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ダイヤモンド・オフェンスを実践するために理解しておくべきこと/相手のDFラインを攻略するための攻撃戦術2

COACH UNITED ACADEMY、今回の講師は坂本圭氏。日本で体育教師を務めた後にスペインのバルセロナに渡り、コーチングライセンスの最高位レベル3を取得。帰国後は清瀬VALIANTでコーチを務める坂本氏が提唱する、「ダイヤモンド・オフェンス」について、前後編の2回で全容をお届けしたい。

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ファイナルゾーンを攻略する攻撃戦術「ダイヤモンド・オフェンス」

以前、COACH UNITED ACADEMYに登壇した際には「ポジショナルプレー」と「ダイヤモンド・オフェンス」について、基礎となる考え方を紹介した坂本氏。今回はダイヤモンド・オフェンスを「ファイナルゾーンを攻略するための攻撃戦術」と定義し、詳細を解説していく。

「ダイヤモンド・オフェンスは、ファイナルゾーン(ゾーン3)で実践する攻撃メソッドです。NBAの名コーチ、テックス・ウィンターが考案した、バスケットボールの攻撃メソッドである『トライアングル・オフェンス』をベースに考察しました。特徴として、ゾーン3のサイドに4人の選手でダイヤモンド(菱形)を形成する。トライアングル・オフェンスとの違いは、ボール保持者の後ろに必ずサポートのプレイヤーが入り、安全なパスコースを確保するところにあります。ボール保持者がボールを失った場合、サポートのプレイヤーがカウンタープレッシングを実行し、相手のカウンターアタックを避けることができます」

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ここからは、具体的にどのようにして攻撃していくのかを紹介。そこでポイントとなるのが、以下の4つだ。

基本的にダイヤモンド・オフェンスはゾーン3のサイドでウイングの選手がボールを受けたところから始まる。
(右サイドレーン(ゾーン3)でウイングの選手がボールを受けた場合)

第1オプション:中央方向へ斜めのパス、ポストプレー
第2オプション:バックパス、サイドチェンジ
第3オプション:横パス、ライン間(相手DFラインとMFライン)の選手にパス
第4オプション:縦パス、ウイングの選手と同じサイドレーンにいる選手への縦パス

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4つの攻撃方法を軸に、相手の守備がタイトになるファイナルゾーンを攻略するために、次の原則で選手は動いていく。

「ゾーンのウィークポイントを見つけたプレイヤーは、そこへカットインします。それによって、ディフェンスは進入してきたプレイヤーをカバーしなければならなくなるので、ディフェンスがヘルプに回ります。その結果、さらなるウィークポイントが生じます」

動画では、具体的にピッチの状況を図を使って説明しているので、ぜひ確認してほしい。

ダイヤモンド・オフェンスを実践するトレーニング方法のコンセプト

ここからは「ダイヤモンド・オフェンスを実践するための、トレーニング方法のコンセプト」を紹介。坂本氏は「最初にポイントとなるのが、選手をダイナミック・システムとして理解することです」と話し、「20世紀までの考え方は技術+戦術+フィジカル+精神=パフォーマンスの向上と考えられていました。しかし、FCバルセロナのフィジカルコーチを務めたセイルーロによると、『部分を分割しないで分析する、または分解せずに識別・特定することを可能にする"違いのある要素の結合"のパラダイムに交代すべきである』と述べています」と語る。

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つまりは、「技術+戦術+フィジカル+精神を区切って練習してもサッカーにはならない。すべてがある中で、複雑な状況下でトレーニングすることで、サッカーのパフォーマンスが向上し最適化される」(坂本氏)という考え方なのだ。

さらにはセイルーロの考察をもとに、選手をダイナミック・システムとして理解する、「6つの構造」の相互作用とフィードバックから構成することを提案。それが認知構造、コンディション構造、感情・意思構造、創造的表現構造、コーディネーション構造、社会的感情構造の6つだ。

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動画では6つの構造を詳しく紹介し、「違いのある要素の結合(環境と6つの構造)が、サッカーのトレーニングには必要であり、それは選手間の相互作用が起こる状況を設定したものでなければならない。それが選手のパフォーマンスの最適化につながる」(坂本氏)と解説する。

「私はスペインサッカーのコーチングコースで、状況優先シュミレーションのトレーニングを学んできました。6つの構造による、戦術・戦略の最適化トレーニングには優先順位があります。それが、認知構造、社会的感情構造で、他の4つ(コーディネーション構造、コンディション構造、感情・意思構造、創造的表現構造)は、副次的なものになります」

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そして、「これらの要素を包括したものが、ダイヤモンド・オフェンス」ですと語り、ビクトル・ロペス・ロスの言葉を引用する。

「戦術アクションには、技術、フィジカル、認知および感情の側面が含まれています。例えば、ひとつのパスを技術のみ、もしくは戦術のみの要素と分類することは適切ではありません。パスとはそのスポーツの特定の文脈(プレーの状況)内のアクションであり、技術と戦術の側面を持っています」

さらに、こう続ける。

「インサイドキックは技術ですが、パスとなるとプレー状況が存在するので、戦術的な要素が加わっていきます。パスは技術と戦術の両方が組み合わさっているものです。そのためプレーの状況が設定されていなければ、パスのトレーニングにはならないことを意味しています」

ここまでが、ダイヤモンド・オフェンスを実行するための、ベースとなる考え方だ。後編では、具体的にどのようなトレーニングを通じて、ダイヤモンド・オフェンスの方法を身につけていくのか。実際のトレーニング方法の一部を紹介したい。

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【講師】坂本圭/ 北海学園札幌高等学校で13年間保健体育の教員(サッカー部顧問)を務めた後、スペイン・バルセロナでスペインサッカーコーチングコースを受講し、レベル3(S級相当)を取得。各育成年代で第一監督やアシスタントコーチを務め、2016~2017シーズンはバルセロナ近郊のクラブCF Badalona(スペインリーグ3部)のトップチームでスカウティングを担当し、リーグ5位に貢献する。