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ダイヤモンド・オフェンスを実践するトレーニング方法とは?/相手のDFラインを攻略するための攻撃戦術2

COACH UNITED ACADEMYでは、スペインでコーチングライセンスの最高位レベル3を取得し、現在は清瀬VALIANTでコーチを務める坂本氏が提唱する「ダイヤモンド・オフェンス」についての講義を公開中。後編では、どのようなトレーニングでポジショナルプレーを行い、ダイヤモンド・オフェンスを実行するかについて、理論と実践をお届けしたい。(文・鈴木智之)

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ボールの保持率を高めつつ、縦パスの意識付けを行う「ロンド」

ダイヤモンド・オフェンスを実践するためのトレーニング。最初はロンド(鳥かご)から。設定としては、グリッドの中に2人の守備の選手が入り、外側にボールをポゼッションする選手が6~8人入る。(スペースは8m×8mだが、参加人数によって調整する)

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「このトレーニングは、認知構造を高めるために行います。最初に狙うべきは、守備者の間を通す縦パス。これは縦に深さを作るパスであり、プレーを前進させるパスです。最終的には、ゴールの意味もあります」(坂本氏)

プレーの優先順位の2番目は、守備の選手同士の間が狭く、縦パスが狙えない場合に、斜めの深いパスを出すこと。これは「プレーを前進させるパス」だ。3番目はボール保持者の横にいる選手に対する横パス。これは危険回避のパス、バックパスの意味がある。ロンドはこの3つのパスをキーファクターとし、ノルマはワンタッチ。守備者がインターセプトしたら、中と外の選手が交代するというルールで行う。

ダイヤモンド・オフェンスについての記事前編では、FCバルセロナのフィジカルコーチを務めた、セイルーロ氏による「選手をダイナミック・システムとして理解する、6つの構造」からプレーのコンセプトを紹介した。実際のトレーニングでも、6つの構造(認知構造、コンディション構造、感情・意思構造、創造的表現構造、コーディネーション構造、社会的感情構造)をベースに、トレーニングを組み立てていく。

自動性・無意識的行為を獲得するためのトレーニング「オレアーダ」

2つ目のトレーニングは「オレアーダ(波)」。これはゴールがひとつしかない、攻撃方向が決まっているシチュエーショントレーニングを指す。設定としては10人+GKでハーフコートを使い、守備側の選手はGKのみ。つまり、守備のフィールドプレイヤーがいない状態でゴールを目指すというトレーニングだ。

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「プレーの優先順位としては、サイドレーン にポジションを取るウイングからセンターフォワードに斜めのパスを入れること(ポストプレー)。これはダイヤモンド・オフェンスのプレーの優先順位と重なります。キーファクターとしては、選手は常にボール保持者に4つのプレーオプション+個人プレーの選択肢を提供すること。さらに、ボールと選手は絶対に止まらない。可能な限り、最小限のタッチと時間で前進する。コンドゥクシオン(ボールを運ぶドリブル)よりも、パスを優先することを重視します」

動画ではマグネットを使って、ボールと選手の動きを解説。まずはダイヤモンド・オフェンスのポイントとなる、ウイングにパスを出し、センターフォワードの選手に斜めのパスを入れる動きがオートマティックに進むよう、約束事として決める。そして、センターフォワードの選手にボールが入った後は、選手たちが状況に応じて即興でプレーする。

「これらを無意識的に行えるようになるまで、トレーニングを積みます。たとえば、右ウイングの選手にボールが入った状態で、センターフォワードの選手が同サイドに流れて、攻撃2対守備1の状況を作り出します。このように、相手が守っているゾーンに複数の選手を配置(オーバーロード)し、そのゾーンで数的優位を作り出すプレーがきっかけの動きのひとつになります」

坂本氏はオートマティズムを高めるために大切なのは、「選手一人ひとりの役割を明確にすること」と話す。たとえば、最終ラインからビルドアップをして、ダイヤモンド・オフェンスを実行する際には、各ポジションの選手に次のような役割が与えられる。

●センターバック
・サイドバックへパスをするか、ハーフスペースでコンドゥクシオン(運ぶドリブル)をして、ウイングに斜めのパスを入れる。

・その際、もう一人のセンターバックは相手の攻撃の選手を監視する。

●サイドバック
・ウイングがサイドレーンでセンターバックからボールを受けるスペースを作るために、内側へ閉じてハーフスペースにポジションを取る。

さらに動画では、SBの残りの役割の他、MF、ウイング、センターフォワードと、ポジション別に選手個々のキーファクターを紹介。ポジションをとる位置や周囲の選手との連携など、詳細に解説している。

「このように、選手個々の役割、キーファクターを決めると、自動性・無意識的行為がうまく機能します」(坂本氏)

また、ポジショナルプレーのトレーニングでは『4対4+3フリーマン(試合状況を設定した)』を用いて、ダイヤモンド・オフェンスを身につけるために有効な、試合の状況を再現したトレーニング方法を紹介している。ほかにも、ポジショナルプレーを実現するためのキーファクターなども解説されているので、ぜひ参考にして頂ければと思う。

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【講師】坂本圭/
北海学園札幌高等学校で13年間保健体育の教員(サッカー部顧問)を務めた後、スペイン・バルセロナでスペインサッカーコーチングコースを受講し、レベル3(S級相当)を取得。各育成年代で第一監督やアシスタントコーチを務め、2016~2017シーズンはバルセロナ近郊のクラブCF Badalona(スペインリーグ3部)のトップチームでスカウティングを担当し、リーグ5位に貢献する。