーチに就任している。